数年前からファミレスやお弁当屋さんのメニューでよく目にする「三元豚」という言葉。なんとなく“美味しい豚”や“ブランド豚の一種”といった見当はつくけど、正確には知らないという方も多いのでは?食品の注目ワードとして「三元豚」について調べてみました。
農林水産省のデータによると、日本で一番食べられている食肉は牛肉でも鶏肉でもなく、豚肉なのだとか。そして、数ある豚肉の中で最も多く流通しているものが「三元豚」なのです。三元豚を簡単に表すと、3種の豚をかけ合わせて生産した豚のこと。詳しい説明と共に、日本で一般的な豚の種類について学んでおきましょう。
私たちが日頃食べる豚肉の多くは、数種の豚をかけ合わせることによって生産されています。その代表的な品種が、下記の5品種になります。これらの品種の優れた特徴を生かし合うことで、より美味しく、安定して供給できる豚肉が誕生するのです。ちなみに、バークシャー(黒豚)と中ヨークシャーは、単種のブランド豚(銘柄豚)としても人気があります。
・ランドレース(L)
デンマーク原産、白色の大型種。繁殖力に優れる。
・大ヨークシャー(W)
イギリス原産、白色の大型種。赤身と脂肪のバランスが良い。
・デュロック(D)
アメリカ原産、赤褐色の大型種。肉質が良く、サシが入りやすい。
・バークシャー(B)
イギリス原産、日本では「黒豚」として一般的。肉質が極めて最高。
・中ヨークシャー(Y)
イギリス原産、白色の小型種。脂肪の旨味と香りが良い。
改めて、「三元豚」とは異なる3品種を交配した豚、もしくはその方法を指します。日本の養豚業界で主流なのが「LWD」の組み合わせです。これはLのメスとWのオスをかけ合わせ、生まれた豚のメスにDのオスを交配し、豚を生産する方法のこと。生まれた三元豚(LWD)は、祖母のランドレース(L)と祖父の大ヨークシャー(W)、父にあたるデュロック(D)それぞれの特徴を持つ優れた豚肉となります。
その昔、国産豚肉の振興のために、美味しい豚肉をできるだけ肉質にばらつき無く育てることを目的として開発された「三元豚」。今では、LWDの組み合わせ以外に、LDBやLDK(Kは中国の金華豚)などの交配も行われています。また、飼育環境や資料にとことんこだわって育てられた極上の豚肉とされる「ブランド肉」や「銘柄肉」の世界でも、三元豚が主流となっています。三元豚の持つイメージの良さから「○○三元豚」という名のブランド肉もあるほどです。
ちなみに、最近では三元豚にもう1種の豚をかけ合わせた「四元豚」も誕生しています。
日頃、豚肉を購入する際にもお肉の部位や状態のチェックと共に、「三元豚であるかどうか」や品種、組み合わせにも注目してみてはいかがでしょうか。ほぼ間違いなく、美味しい豚肉を探すのに役立つのはもちろん、あなた好みの豚肉を知るヒントにもなると思いますよ。(TEXT:中本タカシ/ライツ)
参考資料:
『極上銘柄豚—生産者がすすめる豚肉料理』(チクサン出版社)
『わかりやすい養豚場実用ハンドブック』(チクサン出版社)