世の中にはさまざまな食べ物があり、食べ物の数だけ味があります。 しかし、どんな複雑な味わいでも、味覚としては5つの要素の組み合わせでしかないのです。 味覚には、甘味・旨味・塩味・酸味・苦味の5つがあり、基本5味と呼ばれています。 この5つが基本とされているのは、舌の上にある”味覚を感じるセンサー”で、この5種類しか見つかっていないためです。
このため、新たなセンサーが発見されれば、それは「第六の味覚」になるかもしれません。 最新の研究では、第六の味覚にはいくつか候補があるようです。 今日は、第六の味覚の候補を3つ紹介致します!
カルシウムは通常、苦味・酸味・塩味が複雑に絡み合った味だと認識されています。 しかし、アメリカのモネル化学感覚研究所によれば、カルシウムの味覚が独立した味覚である可能性があるようです。 マウスを使った実験で、カルシウム不足のマウスはカルシウムに対する食欲を示すことが分かったのです。 また、体の他の場所にあるカルシウムのセンサーの一部が、舌の上にもあるようです。 ただし、脳でこれが基本5味と別物の味として処理されるのかなど、詳しい事はまだ分かっていません。
先日話題になっていたのでご存知の方も多いであろう、脂の味です。 アメリカのパデュー大学で行われた実験で、ヒトに脂を含む飲料と含まない飲料を飲んでもらい、脂の有無を区別させた結果、その区別が可能だったというのです。 脂の味は通常、甘味や旨味として感じられているとされています。 実験では、区別ができただけで、舌の上のセンサーの有無や、甘味や旨味と別物として処理されるのかはまだ分かっていませんが、注目すべき結果ではあるでしょう。
私たちが感じる「コク」をことばで表すのは難しいですが、分子レベルでは少しずつ明らかになっています。 「グルタチオン」という物質は、コクを持つとされており、それ自体には味覚を持たないものの、他の味覚の広がりや持続時間に影響を与えている可能性があるようです。 こちらは基本5味と並んで第六の味覚になるというよりは、基本5味に影響を与えるエフェクターとしての役割と言えるでしょう。 ただし、コクに関する議論はさまざまに残されていることは忘れてはなりません。
人の味覚は、古代より4つであるとされ、さらに日本人による研究で1つ加えられて5つになりました。 今後、科学技術の発達で、今まで分からなかったことがもっと明らかになってくるかもしれませんね!
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。