お菓子・料理研究家。シンプルなレシピが好評。
「お菓子はレシピ通り作れば、必ずおいしく作れます」と話すのは、お菓子研究家・福田淳子さん。丁寧なレシピとその再現性の高さで人気の福田さんに、この連載では材料4つで作れる“本当においしいお菓子”を紹介していただきます。第20回は、「ムラングシャンティ」。クリスマスシーズンらしい、キュートなメレンゲのお菓子です。
みなさま、こんにちは。寒くなりましたね。気がつけば12月、今年も残すところ1ヶ月を切りました。街はすっかりクリスマスムードですね。なんとなくウキウキしてくるこのシーズンがとても好きなのですが、そんな気分にぴったりなデコレーティングでかわいらしいお菓子はいかがでしょう?
今日、紹介するのは「ムラングシャンティ」というフランスのお菓子です。「ムラングシャンティ」と聞いて、どんなお菓子か思い浮かぶ人はけっこうなお菓子通。
ムラングはフランス語でメレンゲという意味で、シャンティは泡立てたクリームを指します(正式にはクレームシャンティと言います)。メレンゲを低温でしっかり焼いて、泡立てた甘くないクリームをはさんだお菓子です。
クリームはさみたては、サクッとした食感なのですが、時間が経つにつれて口で溶けるようなシュワッとした食感に変化します。この感じが独特で、他のお菓子にはないおいしさです。フランス菓子を扱うお菓子屋さんでしかあまり見かけないので、ぜひおうちで作って、味わってみてほしいです。
メレンゲ作りのポイントは、油分や水分のついてない器具でしっかり泡立てること。卵黄が少しでも混ざると固く泡立たなくなってしまうので気をつけてください。粉砂糖は最初から入れずに、泡立ってから加えていきます。
このお菓子は卵白だけしか使いませんが、卵白は冷凍も可能です。私はいつもカスタードクリームなど、卵黄だけ使うお菓子を作るときに保存袋に入れて冷凍しておいて、これを半解凍のまま泡立てて使っています。冷凍保存できるとはいえ、なるべく早めに使い切りましょうね。
泡立てたら、粉砂糖をふるい混ぜ、好きな口金で好きな形に絞り出します。大きくなればなるほど、焼き時間がかかります。あとは低温でじっくり焼きます。焼くというよりは、乾燥させると言ったほうが近いかもしれません。時間は絞り出したサイズや、オーブンによっても違うのですが、とにかくオーブンシートから焼いたメレンゲが離れるまで! 大きなものだと3〜4時間かかることも。なので、時間に余裕があるときに作りましょう(笑)。
時間はかかりますが、焦げたりはしないので、オーブンに入れっぱなし、任せっぱなしでOKです。どうしても時間を短縮させたいときは、温度を上げます。130度くらいまでならば上げて大丈夫です。焼き時間は短くなりますが、ベージュっぽい色合いが強くなり、食感も少しハードになります。
できあがったら、オーブンの中で冷まして乾燥させます。メレンゲは湿気やすいお菓子なので保管に気をつけて。密閉できる容器や袋に入れてください。高温多湿の時期は冷蔵庫で保管しましょう。一緒に乾燥剤も入れるのがベストです。
仕上げには砂糖を入れずに泡立てた生クリームとラズベリーをはさみます。今の時期ならばいちごもおいしいですね。酸味のある果物がアクセントになっていいと思います。仕上げの粉糖も忘れずに。ふわっとロマンチックな世界観が登場します。クリームをはさんだら、どんどん湿気ていくのでその日のうちに食べましょう。変化する食感を楽しめるのも、作った人の特権です。
アレンジはピンクのクリームで。フリーズドライのラズベリーパウダーは製菓材料店で手に入ります。100均にラズベリーパウダーはないのですが、いちごパウダーは取り扱いがあります。こちらを使っても。ラズベリーの方が酸味とピンクの色味がはっきり出ます。
オフホワイトメレンゲにピンクのクリームはもう、「かわいい」しかないです。しかもおいしい! 見た目がキュートなので、ここぞ! というときに作りたいお菓子です。クリスマスシーズンにもぴったり。ぜひ作ってみてくださいね。
材料(約9個分)
<メレンゲ生地>
卵白…60g
【A】粉砂糖…45g
【B】粉砂糖…45g
生クリーム…100ml
ラズベリー(冷凍でもOK。いちごで代用しても)…適量
<仕上げ>
粉砂糖…適量
・天板にオーブンシートを敷く。
・卵白は使う直前まで冷蔵室で冷やす。
1.ボウルに卵白を入れ、ハンドミキサーで泡立てる。少し角が立つくらいになったら、【A】の粉砂糖を何回かに分けて加え、そのつど泡立てて固いメレンゲにする。【B】の粉砂糖古い入れ、ゴムべらで切るように混ぜる。
2.星口金をつけた絞り袋に1を入れ、縦4cm×長さ10cmを目安に絞り出し、110℃のオーブンで3〜4時間焼く。オーブンシートからはがせるくらいよく乾燥させ、オーブンの中で冷ます。
*3時間焼いたら一度開けてみて、オーブンシートからはがれるようならOK。くっついていたらさらに30分ずつ焼く。
3.ボウルに生クリームを入れ、底を氷水に当てながらハンドミキサーで八分立てに泡立てる。角が立って軽くおじぎするくらいのかたさが目安。
4.星口金をつけた絞り袋に3を入れ、2に絞り出す。ラズベリーをのせてもう一度絞り、メレンゲで挟む。残りも同様にして作り、茶こしで粉砂糖をふる。
フリーズドライのラズベリーパウダーを生クリームに混ぜると、クリームがかわいらしいピンク色に。
基本の作り方2で、メレンゲを直径5cmの円形に絞り出し、110℃のオーブンで3〜4時間焼く。ボウルにフリーズドライのラズベリーパウダー 3g、粉砂糖小さじ1を入れてよく混ぜる。生クリーム150mlを少しずつ加えて混ぜ、コアントロー小さじ1を加える。八分立てに泡立て、焼いたメレンゲにはさんで粉砂糖をふる。
保存のときにはぜひ、乾燥剤を! メレンゲのサクサクの持ちが違います。
お店でも売られていますが、のりやおせんべいにはいっているものを再利用してもOKです。
(撮影:三村健二 スタイリング:岡本ゆかこ)
福田淳子さんの本連載、「材料4つで作る本当においしいお菓子」が1冊の本になり、12月17日(木)に発売されることになりました!
これまでの連載で公開された人気レシピに加え、アレンジレシピや新規レシピもご紹介。作り方の手順だけでなく、失敗しないコツやおいしく仕上がる理由がよくわかるポイントもていねいに解説します。
ホットケーキミックスを使わなくても、小麦粉、卵、砂糖、生クリーム、バターなど、手に入りやすいシンプルな材料だけで、本当においしいお菓子が作れますよ。
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お菓子・料理研究家。カフェでメニュー開発や店舗の立ち上げを経験後、雑誌や書籍を中心に活躍中。身近な材料と、シンプルな手順で美味しく仕上がるレシピに定評がある。これまでに手がけたお菓子の本は30冊以上。
【Instagram】@junjunfukuda
お菓子・料理研究家。カフェでメニュー開発や店舗の立ち上げを経験後、雑誌や書籍を中心に活躍中。身近な材料と、シンプルな手順でおいしく仕上がるレシピに定評がある。これまでに手がけたお菓子の本は40冊以上。
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