海外の料理ばかり食べていると、「日本料理食べたい・・・」と思うことありませんか?日本の料理と世界の料理を味で比較すると面白いことがわかってきました。
日本の料理と世界の料理で代表的なものをそれぞれ20種類、AI搭載の味覚センサーレオで分析して、平均値を取ったものが下の図です。
最も差が大きいのは旨味で、0.7ポイント日本の料理の方が上回っています。次に大きいのは酸味で、0.61ポイント世界の料理の方が上回っています。しかし、ここ最近この差が徐々に縮まってきていることがわかりました。
具体的には、日本の料理の酸味の平均値が少し上がってきていて、世界の料理の旨味の平均値も上がってきているということです。
「和食が世界で受け入れられている」とよく言われますが、これは世界の料理の旨味が少しずつ上がってきていて、和食を受け入れる素地ができてきている、ということです。
世の中で美味しいとされる味は常に変化し続けています。ある時は絶品の味であっても、時代とともにその評価が変わっていってしまうことも多々あります。なので、長く続いている店やロングヒットの商品も細かく味を変えて、時代に合わせるようにしているのです。
そして今、世界的に旨味を味わうと言う流れがきているので、和食にとってはチャンスだということです。
なぜ美味しいとされる味が変わっていくかというと、人間には飽きるという感覚があるからです。どんなに美味しいものでも3回の食事を食べ続けていれば「もういいや」となります。もちろん実際にはそんなに食べることはありませんが、何回も食べているものよりも新しいものの方が新鮮な感覚になるので、有利になるわけです。
また、味蕾(みらい)という味を感じる器官は、約10日に1度生まれ変わっています。そのため、味覚が変わり続けるのはある意味当然とも言えるのです。
ただ新しすぎると、食べても安全なのかどうか判断ができないため、警戒してしまう「警戒本能」が人間には備わっています。つまり、新しいけれども新しすぎない「ちょっと新しい味」を作る必要があるのです。
皆さんは懐かしい味や久しぶりに食べたものを、美味しく感じたことはありませんか?これは記憶には少しあるけれども、しばらく食べていなかったので、味覚としては「ちょっと新しい」と感じているのです。
しかし同じものをその後も毎日食べてしまうとその新鮮味がなくなって、美味しさを感じにくくなってしまいます。同じ味なのに不思議ですね。
現代では新しい「美味しさ」を作り出す必要があるため、食べ物の表面と中身の味を変えたり、後味のひきかたを変えたり、食感を変えるなどあらゆる努力がなされています。次の時代の美味しさは何なのか、今後も味博士の研究所で調べて取り上げていきたいと思います。
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。