クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪
私が最も難しいと思っている料理。それは「オムライス」です。
娘たちから「ママ、きょうはオムライスを食べたい」と言われたときは、本当に辛い……。すかさず全力でオムライスを作れない言い訳を考えて「あー、ごめん確か家にケチャップがなかったような気がする」とか「冷やご飯がない」とか「ママはランチでオムライスを食べたからまた今度」とか、大人ならすぐにバレてしまいそうなその場しのぎの言い訳をダラダラと並べて、さらりと他のメニューに変更してしまいます。あとは、ファミリーレストランに行こうと誘って外食に、なんてことも。
この言い訳が娘たちにバレるのは、もう時間の問題かもしれません。
ただオムライスを作るのは苦手な私ですが、オムライスを食べるのはとても大好きです。いや、もしかしたら好きを超えて愛していると言ってもいいかもしれません。いろいろな種類のオムライスがあるなかで、私が好きなものはスタンダードなもの。
野菜たっぷりで甘く炒めたチキンライス、そしてまわりを包むオムレツは卵をたくさん使ったふわっとしたもの。上にはたっぷりのトマトケチャップがかかっています。スプーンで大きくすくって一口食べた瞬間、心も体も幸せな気分になります。
このときは、糖質が気になるなとか、カロリーが気になるなとか、そんな気持ちも、あれれどこかに吹っ飛んでしまいます。レストランガイドで洋食屋特集があれば、真っ先に買ってしまうほどです。
私のオムライス愛が強いのは、まだ私が小さなころに、大好きなおばあちゃんと一緒に通った洋食屋さんのオムライスが原点にあるのだと思います。
お店のカウンターで一緒にオムライスを食べながら、たわいもない話をしたそんな時間がとても好きでした。数年前おばあちゃんは亡くなってしまいましたが、今でも美味しいオムライスを食べると当時のことを思い出します。私のなかでは味わいも思い出もスペシャルなものなのです。
もちろん、自分でも上手に美味しく作りたいと思い、過去に練習をしたこともありました。
私が苦手なのは、卵をキレイに巻くこと。なので、まずは卵液の分量の調整からはじめました。
バター多め、卵多めで作ってみるものの、卵が破れてしまったり、慌ててしまって失敗。次には、卵にのせるごはんの量やのせ方が間違ってるかもしれないと、ごはんの量を少なめにしてみたところ、それでもやっぱり巻いた卵の横からご飯がもれてしまう。最後には、フライパンでご飯を巻くのを諦めて、ふきんやラップを使ってみる。まずはラップをキレイに広げられないからはじまり、次に卵をのせたあとにうまくご飯にのせられなくて、またしても横からご飯がもれてしまう。
と、何度か作っても失敗するので諦めてしまいました。
これはレストランで食べるものだ、と!
ちなみに私自身、お料理に関してこのような完璧主義ではないんですよね。基本的にお料理は楽しく作るが一番で、失敗もオッケー、と楽しめるタイプ。ただ私の中でのオムライスに対する愛と、理想にしている完成度が高いだけに、自分で作るものに完璧を求めてしまうのだと思います。自分でもあまり丁寧に分析しきれてないですが……。
あぁ、でもやっぱりオムライスは上手に作れるようになりたいです。どうしたらいいんでしょう。
クックパッド株式会社ブランディング・編集部担当本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰。現在、日経ビジネスオンラインにて『おいしい未来はここにある~突撃!食卓イノベーション』、ヘルスケアメディア『Rhythm (リズム)』にて『マラソンチャレンジ連載企画』を連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。