競輪選手 長塚智広さん:世界トップクラスのスピードスターとして2004年アテネ五輪では見事、銀メダルを獲得。チームスプリントの第一走者としては世界No.1の称号を手にした長塚さん。現役の競輪選手でありながら、経済や政治にも精通する異色の経歴の持ち主。食に関しても幅広い知識と地元へのこだわりのある長塚さんに「勝ちごはん」を教えていただきました。
競輪選手として、日頃の食生活で心がけていることはありますか?
「ウェイトコントロールは競技のうちだと思っています。納豆や魚、野菜をバランスよく食べるのはもちろんですが、なるだけ油を摂らないように心がけていますね。
日常生活の中で一度でも、大きなカロリーを摂取してしまうと、もっと食べたいと身体が要求してきて、『食べるモード』になってしまうと気がついたんです。つまり、日頃から暴食を一瞬でもしないことが大切なんです。ただ、そこで重要になってくるのは、自分が我慢をしているのだと身体に思わせないこと。食べていない状態をストレスではなく、プラスであると思い込むメンタル面の強さが大切だと思います。
競輪競技の中では、どうしても身体を絞らなければならない時期があります。その際、食事の質も大事ですが、それ以上に食べ過ぎてしまった時に後悔することの方が良くない。「うわ、食べちゃった!」とストレスを身体に与えることが最も良くないですね。ストレスは身体の代謝を落としてしまうので、代謝を落とさないためにも、それをプラスに捉えるメンタル面の方がはるかに大事だと思っています。シャープな体で明るい気持ちでいた方が病気にもなりにくいし、太らないというのが僕の持論です」
長塚さんにとっての「勝ちごはん」とは?
「僕は茨城県出身なんですが、茨城は蓮根の出荷量が全国日本一なんですよ。子どもの頃から蓮根が食卓にのぼるたび、『先の見通しが立つから食べなさい』と両親に言われて育ちました。だから、今も試合前は蓮根があると嬉しいですね。
納豆も茨城県は出荷量日本一です。やっぱり『勝ちごはん』といわれると、この「納豆」ですね。やっぱり勝つためには一位のものを食べないと!僕の家の冷蔵庫にはいつも水戸納豆が山のように常備されています。納豆は天然のたんぱく質なので、プロティンの代わりに5パック食べています。納豆はむちゃくちゃ好きです!
食べ方もいろいろですね。納豆と同じくらい好きな蕎麦にトッピングとして入れるのも栄養最強ですし、パスタにもよく入れますね。茹で上げパスタに納豆と醤油だけというシンプルな食べ方も最高ですよ。納豆の粘りでパスタを絡めるのがいいんです。他にもキムチと和えるのも発酵食品という共通キーワードがあるので素晴らしいですね。
特におすすめしたいのは、納豆に卵を混ぜることですね。ビタミンバランスがすごく良なるんです。僕の場合はTKG(卵かけご飯)ではなく、TKNG(卵かけ納豆ご飯)が基本です。納豆大使になりたいくらい好きですね。『納豆アスリート』になりたいんです(笑)
地元茨城の納豆パワーのおかげでオリンピックで銀メダルがとれたんだと思います!」
スポーツ栄養アドバイザー石川三知さんの栄養解説
私達の身体はたんぱく質を基にして作られています。ヒトの身体を構成する60兆個を越える細胞の一つ一つが、たんぱく質(アミノ酸:ヒトの場合は20種類が必要です)を主な材料としています。また、アミノ酸は体内に貯蔵されにくい特徴があるので、食事ごとにいただく事がとても大切な栄養素です。
たんぱく質を豊富に含む食品には肉・魚・卵・乳製品・大豆製品がありますが、上手なたんぱく質摂取のポイントは「動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の組み合わせること」。1食の中で、どちらもバランスよく食べることによって、私達の身体に必要なアミノ酸を揃えることが可能になります。
そこで、大活躍をしてくれるのが 「納豆」。原料となる大豆は、日本人が昔から食べてきた、日本人にぴったりの食材。また、発酵させることによってできる納豆菌は大豆に含まれるたんぱく質の消化を促したり、腸内細菌を整えたりと、体内に吸収されやすい仕組みになっています。大豆を丸ごと食べられることも大きな魅力。脂質も少ないので、毎日食べても安心です。そのままでも、他の食材と組み合わせてもOK。ただし、納豆菌から作り出される酵素(ナットウキナーゼ=血栓を溶かす酵素)は熱に弱いので、その効用を期待する方は加熱せずに召し上がってください。
おすすめレシピはマグロ・卵・納豆と3種類のたんぱく質が摂取できます。また、モロヘイヤやオクラ、めかぶに含まれるネバネバ成分が胃腸をいたわりつつ免疫力UP!納豆のパワーを最大限に引き出してくれるレシピです。
スポーツ・体づくり
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98年、プロの競輪選手としてデビュー。競輪界でも大活躍。また、3人1組でタイムを競う自転車競技チームスプリントで、2000年シドニー五輪5位、03年シドニーW杯で金メダル、2004年アテネ五輪では見事、銀メダルを獲得。2008年の北京五輪にも出場する。さらに競輪選手でありながら、経済や政治にも関心を持つ。落選ではあったが、2009年茨城県知事選、2010年参議院選挙に立候補する。選挙終了後、競輪に復帰し、現在も大躍進を続けている。