鎌倉駅から徒歩15分。観光客が集まるエリアから少し外れたところに、「テールベル&カノムパン」はあります。2000年に葉山でオープンした「カノムパン」は、2015年からカフェ「テールベルト」と合流し、今の地で「素材を活かした飽きのこないパン」をコンセプトにしたパンを提供しています。今回は、地元の人だけではなく、多くのパン好きから愛されているカノムパンを営む中村夫妻に、おいしいパンの冷凍保存方法、解凍方法について聞きました。
――まず、「カノムパン」がどんなパン屋さんかを教えてください
素材を活かした飽きの来ないパンを焼きたいという思いから、素材を活かしたパン作りをしています。使用する小麦、ライ麦は全て国産のものです。小麦と言っても、いろいろな小麦を使います。うちでは、神奈川県藤沢市の小麦、栃木県のライ麦を粒で仕入れ、使う度に石臼で引いた全粒粉をどのパンにも混ぜています。酵母も自家製です。
シンプルなパンを焼きたいので、できるだけ余計なものを使わずに作っています。例えば、動物由来の食材を使っていないものが多いので、ヴィーガンのお客さまも多いです。
――ホームページを拝見すると、他のお店では見ないようなパンがたくさん並んでいます。作られるパンはどのように考えられるのですか?
旅が好きで、1年に1ヵ月とか2ヶ月旅に出ることが多かったんです。作っているパンは、これまで旅先でインスパイアされたものがたくさんあります。日本にもある食材だけど、日本ではやらない組み合わせを知ったり、日本人だったら熟してから食べるものを海外では青い状態で食べたりとか。パンだけではなく、食事や料理から学んだおもしろさをパン作りに活かしています。
――ヴィーガン向きのパンの種類が多いのも、旅から得たものですか?
バックパッカーをしていたときに、ベジタリアンやヴィーガンの人と出会いました。海外には、そういう人たちが入れるレストランがどこにでもあります。あるとき、その中の1人から「日本に行きたい」と言われたときに、「日本って、ヴィーガンが旅できる環境かな?」と思ったんです。
そして、同じものを食べられない人がいることを知って、一緒に食卓を囲めるものを作りたいと思いました。当初、カノムパンがあった神奈川県葉山には海外の方がたくさん住んでいて、ブランチをしに来てくれていたのですが、ヴィーガンの人もそうじゃない人も、「一緒にごはんが食べられて嬉しい」と言ってくれたのが嬉しかったです。
――カノムパンのパンは量り売りスタイルですが、食べきれないときや、通販で多めに買ったときには冷凍保存がおすすめと聞きました。パンをおいしく冷凍するコツを教えてください。
冷凍保存をするときに気をつけなくてはいけないポイントが2つあります。1つは、パンの水分が抜けるのをどう防ぐかということ。もう1つは、いかに早く冷凍温度を下げるかということです。この2つのポイントをクリアするのに最適なのが、アルミホイルです。
――アルミホイルをどのように使うのでしょうか?
まずは、パンを食べるサイズにスライスします。
スライスしたパンを、断面が空気に触れないようにアルミホイルでしっかり包んでください。このとき、アルミホイルが破れないように気をつけてください。
アルミホイルで包んだパンをジップ付き袋に入れ、空気を抜いて冷凍します。
――アルミホイルで包むというのは意外でした。パンの冷凍保存にアルミホイルが適している理由を教えてください。
パンに限らず、冷凍をするときにはラップで包んで冷凍するという方が多いと思いますが、ラップで包むと、冷凍している間に密着性がなくなりパンの水分が抜けてしまうんです。
その点、アルミホイルは形が保持されるので水分が抜けにくいです。また、熱伝導率が良いので、冷凍したときにパンを急速に冷やしてくれます。この状態で冷凍をすると1ヵ月ほど保存できるので、長く楽しんでいただくことができます。
――最適な状態で冷凍したパンをおいしく解凍する方法を教えてください。
冷凍庫から出したパンを、冷凍していたものとは別のジップ付き袋に入れて自然解凍します。ジップ付き袋に入れることで、解凍時に水分が飛ぶことを防ぎます。解凍時間は、2時間程みてください。解凍したパンは、弾力があればそのまま焼いていいですし、もし乾燥している場合は霧吹きで水をかけてからトースターに入れてください。
――乾燥した場合は、霧吹きで水をかけるといいんですか?
乾燥はパンにはよくないので、霧吹きでサッと水をかけるだけで焼き上がりが違います。最近は、スチーム機能がついているトースターがありますが、この機能はパンをおいしく食べるためにすごく良いと思います。 パンの中にいかに水分を戻すかが大事になので、トースターの熱によって水分をパンの中に焼き戻すイメージです。水分がしっかりあると、中は柔らかく外はカリっと焼きあがります。
――カノムパンには、他のお店では見ないようなパンがたくさんあります。カノムパンのパンを初めて食べるという方におすすめのパンを教えてください。
カンパーニュは使い勝手が良いパンだと思います。万能なパンなので、サンドイッチにも良いですし、スライスしてトーストしたり、休日のブランチにフレンチトーストなんかもいいですね。賽の目状に切ったカンパーニュにスープをかけて、ソテーした野菜をのせて食べるとパン粥のようになって、また違ったおいしさが味わえます。
――カノムパンのパンを食べるなら、これは外せない! というものはなんですか?
カノムパン創業以来の人気No.1は、バナナパンです。バナナパンと聞くと甘いものを想像すると思いますが、うちのバナナパンは甘くないんです。ほんのりバナナとメープルシロップの味がするくらい。生地に、バナナ、ココナッツ、シナモン、メープルシロップで作ったペーストをロールしたパンです。
その他には、スーパーフードの王様と呼ばれるスピルリナを練りこんだ「スピルリナとビーガンチョコチップ」や、ローズマリー、オレガノ、ヒマワリの種を練り込んだ「ロンゴ」も他にはないパンだと思います。
――すごく個性的なパンが多いですね!
全くといっていいほど、日本人好みの味に合わせようとは考えていないんです(笑)。だから、うちのパンは好みが分かれます。でも、他にはないものがたくさんあるのでぜひ食べていただきたいです。カノムパンのパンは、食事と合わせて食べてもらいたいなと思います。スープと合わせたりするのもおすすめです。
――では最後に、食事としてパンを食べるときのおすすめレシピを教えてください。
熊本県の麦入り味噌を練り込んだ「みそローフ」を厚めにスライスして、バターを塗ってトーストすると味噌バターみたいになって香ばしく焼きあがります。そこに、ゴルゴンゾーラチーズと生クリームを火にかけて塩で味を調えたチーズソースを作ります。そのソースとアボカドを焼き上げたパンにのせて食べると最高においしいです。あまりのおいしさに、お店のメニューでも出しています。
どのパンも、今回ご紹介した冷凍方法を使って保存ができますので、気になるパンや好きなパンを見つけたら保存して、長くお家で楽しんでください。
(TEXT:上原かほり)
テールベルト&カノムパン
2000年に神奈川県の葉山町でスタートし、2015年に鎌倉市へ移転。鎌倉の扇ガ谷にあったカフェ「テールベルト」と合併し「テールベルト&カノムパン」が出来ました。
素材の味を生かした飽きのこないパンを焼きたいという想いから、必要でない材料や動物由来の原料を極力無くしたシンプルでラスティックなパンを焼いています。そして、ビーガン、ベジタリアンの方もお楽しみいただける個性的でユニバーサルなパンを目指しています。お気に入りのバターやジャム、とっておきのオリーブオイルやスプレッドをつけて食べたり、毎日の食事に添えてください。
2021年9月21日(火)より、Komercoに「パン」のカテゴリが新しく仲間入りし、販売がスタートしました。朝食やおやつ、食事と一緒に楽しんでいただける、個性豊かなパンが全国から集まっています。
今回インタビューさせていただいたテールベルト&カノムパンのパンも購入できます。
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