世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんが、各地の家庭料理をお届けします。
甘いものでほっとするのは、世界共通。ちょっと小腹がすいたときや一息つきたいとき、そして子供の間食に、「手作りお菓子」と言うほどでもない素朴でシンプルなおやつが、世界中の家庭で作られています。
今回は、世界の家庭で教えてもらった、食事のついでにささっと作れてしまうような「簡単手作りおやつ」の知恵をお届けします。「たったこれだけでも立派なおやつ!」というヒントにしていただけたら幸いです。
ケニアの家庭でよく食べていたおやつは、アボカドに砂糖をかけただけのもの。意外な組み合わせですが、濃厚な果実に砂糖の甘さが相性抜群!家の周りにアボカドの木がたくさんあるので、木から実をもいできては子供が自分で作ります。夕方小腹がすいたときによく食べていました。
インドネシアの家庭では、毎朝のように「ピサンゴレン」を食べていました。調理用バナナを衣にくぐらせて揚げた「バナナフリッター」です。ピサンゴレンは、作り方がシンプルで揚げるのも楽しく、子どもがはじめに作れるようになる料理の一つです。朝食前のおやつにも、夕方のスナックにも、一日中いつでも食べます。日本で作る場合は、ふつうの甘いバナナにホットケーキミックスの衣で作るとお手軽です。
インドネシアの家庭に滞在していたときのこと。夕飯を作る傍ら、お母さんがタロイモを砂糖水だけで煮て、食後のおやつに出してくれました。
このイモは、日本の里芋の親戚。おかずと思っていたイモがデザートに大変身してびっくりしたのですが、これが意外な好相性!からだにやさしい素朴な甘さに、つい手が止まらなくなってしまいました。
煮るのに使った砂糖水は、実は朝ヤシの木からとれたばかりのヤシ樹液。煮詰めたら砂糖になる「砂糖の原液」です。酵素を含むため、放っておくと発酵してアルコールになってしまい長期保存ができません。たっぷりのシロップでイモを煮るこのおやつは、新鮮なシロップをおいしいうちに使い切る知恵でもあったのです。
日本で作る場合は、砂糖を水に溶いてもOKです。余っている里芋があったら、砂糖で煮ておやつにしてしまうのはいかがでしょう。
アフリカのスーダンでお世話になった家庭では、おばあさんが「夕飯後に甘いものがないと締まらない!」という方で、毎日おかあさんが簡単なおやつを作っていました。
定番は「メディダ」というプリンのようなお粥のようなおやつ。スパイスを炒め、牛乳・砂糖・小麦粉を加えて練るのですが、家にある常備食材だけで作れて鍋1つでさっとできるため、本当によく作ります。「メディダ」には、スパイスを使うものの他に、ドライフルーツや雑穀で作るものなど様々なバリエーションがあります。
温かいままでも冷蔵庫で冷やしても、ゆるめでお粥としてもかためでプリンのようにしても、様々な食べ方ができるのも繰り返し作られる理由なのかもしれません。
中東地域でおやつに使われる意外な食材が、「バーミセリ」という細くて短いパスタ。パスタをおやつに使うなんてちょっとびっくりしますが、パスタは日持ちがする上に料理にも使えて、小麦粉のような便利食材でもあります。
バーミセリを使ったおやつで一番簡単なのは、バターで炒めて砂糖と水で甘く煮たもの。ナッツやドライフルーツを入れたりすることもありますが、基本はとってもシンプルです。日本で作るならば、スパゲッティを割って使うのがよさそうです。炒め煮感覚でできてしまいます。
ここで紹介したおやつは、すごく見映えがするわけではありませんし、あまりにシンプルで名前のないものもあります。 しかし食べ手を思う気持ちに変わりはなく、肩肘張らないゆるやかさがむしろ心からほっとできる日常のひと息を作り出すのかもしれません。
世界各地のお母さんが作ってくれたおやつを思い出しながら、そんなことにふと気付かされ、なんだか肩の力が抜けたのでした。
台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
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