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コラム

料理写真をうまく撮るには?プロカメラマンが実践する「撮影前の準備」最初の一歩

【まいにちごはんの撮り方レッスン vol.2】暗くなってしまったり、うまく質感が出せなかったり、料理の写真を撮るのは意外と難しいもの。この連載では、料理写真家・田部信子さんに「おいしい料理写真」の撮り方をレクチャーしていただきます。コツをマスターして、SNSやブログにアップする料理写真をぐっと魅力的にしてみませんか?

ファーストステップは「イメージを決める」

こんにちは。料理写真家の田部信子です。
前回、連載第1回目では、写真を「どう組み立てるか」という撮り方のステップについてお話ししました。

撮り方のステップ

(1)イメージを決める
(2)どこで撮るかを決める(どんな光を使うか)
(3)どこから撮るかを決める(アングル、カメラの位置)
(4)どのくらいの範囲を写すのか決める(レンズを選ぶ)
(5)構図を決める
(6)スタイリングを決める
(7)明るさと色の調整
(8)主役にピントを合わせて撮影

それではいよいよ、それぞれのステップについて具体的にどうするのかをご紹介していきます。今回はまず、(1)イメージを決めるというところについて書いていこうと思います。

記事最上部のフルーツの写真は、朝ごはんのシーンをイメージしたので、座った位置から見たアングルに。上の写真は、特定のシーンではなく、カットフルーツの盛り付けの「形」を伝えるために撮ったもの。同じ対象物でも、イメージ次第で撮り方は全く変わってきます

皆さんが写真を撮る時って、どうやって撮っていますか?と聞くと、皆さんキョトンとします。「シャッター押すんでしょ?」という声が聞こえてきそうです。

実際、多くの人が撮影する姿を見ていると、料理が出てきてからやおらカメラ(スマホ)を出し、パチっと撮る、というのが多いように思います。

それじゃ駄目なの?と思いますよね。確かにそれでも写真は撮れます。でも、それって「そこにあるものがただ写るだけ」なんです。

撮る前は、このホカホカのご飯の感じを写したい!とか、このお肉の照りっとしたところ、おいしそう〜!と思ってシャッターを押していると思います。そしてきっとそれが写真にも写るはず……と思いますよね。

でも実際、現実は厳しくて、思った通りの写真が現れてこないことも多いです。それってどうしてなんでしょうか?

実は人間の目はとても賢いので、良いように目の前のイメージを脳内で変換して見ているんです。でも、カメラは言ってしまえばレンズから入ってきた光を記録するだけの機械。そうはうまく動いてくれません。そこにある光の状態をただ記録するだけです。

思ったように写したいのであれば、カメラに対してきちんと指示をしてあげないとダメなんです。「何となく」ではなく「きちんと」です。

出来上がりをイメージして、予測して準備する

かく言う私も、カメラマンのアシスタントとして働くまではそれを知りませんでした。私は広告カメラマンのアシスタントになる前にも写真は撮っていたのですが、それまでは「何となく」「いい感じに」写真を撮っているだけでした。そして多くの人と同じように、カメラマンは「センス」で写真を撮っているんだと信じていました。

さて、実際にその状態でアシスタントになった私がどうだったかというと、カメラマンが要求していることが何一つできない「使えないアシスタント」でした。

必要なものを忘れる。スタジオに着いてもどう動いていいのか分からない。分からないので言われてから慌てて動くので失敗ばかり。そして怒られる……この繰り返し。でも何度言われても、どうやったらうまくアシスタントの仕事ができるのか、さっぱり分かりませんでした。

どうして自分にはできないのか……。追い詰められた私はある日、スタジオに入ってからカメラマンがどう動いて何を見ているかをじっと観察しました。そして、夜遅くに時系列でカメラマンの動きを思い出しながらノートに書き出してみました。

まずはモデルの立ち位置を決めてたなぁ。カメラにさっとレンズを付けて、その次は「カメラはここね」と言いながらカメラを三脚にセットして……。と、そこであることに気が付いたのです。

あれ?
なんで迷わずに数あるレンズの中からこのレンズをカメラに付けたんだ??
なんで最初から三脚を置く場所が決まってるんだ???

考えるうちに見えてきたことがありました。「カメラマンは、スタジオに入る前に、今日の撮影が全てイメージできているんだ!」。

カメラマンというのは、モデルの周りを縦横無尽に動きながらズームレンズをぐるぐる動かして「センス」で撮るんだと思っていた私には、それは驚きでした。「プロカメラマンは撮る前にイメージを決めて準備してから撮ってるんだ!」と初めて気がついた瞬間でした。

プロとなった今考えると当たり前のことなんですが、その時まで「写真はセンスで撮るもの」と信じていたので、これは大きな発見でした。同時に、プロカメラマンのように撮るには、撮影に必要な要素を理解し、それを順序立てて準備する必要があるんだと、そのノートに並んだ文字を見て驚いたことを覚えています。

そう、写真って準備力なんです。どれだけ出来上がりをイメージして、予測して準備できたか、というのが実は大切になってきます。

まずは自分自身の「写真の好み」を知ろう

では、どうやって「イメージ」したら良いのでしょうか?

例えば、今日ハンバーグを撮りたい!と思ったとします。その時に、その写真は誰に向けて、どういうストーリーにするのかを考えます。小さな子どもさん向けのハンバーグなのか。高校生向けのボリューム感のあるハンバーグなのか。はたまたちょっと遅めの午後に、カフェで食べているようなハンバーグなのか。

そのストーリーができてくると、それを表現するためには、どんなお皿を使うのか。テーブルクロスを敷くのか。カトラリーは写すのか。副菜はどんなものにするのか。画面いっぱいにハンバーグを写すのか。それともテーブルの周りの雰囲気も入れて写すのか……などが見えてくると思います。

これは、「カフェのハンバーグ」をイメージして撮った写真。お皿は真っ白ではなく少し色がついたものを。サラダやスープ、フルーツも全部一緒に盛るとカフェごはんっぽく見えます

なかなかイメージがわかない……という場合は、アプリやツールを使うのもおすすめです。

例えば『Pinterest』というアプリで「ハンバーグ」と検索したり、『Instagram』のハッシュタグ検索で「#ハンバーグ」と入れてみたりしましょう。その中でご自分の撮りたいイメージに合う写真を探して、一番いいなと思う写真を1枚ピックアップしてみてください。

そして、その写真のどこが「いいな」と思ったポイントなのかを書き出してみます。例えば構図がいいのか、色のトーンが好きなのか、できたての温度感まで伝わってくるリアルさが素敵とか。どんな要素でもかまいません。この作業によって、自分自身の「写真の好み」が分かってきます。

自分の好みや撮りたい写真の理想形がハッキリ認識できたら、まずは可能な限り、そのイメージに近づくように撮ってみましょう。

最初は思ったように撮れないかもしれません。でも、ゴールを決めてそれに近づこうと工夫することで、「あの写真のように奥行きを出すにはどうしたらいいんだろう?」とか「この照りっとしたおいしそうな感じはどうしたら出るんだろう?」など、疑問が湧いてくると思います。疑問が出てくれば、あとは解決するだけです!

このコラムでは、一つひとつ、そうした疑問点を解決していきたいと思っています。撮ることは上達の近道です! ぜひやってみてくださいね。

次回からは、実際の撮り方についてお話ししていきます。まずは、「写真にどうやって立体感を出すのか」というお話をしようと思います。お楽しみに。

田部信子

横浜市出身。青山学院大学文学部英米文学科卒業。外資系IT企業のSE職を経て、カメラマンへ転身。広告、雑誌、ブライダルの撮影を行う。双子出産後、カメラ教室で約3000人の生徒さんに写真の撮り方を教える。2018年より、料理写真家として活動中。

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