『世界一簡単に人を幸せにする食べ物、それはトースト』が3万部を突破! オリジナルトーストレシピが118個も載ったこの本の著者であり、『ELLE gourmet』元編集者・山口繭子さんにインタビュー。私たちの“朝時間”を幸せにしてくれるトーストの魅力について聞いてみました。
ーー『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』という本を出版するほど、トーストへの愛が深い山口さん。トーストにはまったきっかけは何だったのでしょうか。
「前職がフードマガジンの編集者だったこともあり、食べることは好きなのですが、実はあまり料理は得意ではないんです。でも、雑誌編集者の仕事がとっても忙しかったので、この毎日を楽しくできるものはないかなと思ってトーストを作ってみたら、これがもう最高で。自分にとって息抜きになることに気づいたんです。朝時間にヨガや散歩をする人がいるように、私にとってそれが朝トーストでした。今では朝ごはんは自分を取り戻すための大事な時間になっています」
ーー山口さんのトーストは斬新なレシピが多く、私たちに“発見と気づき”を与えてくれます。食材や調味料の組み合わせはどのように考えているのでしょうか。
「トースト作りは、私にとって実験のようなもの。朝においしい実験が待っていると思うだけで生活が楽しくなります。これまでの経験や知識から、どうやったらおいしくなるのか、自分のご機嫌をとるための仕掛けを考えています。そんななかで、成功した組み合わせが『あんぽ柿とピスタチオのトースト』です」
「あんぽ柿作りが得意な母からどっさり送られてきて、ここまでは食べきれないと焦っていた時に、この組み合わせを試してみました。以前、取材でレストランやワインバーを訪れた時に、いちじくとブルーチーズを使った料理を食べたことがあって、似たような“とろ甘食感”のあんぽ柿でもうまくいのではないかと思って作ってみたものです。コーヒーとの相性もバッチリですよ!」
「私は料理家ではないので『こんなはずじゃなかったのに…』と思う味になることもあるのですが、それでもまずくて食べられなかったことは1回もありません。きっとそれは、前職の経験が生かされているのでしょうね。先ほどの『あんぽ柿のトースト』のように、自分でも気づかないうちに、どこかで覚えた味や情報を取り入れているのだと思います。
例えば、以前作った『パイナップルの生姜炒めトースト』も昔訪れたバーでの体験がヒントになっています。ジンジャーとパインのカクテルを飲んだことがあり、そこでの記憶を頼りに作ってみました」
ーー新型コロナの影響でおうち時間が増えた今、これから料理を始めようとしている人も多くいます。そんな方々も楽しめる簡単でおいしいおすすめトーストがあれば教えてください。
「私が作るものはすべて10分くらいで作れるものばかりです。食パンに切り込みを入れるだけ、焼いて調味料をかけるだけのものもあるので、ふだん料理を全くしないという方も楽しんでいただけると思います。
手始めに作るのであれば、切り込み技を使ったトーストがおすすめです。食パンにナイフで切り込みを入れるだけで、食感が変わるんですよ」
「切り込みを入れた食パンを焼いてシナモンと砂糖、バターを置いたら完成!切り込みを入れることで焼ける面が増えてサクサクになります」
「食パンの内側に切り込みを入れるとカリカリになって、耳も食べやすくなります。私はそこに『カカオニブとはちみつ』をのせていただきます。カカオニブがない場合は、ごまや砕いたミックスナッツをのせるのもおすすめです」
「これからの季節は『いちごトースト』もいいですね。特に、私は炒めたいちごに砂糖とバルサミコ酢を加えたトーストが好きで、これを食べると大抵の悩みも解消されて、自分の機嫌も良くなります(笑)。不機嫌を長引かせるのはよくないですからね。自分の機嫌は自分でとるのが大人。それをできるのが私の場合はトーストです」
ーーパンの包容力に気づき、いろいろな食材の組み合わせに挑戦されている山口さんですが、「至福のトースト」を作るために意識していることはありますか?
「おいしいトーストを作るコツは、こだわりを持たないことだと思います。食パンもコンビニのものでも十分おいしいですし、絶対にこれじゃなきゃダメ!みたいなこだわりはありません。
二日酔いの朝はトマトジュースだけ飲んで終わることもありますし、デニッシュ系のパンの日は何ものせずにそのまま食べます。こだわりを持つと毎日作るのが大変になってしまうから、そのとき家にあるものやすぐに手に入るもので作っています。唯一こだわるとしたら、おいしく食べること。カロリーなんか気にせず思いっきりバターも使って、残さず全部食べきります!」
ーー最後に、朝ごはんをより充実させたいと思っている人へメッセージをお願いします!
「大げさかもしれませんが、朝ごはんって生きていくために必要なものだと思うんです。食べないとパワーが出ないし、パワーが出なかったら1日憂鬱な気持ちになる。だから、朝は絶対食べたほうがいいと思います。そして、毎朝食べるためにも、まずは続けられることが大事。私はそれがトーストでした。そんなふうに、自分が食べたいと思ったものを作るのがいちばんだと思います。」
昨年、2020年11月17日に発売された山口さんの著書『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』(サンマーク出版)
独特な表現が満載で、レシピ本なのに思わずクスッと笑ってしまう山口さんの著書。今回は、トーストの魅力をハッシュタグ形式で表現していただきました!
#トーストの上は治外法権
#怖がらないでのせてごらん
#バターはカロリーじゃなく調味料
#食べ過ぎたら走ればいい
#食べ過ぎたら昼抜けばいい
#トーストで幸せホルモン分泌
#トースト遊びはぼっちパラダイスの最高峰
#失敗したらもう一枚作って食べりゃいい
#運と幸せがトーストに不時着
#楽園トーストで脳内幸せ貯蓄
…………あのう、永遠に続きますがどうしましょう(笑)
この記事に載っているトーストすべてのレシピはすべて、この本でご覧いただけます。全118のレシピは、どれもすごくおいしいものばかり。
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(TEXT:河野友美子)
ディレクター。神戸市出身。『婦人画報』、『ELLE gourmet』編集部(共にハースト婦人画報社)を経て独立。食とライフスタイルをテーマに、様々なメディアやプロジェクトで活動。主に朝ごはんのトーストを投稿しているInstagramが話題。
Instagram:@mayukoyamaguchi_tokyo
note:山口繭子 note