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コラム

なぜ?パン消費量日本一の京都 地元人気ベーカリーに理由を聞いてみた

総務省統計局の「家計調査(二人以上の世帯)の品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2020年から22年平均)によると、京都市がパン消費量・金額ともに第1位にランクイン!今回に限らず、過去も含めてパン消費量全国トップクラス常連の京都市。統計データだけでは見えてこない「京都人はパンが好き」の理由が気になる!京都在住ライターが創業110年を迎えた京都の老舗ベーカリー「進々堂」の樋上雄哉さんに、その見解を聞いてみました。

愛されて110年、京都の老舗ベーカリー「進々堂」

ーー「京都のベーカリー」といえば必ずといっていいほど進々堂さんのお名前があがります。進々堂さんは、どこの店舗も煉瓦造りで洋館っぽい上品な雰囲気が印象的ですよね。どのようなコンセプトで各店舗を運営されているんですか?

私たちは2023年で創業110周年を迎えました!創業当時から変わらず、来ていただくお客様に「安心」をお届けしたいと考えているので、落ち着く空間づくりを意識していますね。それはお店のデザインや雰囲気もそうなのですが、お店に並べるパンのラインアップもすごく流行りにのったものというよりは、フランスパンや食パン、クロワッサンのようにスタンダードなものに力を入れています。

私たち進々堂は、パンを「主食」だと考えているんですね。まだまだ多くの人がパンは「軽食」というイメージがあると思うんです。例えば、おやつに食べるとか、小腹がすいた時に食べるとか。クリームパンやカレーパンといった菓子パンや惣菜パンを思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれません。私たちの考える主食のパンっていうのはシンプルな味わい。お米と同じような感覚で、お料理と一緒にパンを食べるっていう文化を発信していきたいと考えています。

京都人のライフスタイルにマッチした「スライス食パン」の登場

ーー実際に「京都人はパン好き」ってよく言われていますし、データ上でもそうなんですが、率直にこれについてどのように感じられますか?実感はありますか……?

いやあ、実感しますね。っていうのも実際に市内にベーカリー、めちゃくちゃ多くないですか?長く経営されているところもありますし、新規のお店もどんどんオープンしてきています。多少の増減がありつつも、これだけのパン屋さんがあるっていうことは、まずそれだけ需要があるっていうことなんだと思います。

ーーたしかに、私の家の周りだけでもベーカリーがいくつあるんだろう?と思うくらいあります(笑)。ずばり、京都人はなぜこんなにもパンを食べると思われますか?

「我々の会社にとって」というところでいうと、1952年に「デイリーブレッド」という食パンを発売したんです。実は、これがスライスした食パンが包装された状態で販売された日本で初めての商品だったんですよね。

それまでは「三斤棒」で、いわゆるスライスせず、長いまま包装されることなく裸の状態で売られていたんです。自分で切らないといけないし、切って保管していると乾燥でどんどん美味しくなくなるし、そんなに大きなパンを保管する場所もない……ということで日本ではあまり浸透していなかったんですね。

スライス食パンの販売が開始されると、これまでの不便さが一気に解消されて、進々堂があった京都を中心にどんどん普及していったそうです。食パンが気軽にパッと食べられるようになったので、個人のお客様はもちろん、自分の店舗でも提供したいと、飲食関係者の皆様にも買いに来ていただけるようになって。このように京都で今でもパンを食べる文化が他府県と比べてより定着しているのは、スライス食パン発祥の中心だったことが関係しているのかなと思います。

ーー今やスーパーやコンビニでも買える食パンは、スライスして袋に入っていることが普通ですが、その先駆けとなったのが進々堂さんだったんですね。新事実です!

そうなんです!特に京都の西陣といえば、職人さんが多い地域なので、朝ご飯に手軽にぱっと食べられたり、小腹がすいた時に作業をしながら軽食として食べられたりとか。この辺りに住む人のライフスタイルにスライス食パンがうまくマッチして、いち早くこの地で受け入れられるようになったのも理由の一つだと思いますね。

コーヒー消費量の多さも「京都人のパン好き」に関係している……!?

ーーほかに「京都人はパン好き」の理由として考えられることってありますか?

あともう一つ、京都ってコーヒーの消費量も多いんですよね。市内には歴史ある純喫茶がたくさんありますし、コーヒーを片手にパンを食す。こういうパンの楽しみ方をする人が多いことも、京都の全国パン消費量の順位を押し上げているんじゃないかなと思っています。

ーーたしかに、京都市には喫茶店やカフェがたくさんありますよね。総務省統計局のデータで見ても日本第2位のコーヒー消費量!一般的に「和」のイメージがある京都で、どちらかというと「洋」に分類されるパンとコーヒー。なぜ京都の人にとって「洋」のものがこんなにも身近な存在になったのでしょうか?

もちろん色々な人がいらっしゃるという前提ですが、京都人の気質じゃないですかね。新しいもの好きで、奇抜なものも一旦受け入れてみようとする雰囲気があると感じます。伝統があるからこそのカウンターカルチャーがあるんでしょうか。

実際に、京都は寺社仏閣など歴史あるスポットがたくさんありますが、新しい取り組みの始まりの場所として選ばれることも多いなと思います。例えば、東京にしかない店舗が2店舗目を構えるのが京都だったりとか、期間限定のイベントやポップアップを京都で開催したり。そういうことは、京都が新しいものが受け入れてもらいやすい場所だっていうことが表れているんではないでしょうか。

「お米と同じ感覚で」主食としてパンを食べる文化が根付く、京都

ーー京都にいくつも店舗を構えられている進々堂さんですが、地域にお住まいの皆さんがどのようなパンを好んで買われる、といった傾向ってありますか……?進々堂さんの実績ベースでいくとどのようなパンが人気でしょうか?

私も今回のインタビューのお話をいただいて色々な人に聞いてみたのですが、「京都人だからこのパン」という傾向は正直掴めなかったです……!ただ弊社の販売数量ベースでいうと、クロワッサンや食パンが人気ですね。

特に食パンは、日本では一番「主食」に近い形で食べられているので京都でもそうだと思います。塩分や油脂の使用を最小限に抑えた弊社の山型食パン「醍醐味」は、健康に良いものを毎日食べてもらうことを意識して開発した商品でして、素材の味を非常にシンプルな味わいなので、極端にいうときんぴらごぼうなどの和のお料理と合わせても全然違和感なく召し上がっていただけますよ!

ーー日常的にパンを食べる京都の人達に応えるべく、進々堂さんも毎日安心して食べられるような商品を開発されているのですね!最後に、京都の人のパンの食べ方やシチュエーションに特徴ってあると思われますか?

私が考えるに、パンの食べ方に特徴が無い、ということが逆に特徴なのかもしれないですね。日常に完全に入り込んでいて、生活のなかに当たり前にあるもの。お米をいつ食べるかって聞かれても、いつでも食べますって答えるじゃないですか。京都の人にとってパンは、そんな存在なんじゃないかなと思います。人によって様々な時に「パンを食べたい」と思われるのでしょうが、それに傾向がないということそのものが「京都人とパン」の関係性なのかもしれませんね。

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