『カレーの秘伝』(光文社)という本をご存知でしょうか。著者は料理研究家のホルトハウス房子さんです。
この本は1976年に刊行され、本格カレーの魅力と作り方を紹介した名著で知られています。40年前の本にもかかわらず、今読んでもひとつも古びることなく、新しさすら感じるのは、まさに家庭料理とカレー作りの基本が、徹底的に詰め込まれた一冊だからでしょう。
このたび『カレーの秘伝』が、新版 『ホルトハウス房子の世界でいちばんおいしいカレー』(PHPエディターズ・グループ) として刊行されました。32種類のカレーレシピとエッセイが、今またこうして読むことができることは、たいへん嬉しいことです。
これほど心を働かせ、手間と時間をかけて作るカレーは、世界でいちばんおいしいに違いないと納得できます。そしてまた、ここで紹介されているカレーをこしらえるということは、料理に必要とされている、基本の技術を学ぶことが出来るとも気づきました。
「世界でいちばんおいしいカレー」を食べてみたい。それなら自分でこしらえてみよう。そう思い、早速「ビーフを使ったリッチなカレー」の準備に取り掛かりました。
1回目はうまく出来上がりませんでした。しかし、失敗は成功の元。料理とはレシピ通りに作れば、必ずしも成功するとは限りません。材料も道具も段取りも、その時々の状況が異なり、感覚の違いもあるから当然なのです。
料理は丸2日かかりました。おいしさは、香り、味、見た目、そのすべてが、今まで出会ったことのない豊潤な味に満ちていて、おいしい家庭料理とはなにかを深く教えてくれるものでした。
ここで紹介するのは、著者のレシピを参考にして2度こしらえ、自分なりに分量と時間を調整した新しいレシピです。もちろん、本のレシピ通りにこしらえてもおいしく出来上がります。
ひとつの参考として、みなさんそれぞれの料理方法により、自分だけの「世界でいちばんおいしいカレー」のレシピをお作りいただけると幸いです。1日目にスープストックとラード、カレーソース(20食分)をこしらえ、2日目にビーフカレーをこしらえます。