しかし、私個人の感想を述べたところで信頼されないかもしれませんので、各お米の味を客観的に評価してみようと思います。味の客観的な評価が得意なものといえば・・・
味覚を数値化できる味覚センサー「レオ」!!
レオくんに、A・B・C・Dそれぞれの味を分析してもらい、それぞれのポイントをグラフにしました。その結果、氷のチョイ足しが、甘味0.17ポイント増と、最も甘味を増す傾向があることがわかりました。私の味覚は間違っていなかった・・・!
お米は、水分と熱が加わることで、主成分のでんぷんの結晶が解けて、甘味と粘りが出る「糊化」という現象が起きます。炊飯を始めると、釜の中では水温を一定に保とうとしてお米が回転する(対流が起こる)ため、お米の内部に均等に熱が伝わり、お米全体で効率的に糊化が進みます。対流は、炊き水が沸騰すると止まってしまいますが、氷をチョイ足ししたことで沸騰までの時間が長くなり、対流が長く起きたことで、お米の内部までじっくりと糊化が進み、甘味が増加する傾向となったのだと考えられます。
氷に次いで甘味が増す傾向が見られたのは、0.12ポイント増の備長炭でした。備長炭が持つ遠赤外線効果が、お米の内部まで熱を伝え、内部の糊化を助けたためだと考えられます。にがりについては、残念ながら、大きな味覚の変化を確認することはできませんでした。にがりは味覚よりも、にがりに含まれるミネラル成分の影響で口当たりを変化させる効果があると考えられます。
ちなみに、炊き上がりから6時間後の比較では、水道水炊きは、粘りが強くてほぐしづらかったです。一方で、氷チョイ足しご飯は、適度な弾力と甘味が残っていました。備長炭チョイ足しご飯は、見た目が黒っぽく変化していまい、味よりも見た目が残念なことに…。にがりチョイ足しご飯は、炊き上がり直後に感じた舌に残る味は感じず、べたつきが減り、お弁当のご飯に向いている印象でした。
炊飯は、水の温度やお米の洗い方、炊きはじめまでの時間など、様々な条件が炊き上がりに影響を与えますが、おうちに必ずある氷をチョイ足しして、手軽にいつものご飯を美味しくバージョンアップできるのは嬉しいですね。あなたもぜひ、「チョイ足し炊飯」をお試しください!
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。