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コラム

もちもち派?ほろほろ派?しっとり派?自分史上最高「塩むすび」探究のススメ【お米ライターのコメバナシvol.4】

私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。

まずは目指す「おむすび像」を思い浮かべる

「おむすび」と「おにぎり」。この違いについては諸説ありますが、個人的には「にぎる」よりも「むすぶ」ほうがお米への愛が感じられるので、「おむすび」と呼んでいます。

以前に某おむすびチェーンを取材の際、商品本部長の方が一つ一つ手でむすんだ自社のおむすびについて「三角形のおむすびの角と角の3点をふんわりと手でむすんであげて、お米1粒1粒がちゃんと呼吸できるように」とおっしゃっていました。この言葉を聞き、「むすぶ」ことはごはん粒に命を吹き込むことなのだなあと思いました。

「おいしいおむすび」とひとくちに言っても、「もちもち」が好きな人もいれば、「ほろほろ」が好きな人、「しっとり」が好きな人もいて、目指すおむすびは好みによってさまざまです。

まずは、自分が好きなおむすび像を想定して、お米の品種を選ぶことから始めます。粘りが強く軟らかいお米もあれば、粘りが少なく粒立ちの良いお米、しっとりとしてしっかりとした弾力のお米もあり、品種によっておむすびの食感は変わってきます。さらに、塩むすびならば味の濃いお米、逆に味が濃い具材を入れるならばあっさりとした味のお米にするなど、突き詰めていくと幾通りもの楽しみ方があります。

個人的には、程よい粘りで粒張りが良く、食べると口の中でごはん粒がほろほろとほどけていき、噛んだときに弾力を感じられるお米が好みです。

おいしい塩おむすびの作り方

最近は具材がたっぷりと混ぜ込まれたおむすびが多い印象ですが、おむすびの主役はあくまでお米! そこで、今回は「シンプルな塩おむすび」の作り方をご紹介します。

まずはお米を洗います。糠切れが良い精米、かつ精米したての場合はさっと洗うだけで良いと思いますが、精米から時間が経っている場合やコイン精米機、家庭用精米機などを使った場合などは洗米時に両手のてのひらで米を優しくこすり合わせて軽く研ぐことをおすすめします。

また、研がずにさっと洗っただけのお米を炊いてみて「ツヤや舌触りがいま一つだった」という場合は2回目から上記の方法で優しく研いでみてください。改善する可能性があります。

お米を炊く際に最もと言っていいほど大事なことは、浸漬です。
一般的にはお米は2時間で飽和すると言われていますが、お米の味をより引き出したい場合は2時間以上の浸漬をおすすめします。その際は必ずフタつきの容器などに入れてくださいね。

じっくりと芯まで水を入れることで、芯までしっかりと火が入り、ふっくらと炊き上がるだけでなく、お米の味が引き出されます。ちなみに私は最低でも5時間ほどは浸漬させています。

炊きあがったお米は、釜の底や側面からまんべんなくほぐすことが大事です。炊きムラを均一にするだけでなく、余分な水分も飛ばします。

そして、手水をつけたら中指と薬指の腹にたっぷりと塩をつけ、手のひらにまんべんなく塩を広げます。

おむすびをむすぶ際は、きれいな形にむすぶことばかりを意識しすぎると、ぎゅっと米粒が押しつぶされてしまい、たとえ見た目は美しくても食べるとごはん粒同士がくっつきすぎて硬い食べ心地になってしまいます。

おむすびをむすぶときのコツは、ごはん粒とごはん粒の間にある空気も一緒にむすぶようにイメージすること

ごはん粒同士の接着剤となるおねばを信じて米肌と米肌をそっと触れさせるような感覚でむすび、崩壊しないぎりぎりの力加減でごはん粒同士を出会わせると、食べたときに口の中でごはん粒がほろほろほどけていくようなおむすびに仕上がります。前述のおむすびチェーンの本部長の言葉通り、「ごはんの一粒一粒が呼吸できるように」むすぶことを意識してみてください。

おむすびの塩味は出来立てのときは感じやすいですが、冷めると感じづらくなっていきます。そのため、食べるタイミングを考えて塩加減を調整することをおすすめします。すぐに食べるならば塩は控えめに、冷めてから食べるならば気持ち多めに。

そして、当然ながらおむすびの大きさによっても表面積の広さが変わります。小さなおむすびならば塩は控えめに、大きいおむすびならば気持ち多めに。また、塩の種類によってもおむすびの味わいが変わりますので、さらに突き詰めたい!という人は、使うお米と相性の良い塩を探してみてはいかがでしょうか。

ちなみに、おむすびの海苔の好みは「パリパリ派」と「しっとり派」に分かれます。私はどちらかというと「パリパリ派」でしたが、それはいつも作るおむすびが三角形だったからだと気づきました。

おむすびを丸い形に作ると、たちまち「しっとり派」に変わるのが不思議です。「パリパリ派」の人も「しっとり派」の人もおむすびの形を変えてみたり、使う海苔を変えてみたりすると、新たな自分の嗜好に気づくことができるかもしれません。個人的には塩むすびの場合は海苔を巻かないことがほとんどですが…。

おむすびは手でむすぶからこそおいしい。でも、だからこそおいしさのベースは衛生管理。寒い冬だからといって侮らずに手をしっかり洗って、食中毒などにも気をつけながら楽しんでください。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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