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コラム

アニメ好きやヴィーガンに大人気!日本のおにぎりがパリで独自進化していた

オリンピック開催予定のパリで人気の「おにぎり」

2024年にオリンピックが開催される予定のフランス・パリ。競技そのものはもちろん、パリの文化や流行にもスポットが当たることが予想されます。

現在、パリでは日本発祥のおにぎりが注目されていて、おにぎり専門店が賑わいを見せ、スーパーでもおにぎりが気軽に買えるようになっているそう。

2024年は「パリおにぎり」も世界から注目され、一大ブームとなるかもしれませんね。

今回はパリ在住の日本人ワイン&フードライター・吉田恵理子さんに、パリのおにぎりの人気ぶりや、具材のバリエーション、日本のおにぎり文化との違いを詳しく伺いました。

日本のアニメファンや、ヴィーガンの人にも人気

日本の有名チェーン店「おむすび権兵衛」はパリでも連日行列ができるほどの人気

パリでおにぎりが人気ということですが、実際にパリの人たちがおにぎりを知るきっかけは何なのでしょうか。

吉田さん: 「フランスではアジアの食べ物がとても流行っています。 韓国のドラマをみんな見ていますし、 日本のマンガやアニメも読んだり見たりするのが当たり前。 その中に登場したものを食べてみたくなるというのがあります」

確かに、見ているドラマやアニメに登場した食べ物は実際に食べたくなりますね。吉田さんによれば、こうした日本のエンターテインメント作品の影響のほかに、ベジタリアンやヴィーガンの人にもおにぎりは人気なのだそう。

吉田さん: 「菜食主義と言ってもいろいろなタイプの人がいるんですが、肉だけ食べない、それに加えてバターやチーズ、卵も食べないヴィーガンの人もいます。フランスの一般的な昼食といえばバゲットにハムなどいろいろな具材を挟んだサンドイッチですが、バターやチーズ、マヨネーズもNGだとほとんど選択肢がありません」

野菜サンドにもバターやマヨネーズが入っていることが多く、ヴィーガンの方が気軽に食べられるメニューというのは本当に限られているんだとか。おにぎりは、そうしたニーズに応えられる食べ物なんですね。

吉田さん:「ヴィーガンの人たちは環境への配慮や、健康意識が高い人が多く、けっこう高所得者層の人が多いんです。そういう人たちは日本の食べものはヘルシーと認識していて、おにぎりもうまく選べばノンオイルになる。そうしたところが人気なのだと思います」

肉や魚を使っていない「生姜ときのこ」と「ゴマアボカド」のおにぎり。

酢飯、具だくさん…パリおにぎりの特徴とは

日本食への興味やヘルシー志向がきっかけとなり、パリで広く親しまれているおにぎり。その味や特徴も、日本と同じなのでしょうか?

パリのおにぎり専門店「ONIGIRIZ」。ショーケースに三角のおにぎりが並ぶ。

吉田さん:「パリのスーパーに売っている、日本のコンビニおにぎりタイプの三角おにぎりを調べたところ、全部酢飯でした」

吉田さんは、これには2つの理由があると考えています。

吉田さん:「まず1つ目は、生産ラインの問題。パリではお寿司やポキ丼がもう有名になっていて、それらは全部酢飯です。それらのメニューと同じラインでおにぎりを作っているから酢飯になるというのがあると思います」

サーモン&アボカドといった、お寿司のような具材のおにぎりも。

吉田さん:「2つ目は、白いご飯に何もつけずに食べる習慣がなくて、味がしないことに耐えられないというのもあると思います。米は昔から食べられている食材ですが、メインの食事の横に、ゆでてバターを和えた米が添えられたり、リオレ(ライスプディングのフランスでの名称)のようにデザートとして食べるというもので、炊いたお米をそのまま食べる文化はないんです。デパートやスーパーはたくさんの人に好きになってもらわないといけないので、みんなが好みそうな味をつけたお米でおにぎりを作っているんでしょうね」

お寿司やポキ丼ですでに酢飯が受け入れられているから、おにぎりも酢飯で…ということなのですね。おにぎり専門店では酢飯ではないおにぎりもあるそうなので、いろいろなお店で食べ比べしてみたくなります!

「ONIGIRIZ」のおにぎり。見た目も鮮やかなものが多い。

包装もおしゃれ。

吉田さん:「あと、パリのおにぎりは具がすごく多いですね。ひとくち食べて、すぐ具に届かないとつまらなく感じる。これはフランスの食文化に関係するところもあって、メインディッシュの肉や魚と、それに添えられるパンの関係と同じではないかと考えます。日本のように、『お米が主食』という考え方とは違うんですね。だから、おにぎりでも具がメインで、お米は添え物と考えていて、米より中の具材を大事に思っているんじゃないでしょうか」

パリに売っているおにぎりで、日本にはない、パリらしさを感じる具材についても伺いました。

吉田さん:「私が買いに行ったときに見たのは、羊肉のおにぎりです。シシケバブのようなお肉を細かくしたものが中に入っていて、これは日本では見たことないなと思いました。お味はすごくおいしかったですよ。あとは玄米のおにぎりにドライトマトとオリーブが入っているものもおいしかったです。ドライトマトの酸味がきいていて、梅干しのかわりとしていける食材だと思いました」

「おむずび権兵衛」のドライトマト入りの玄米おにぎり。見た目も梅干しそっくり。

吉田さん:「また、ソースを上からかけるおにぎりを提供しているお店もあります。シラチャー(唐辛子ソース)とマヨネーズのソースで、その上にオニオンフライがかかってるんです」

ソースをその場でかけるのは、アトラクションぽさがあっていいですね!場が盛り上がりそうです。

「SAMOURICE」のおにぎりには、シラチャーマヨソースを勢いよくかけるものも!

吉田さん:「中にはシラチャーマヨで和えたサラダチキンが入ってます。面白いし、おいしいですよ」

ピリ辛マヨソースとサラダチキンが合いそう。

パリのおにぎり、その価格は?

さまざまな具材があり、バリエーション豊かなパリおにぎり。気になる価格はどれくらいなのでしょうか。

吉田さん:「所得の高い人たちが集まるエリアのおにぎり店では、小さなおにぎりが4ユーロで、だいたい600円以上(取材当時)だったりするので、ちょっといい食べ物という位置づけですね。お寿司に近い感覚かも。見た目やパッケージがおしゃれで、かつヘルシーでおいしいから、飲み物も入れて1食が2000円くらいというのは、これくらいならいいかな?という感じの価格です」

日本のコンビニおにぎりも最近高くなっていますが、それを上回る価格にびっくり!でもヘルシーさやおしゃれさに納得して購入する方が多いのだそう。

お店の立地やターゲット層によって価格に差が出る。「おむすび権兵衛」は1つ2.5ユーロ前後

先ほど、一般的なお昼のメニューとしてサンドイッチが挙げられていましたが、価格はどれほど違うのでしょうか。

吉田さん:「お店にもよりますが、サンドイッチとタルト、ジュースがセットになったメニューがあって、それがだいたい8〜10ユーロですね」

サンドイッチのほうが安くお腹いっぱいにできる印象ですね。先ほど話題になったヴィーガンの方や、健康意識の高い人は、高くてもあえておにぎりを選んでいるようです。

パリおにぎりから目が離せない!

パリおにぎりは、日本のおにぎりと同じ点もありつつ、パリの人たちに親しまれるように進化した、「パリならでは」な要素がたくさんあることがわかりました。

今年開催されるオリンピックをきっかけに、パリおにぎりが日本に逆輸入されてきたら、おにぎりの楽しみ方がいっそう広がりそう!スポーツ競技はもちろんのこと、パリおにぎりのブーム到来も楽しみですね。

取材協力:吉田恵理子さん

ワイン&フードライター、コピーライター。パリ在住。フランス国立ランス大学高等美食学研究院卒、WSETアドヴァンスト、ロンドンSSA認定酒ソムリエ。
主な執筆媒体は「ワイナート」(美術出版社)、パリの新聞「Ovni」。著書『ワインを飲めばすべてうまくいく』(ICE新書)など。

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