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コラム

今夜は家族で寿司パーティー!子どもでも簡単にマスターできる南極シェフ直伝「寿司の握り方」

【南極シェフはお母さんを休ませたい vo.4】コロナ禍の外出自粛による食生活への影響は大きく、3食の食事作りにストレスや悩みを感じる方も多いはず。コロナ禍の外出自粛生活と共通項の多い、南極観測基地という閉鎖空間で調理人として活躍した篠原洋一さんに、毎日の料理を楽しむアイディアやコツを伺います。

こんにちは! 南極観測隊に調理人として同行した経験をもつシェフの篠原洋一です。

日本が南極の気象や地質などの観測のために派遣する南極観測隊。僕は第33次、第50次の2回、南極観測隊に調理人として同行し、隊員たちの食事作りを担当しました。

観測基地という閉ざされた空間を、30人の同じメンバーで過ごす南極での生活は、いわば“究極の巣ごもり生活”。南極での生活は、実はコロナ禍によって外出がしにくい今の日々とも共通項が多いんです。

僕は南極での過酷な生活で、年齢や性別の違う隊員たちが一緒に食卓を囲んだり、共に料理を作ることで絆を深めていく体験をしました。今回はそんな体験をもとに、家族みんなで盛り上がれるちょっとした「イベント料理」のアイディアをご紹介したいと思います。

南極の極夜を乗り切る3日間のフェスティバル

南極で1年4カ月を過ごす南極観測隊の生活で、最も過酷な時期が夏至。夏至前後の5月末から7月の約1カ月半の間は「ミッドウィンター(極夜)」と言って、一日中太陽が昇らない期間なんです。

うっすらと明るくなる時間帯はあるものの、1日のほとんどを暗い中で過ごし、1カ月半の間がずっと外に出て行う調査などの仕事もできないので精神的に滅入ってしまいます。

南極には各国の基地があるのですが、そんな過酷な極夜の時期は、どの基地でも滅入る気持ちを晴らそうと「ミッドウィンターフェスティバル(極夜祭)」という3日間のイベントを開催していました。

近い基地でも1000km以上離れているので、実際に会うことは難しいけれど、ファックスでグリーティングカードを送り合ったり、インターネットをつないで手を振っている映像を交換するなどして、3日間のイベントを共に楽しみます。そうして、過酷なミッドウインターを共に乗り切ろうと励まし合ったものです。今のオンライン飲み会などと近いですね(笑)。

ミッドウィンターフェスティバルの準備は1カ月ほど前から始まります。隊員たちで何をするか企画を考え、仕事の合間にコツコツ準備をしていました。第50次隊で僕らが企画したのは、屋台が立ち並ぶ「日本のお祭り」。

各部門の隊員たちがチームに分かれ、チームごとにメニューを考えて基地の廊下に屋台を出店。寿司、たこ焼き、焼き鳥、煮込み、お好み焼き……隊員たちは作るメニューを考えて、調理人の僕は各チームに料理の作り方をレクチャー、当日まで隊員たちと料理の特訓をしました。

料理だけじゃなく、屋台の骨組みから暖簾、お品書きまで手作りしたので、もしかしたら観測の仕事よりも準備に熱が入っていたかもしれません(笑)。

A31b0449e81c601ef421668f2154b7cd 実際に出店した、たい焼き屋台と唐揚げ屋台

準備の甲斐あって、当日は屋台が並ぶ懐かしい光景にみんな大盛り上がり!

隊員たちは自分の屋台で料理を提供しながら、お客さんとしてほかの屋台を食べ歩き、お祭り気分を存分に楽しみました。1カ月の準備期間で隊員同士の結束は強まり、達成感のある体験は過酷なミッドウインター中の良い気分転換になりました。

7b58d6819ff0f6126cb5934bb564c66c 料理の屋台だけでなく、お面を並べる屋台も。お面はもちろん隊員たちの手作り

Bdda938b5830e43f371b342cbb23d4ec 寿司屋台も開店。お品書きやカウンターもあり、本格的

83712e7f8c3e0fa515e6070f4ee1071e 屋台で寿司を握る篠原さん

ミッドウィンター同様、気軽に外出できず自炊が続くコロナ禍の自粛生活。長引くにつれて、ストレスが溜まりますよね。そんな時は家族みんなでこんなふうにイベントとして楽しめる料理に挑戦してみるのはいかがでしょうか?

今回は隊員たちにもレクチャーした、寿司の握り方をご紹介します。前回の記事でも紹介したように、小学生も15分ほどで握り方をマスターできるくらいシンプルな工程なんですよ!

寿司の握り方

材料

酢飯(胡麻や大葉を混ぜるとよりおいしい)……好きなだけ
ネタとなる刺身……好きなだけ

握り方

1. 左手でネタを持つ。

2. 右手の4本指(人差し指から小指)でシャリのご飯を持つ。

3. 取ったシャリを右手の4本指(人差し指から小指)で 2、3回握る。

4. 右手の人差し指でわさびを取り、左手で持っていたネタの裏にわさびをつける。

5. ネタの上にシャリにおく。

6. 左手の親指でシャリの頭を押さえ、右手の人差し指でシャリの上を軽く押さえる。

7. ネタが上になるように、上下をひっくり返す。

8. ネタが上になったら、再度左手の親指でシャリの頭を押さえ、右手の人差し指で上から軽く押さえる。

9. 180度回転させて、再度左手の親指でシャリの頭を押さえ、右手の人差し指で上から軽く押さえる。

10. 左手の親指でシャリの前部分を押しながら、右手の親指でシャリの後ろ部分を抑え、右手の人差し指でネタを上から押さえ、形を整える。180度回転させてもう一度同様にネタとシャリを抑え、形を整える。

11. 右手の親指と中指でシャリの両サイドを挟み、形を整えて完成。


上手に握るコツはシャリの大きさ。ティッシュ2枚を丸めた大きさがシャリの適量なので、子どもにはまずはティッシュで練習させてみるといいですよ。

完成した形がいびつでも気にすることはありません。家族みんなで寿司を握る体験は、記憶に残る素敵な思い出になると思いますよ!

「おうちビュッフェ」でパーティー気分を味わおう

極地ゆえ、環境や人から受ける刺激や娯楽が少ない南極生活。極限状態の中で隊員たちの精神を安定させるために、シェフである僕は日々の食事を通じて、隊員たちが楽しめる機会を積極的に作るよう心がけていました。

完成度の高い料理を提供するのも良いけれど、隊員たちにも調理工程やアレンジする楽しみを味わってもらえたら食事の楽しみが増すのではないかと考え、導入したのがビュッフェスタイルの食事でした。

南極観測隊では、うどん、お茶漬け、ハンバーガーなど、いろいろなメニューをビュッフェスタイルで提供しました。

特に人気だったのが、焼肉ビュッフェ。調理する食材は出発前に冷凍して持っていきますが、唯一持っていけなかったのが生野菜。持っていけないなら自分たちで作ろうとレタス、サンチュ、ルッコラ、プチトマトなどの野菜を基地内で栽培していました。

2af7258b58260a2eff654a487cfc77ec 基地内のグリーンルームで水耕栽培されている野菜

栽培を管理する農協係が「出荷できる」と判断したら、その日の夜は焼肉ビュッフェパーティー開催!

食べたい肉を卓上で焼いて、自分たちが育てた野菜で巻いて食べる焼肉は大好評でした。もし自宅で家庭菜園をされる機会があれば、お子さんが栽培した野菜を家族みんなで食べると、きっと盛り上がると思いますよ。

C87b4df2aeab792fab98985f45b428a3 南極観測隊で行われたうどんビュッフェの様子。具だくさんでおいしそう

ビュッフェスタイルの食事のメリットは、食卓で調理や盛り付けができること。調理する僕は焼いたり、盛り付ける手間が省け、隊員たちは自分の好みの具材を選びアレンジする楽しみがあるので、両者にとって満足できる食事となりました。

314304493674126379c72bb6b3ecbf9e どれにするか迷う楽しみがあるハンバーガービュッフェ

外食できず、自炊の機会が増える自粛生活では、毎回の食事作りが本当に大変ですよね。ぜひ家庭でもビュッフェスタイルを取り入れて、調理する人も、食べる人も気分転換になる食事が実現できるといいなと思います。

おうちビュッフェを手軽に楽しむポイント

南極観測隊で好評だったビュッフェメニューは、ちらし寿司やバラ寿司、お茶漬け、ラーメン、うどんそば、サンドイッチ・カナッペ、パスタ、カレー、焼肉などでした。

例えば週末など、定期的にこうしたビュッフェメニューを取り入れるようにすると、毎日の献立を考えるのが少し楽になるのではないでしょうか。おうちでビュッフェを楽しむための3つのポイントをご紹介しましょう。

ポイント1:我が家の定番ビュッフェメニューをリスト化

下の写真は、8つのビュッフェメニューとそれぞれ準備しておく食材をまとめたリストです。下の方には、合わせて用意しておくとさらに味の変化を楽しめて嬉しいつけだれや、一緒に食べると良さそうな汁物などのサイドメニューをメモしています。こんなふうに我が家の定番としてリスト化しておくと、毎回イチから準備するものを考える手間が省けて、買い物もスムーズになりますよね。


ポイント2:市販品を活用してバリエーション豊かな選択肢を!

ビュッフェの最大の楽しみは、自分で選んで組み合わせる自由度があること。全部の材料やトッピング、サイドメニューなどは必ずしも自分で作る必要はなく、お惣菜や市販のソースやスープなどもどんどん活用して、とにかくバリエーション豊かな選択肢を用意することが、食卓を盛り上げるコツですよ。

ポイント3:翌日は残った食材で簡単アレンジごはん

食べきれずに残った食材は、翌日の食事に活用しましょう! 刺身ならヅケにして、お茶漬けの具材はおにぎりに、ラーメンの具材はチャーハンや野菜炒め、サンドイッチの具材はサラダに……など。ビュッフェは、翌日の献立や下準備の手間まで省いてくれるお助けメニューなのです。


南極観測隊でビュッフェをすると、隊員たちはいろいろな食材が並ぶ光景に盛り上がって、我先にとお皿に手を伸ばしたものです(笑)。

こちらはいろんな組み合わせで、違う味を楽しんでほしいので、「最初から大盛りにするなよー!」なんて声を掛けてみんなで笑い合ったのが良い思い出です。ビュッフェだと会話も増えて、みんな気持ちいいくらいたくさん食べてくれたのでうれしかったですね。

自粛生活が長引くほど、自炊へのストレスは溜まりますよね。毎食の献立を考え、料理を作る人の苦労は計り知れません。

お母さん1人がご飯の準備をしているなんて日ばかりでなく、みんなで卓上で調理するスタイルをうまく取り入れて、家族全員で楽しい食事タイムを過ごしてほしいと思います。ぜひ、時間のある週末などに試してみてくださいね。

(TEXT:小菅祥江)

篠原洋一さん

子どもの頃から食べることと、旅行が好きで板前に。その後、北海道大学の先生から聞いたオーロラの話に心打たれる。その一心で板前を続けて10年、29歳で南極観測隊に調理人として同行し、南極行きを実現。帰国後、豪華客船「飛鳥」に和食の責任者として14年間乗船し、世界9周、約70カ国、200都市を巡る。50歳を前にしてオーロラが見たくて再び南極へ。現在は、横浜関内で旅行・船好きが集まるレストラン&ダイニングバー『Mirai(みらい)』を開店し、経営している。

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