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コラム

【見知らぬ土地で子なし、友達なし】孤独だった元・歯科助手がフォロワー8万人越えの人気レシピ作家になるまで

【クックパッドアンバサダーの味な人生vol.4】「⼼豊かになる幸せレシピ」をモットーに、おいしく健康的で華やかなレシピを提案しているマユミリオンさん。Instagramのフォロワーは8.7万人超え! クックパッド内の「マユミリオンのキッチン」では、200を超えるレシピを投稿しています。そんなマユミリオンさんに、料理の世界で活躍するようになったきっかけや料理に対しての想いについて聞きました。

人を助ける仕事に就きたい! という気持ちで辿り着いた今の仕事

――現在、レシピ開発や料理コラムの執筆など、幅広くご活躍しているマユミリオンさんですが、お料理の仕事をする前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

学生の頃からネイルアートのお店を運営していました。新卒でアパレル会社にデザイナーとして就職し、入社3年目のときに新規事業となるネット販売の立ち上げを担当しました。そこで10年働き、その後は韓国の洋服をネットで販売する仕事に就いたのですが、長くアパレルに携わるうちに、エコじゃないことを仕事にしているなと思い、アパレルの仕事を辞めて、歯科助手として働きはじめました。

――すごい経歴ですね。アパレルのお仕事から歯科助手への転職はどのような理由からですか?

父が医師なんです。その影響なのか、人の役に立つ仕事、人を助ける仕事に就きたいなとずっと思っていたので、アパレルの仕事を辞めるときに歯科助手という仕事を選びました。アパレルの仕事をしているときは、心の底から誰かのためになっているという気持ちになったことがなかったんです。

歯科助手をしていた頃(ご本人提供)

――人を助ける仕事。レシピ開発なども人の役に立つお仕事ですよね。その後、お料理のお仕事をはじめられることになったのは、どのようなことがきっかけですか?

結婚を機に、縁もゆかりもない土地に引っ越して生活をすることになりました。そのタイミングで歯科助手の仕事も辞めました。友達もいないしやることもないという日々を送っていたら、姉や妹から「料理が得意なんだから、クックパッドにレシピを載せてみたら?」とアドバイスをもらったんです。クックパッドは知っていたけど、自分のレシピを載せられるということは知らなかったので、すぐに挑戦しました。初投稿した日のうちに、「作ってみました~!」という「つくれぽ」が届いて、「こんなのが届くんだ!」ってうれしくなりました。あの気持ちは今でも忘れられないです。

――クックパッドへのレシピ投稿が、今のご活躍のきっかけになっているんですね。

そうなんです。載せたレシピに「つくれぽ」が届いたときに、「私がやるべきことはこれだ!」と思いました。見知らぬ土地での生活に孤独を感じていたので、作った料理を投稿することで、いろんな人に見てもらえて、さらに自分のレシピを作ってくれた人たちの生の声が聞けることがすごく励みになりました。クックパッドで初投稿をした4ヵ月後からは、Instagramもスタートしました。それをきっかけに、今やお料理が仕事になっているのでびっくりしています。

初めて「つくれぽ」がついた思い出のレシピ

家族が集まるときの中心は、私が作る料理

――お姉さんと妹さんからレシピ投稿を勧められたということですが、ご家族にお料理をふるまうことが多かったのですか?

引っ越しの多い家庭で育ったので、新しい環境でお友達ができるまでは、家で母の料理を手伝いながら時間を過ごしていた記憶があります。幼稚園の頃から餃子を包んでいたので、料理好きは子どもの頃からですね。家族の中では、料理上手という立ち位置というよりは、作ると家族が食べてくれるという感じでよく家族に料理を作りました。家族をつなぐ場では、私の料理が主になることが多かったです。

――“家族をつなぐ場”って素敵ですね。ご家族に食事を作るというのは、どういう時が多いですか?

社会人になり、姉妹たちと生活の場がバラバラになってからは、みんなの予定が合う休日には実家に集まってホームパーティーをすることが恒例になっていました。そのときは、私がデザートも入れて12品くらいの料理を、お昼からお酒を飲みながら作り、夜まで家族で喋りながら食べ続けるということをしていて、それは今でも続いています。

家族とのパーティーでは様々な料理が並ぶ(ご本人提供)

――小さい頃からお手伝いをしてきているそうですが、お料理の腕をあげるためにしてきたことはありますか?

家族で集まるときや、家に友達を呼んだりするときに何を作るかを考えて、練習を繰り返しているうちに上手になった気がします。料理を作りはじめた頃は、図書館に行ってレシピを写して、材料を買い物して帰るというルーティンがありました。最初は、レシピ通りに作ることからはじめました。今も、自分以外のレシピを作るときは、そのレシピ通りに作るというのが私のポリシーです。レシピにアレンジを加えるのは、2回目以降にやります。

ガスコンロがなくてもおいしいものは作れる

――ご自身もレシピ制作をされていますが、その際に意識していることはありますか?

私は、自分が作って発信したレシピを「これは、私のレシピ!」という考えを持っていないんです。料理を覚えたての頃はいろんなレシピを見て作っていて、それにだんだん私のアレンジが加わっていったものがたくさんあります。どのレシピも、自分一人の発想だけでできているものはありません。私がこれまで食べてきたものや、経験してきたことが詰まったレシピをベースにして、さらにそのレシピを見た方が、ご自分の味にしていくという広がり方がすごくうれしいなと思っています。

――レシピ本で覚えた料理を自分なりに変化させたり、工夫してきたりした具体的なエピソードがあれば教えてください。

夫と付き合っていた頃、彼が住んでいた家には電子レンジとオーブントースターと電気鍋しか調理器具がなかったんです。ガスコンロがなかったので、その3つを駆使して料理を作っていました。

――すごいですね! その3つを駆使して、どんなお料理を作られていたんですか?

電子レンジだけでもけっこういろいろ作れるんです。例えば、茄子の皮をむいてラップに包んでレンジでチンをして、ひき肉とケチャップを入れて再びレンジで加熱するとミートソースが完成します。お肉を柔らかめにレンジで火を通し、そのお肉の上にパン粉、オリーブオイル、粉チーズを乗せてトースターで焼くとカツレツ風になります。夫は、「こんなの作れるの!?」と驚きながら食べてくれました。ちょっとしてから、やっぱりコンロは買ってもらったんですけど(笑)。コンロがなくても作れるレシピもたくさんあるので、ゆくゆく出していけたらと思います。

――日常の中で起こるさまざまな経験から、マユミリオンさんのレシピは生まれているんですね。

そうですね。レシピを思いついたら、4回ほど試作を繰り返します。姉に子どもができて、ホームパーティーに出すメニューも以前とは変化してきました。甥っ子が二人いるのですが、一人はお肉大好きで、一人は野菜好き。好きだと思って作っても食べてくれないときがあったりして、子どもに出す料理は、大人のようにはいかないなと感じます(笑)。私は、晩婚だったこともあり子どもに恵まれなかったのですが、甥っ子たちやSNSで掲載しているレシピを作ってくださった方たちから、「おいしく食べてくれました」という感想をいただくと、間接的にレシピの向こう側にいるご家族の喜びが伝わってきてうれしくなります。

レシピの広がりが作る”幸せの連鎖”

――マユミリオンさんの味で育っている子どもたちがたくさんいるということですもんね。

私が投稿しているレシピが、見てくださっている方のお子さまのお気に入りレシピになり、リピートしていただく中で、その子のおふくろの味になっていく。誰かのレシピとかではなくて、みんなのレシピとして、幸せの連鎖を作っていく一員としていられることには、感謝の気持ちでいっぱいです。

――レシピ開発や、それを発信していくという活動は、マユミリオンさんにとってどのようなものですか?

新しいレシピを生み出す原動力になっています。もう、私の人生の一部です! レシピ開発やレシピ提案は、一生続けていきたいと思っています。仕事って、利益が出るものだけが仕事ではないと思っています。少しでも多くの方に、料理の楽しさや、料理をすることの幸せを感じていただけるように、日々試作を重ねレシピを考えています。料理が好きだなぁと思う瞬間って、食べてくれた人の「おいしい!」という一言だと思うんです。私は、そのきっかけを作れる人として頑張っています。

マユミリオンさん(ご本人提供)

――実際に、発信しているレシピに届く感想や反応はどのようなものが多いですか?

“華やかなレシピ”をテーマにしているので、記念日やイベント時に作ってみましたという声をいただくことが多いです。「すごくおいしくできました!」とか、「成功しました!」といった声がたくさんDMに届きます。また、レシピに関する質問もたくさんいただくのですが、それもすごくうれしいです。可能な限りお答えしているのですが、「作ってみたい」という気持ちになってもらえることがうれしいです。

今が旬の国産レモンで美しすぎるケーキを

――マユミリオンさんは、今後はどのような活動を行っていく予定でしょうか。

食に恵まれない方々に、料理を作り食べて頂くような機会を作っていただければと思います。施設に料理をしに行ったり、子ども食堂であったり。やはり、食は生きていく上でとても大事なことなので、その大切さをより感じていただけるようなことに、ボランティアとして関わっていきたいという気持ちがあります。高齢化社会になっていく中でも、いかにおいしく健康的に食事を楽しみながら歳を重ねていくかということにも関わって行けたら良いなと思っています。

(TEXT:山田かほり)

TOPおよびご本人提供以外のイメージ画像提供:Adobe Stock

マユミリオンさんプロフィール

インスタフォロワー8.7万人!簡単なのに見映えのいい料理が大人気。
「⼼豊かになる幸せレシピ」をモットーに、おいしく健康的で華やかなレシピを提案。家飲みレシピやフランス在住経験を活かした異国料理が得意。企業とのレシピ開発や写真提供、コラム執筆など食に関する仕事で幅広く活躍しています。

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