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コラム

慢性的な疲労だけじゃない「夜勤仕事」をする人の体内で起きている変化

病院に行くほどではないけれど、なんだか感じる体の不調。薬剤師であり調理師、薬膳アドバイザーの資格も持つ道川佳苗さんと、中医学の視点で体を見つめ直し、健やかな暮らしをつくるための「食」を考えましょう。

このような質問をいただきました。26歳、男性からの質問です。 「夜勤仕事で不眠症になりました。1日の食事は夜中1時〜2時に1回と、朝7時ごろに1回食べています。なんだか疲れやすいし、気力が湧きにくい状態が続いています。」

夜中に食事をとることや夜働くことの体への影響とは?

夜勤の仕事をしている方々は、しばしば不眠症や疲労感、気力不足といった問題に直面することがあります。中医学の視点では夜間は「血を貯める時間帯」とされているため、質の良い睡眠が大切です。仕事の都合でどうしても生活リズムを変えることが難しい場合、食事や生活習慣の改善を通じて、「血」を補うことを意識したいですね。

これらの状況に対処するために、今回は不眠症や疲労感を和らげるのに役立つ食材やレシピをご紹介します。

不眠症、疲れやすさはなぜ起こる?

中医学的には、以下の原因が考えられます。

(1)夜に睡眠を取れないことによる「肝」の不調

中医学によると、私たちの体は一日を通じて五臓(肝、心、脾、肺、腎)の活動が活発になる時間帯があります。夜の睡眠と密接に関連しているのは「肝」で、夜中の1時から3時の間にしっかりと熟睡することで「肝」の主要な働きである「血を貯める」という機能が最も効果的に働くとされています。この時間帯に充分な睡眠を取らないと、中医学的には体内の血の不足が起き、それに伴い「肝」の働きが低下する可能性があると考えられています。結果として、気の流れが滞り、体の各部位に十分な栄養や酸素を供給できなくなり、不眠や疲労感といった症状がより顕著に現れる可能性が高まります。

(2)睡眠不足、不規則な時間帯の食事による胃腸の機能の低下

不眠症による睡眠不足や不規則な食事のタイミングは、自律神経のバランスを乱しやすくなります。この影響で胃腸の機能が低下し、食べ物の消化と栄養吸収も困難になります。その結果、食欲が減退し、ますます食事が摂りにくくなり、疲れやすくなる悪循環に陥ります。

中医学的には、「疲れやすく、やる気や活力が出ない、無気力な状態」は、胃と脾(消化器官)の働きが低下し、食べたものから栄養やエネルギーを適切に取り入れられなくなる結果として現れると考えられています。そのため、胃腸の調子を整えるための食材と生活習慣を意識的に取り入れることが、疲れやすさを改善するのに役立つでしょう。

相談者さんが1日2食という食事リズムを持っている場合、おかゆなどの消化の良い食べ物から摂取量を増やすことを検討することも、疲れやすさの改善のための良いアプローチとなるでしょう。

不眠や疲労感の緩和におすすめの食材は?

血が不足することは不眠症や疲労感の原因となりえます。そのため、血を補充する食材を摂取することがおすすめです。さらに、夜勤の生活により「肝」に影響を及ぼしている可能性があるため、肝の働きを改善し、気の流れを促進する食材や、酸味のある食べ物も取り入れることが効果的です。同時に、胃腸の調子を整えるために、消化をサポートする食材も摂ることをお勧めします。

▼血を補う食材

マグロ、しじみ、エビ、カニ、イカ、牛肉などの赤身肉など、にんじん、ほうれん草、卵など

▼気の巡りを良くする食材

にら、春菊、ちんげん菜、キャベツ、ブロッコリー、薬味類、柑橘系の果物

▼酸味のある食材

トマト、レモン、梅干し、お酢など

▼胃腸に優しく消化を促す食材

大豆、かぼちゃ、さつまいも、大根、かぶ、キャベツ、生姜など

クックパッドのおすすめレシピはこれ!

さつまいも・ねぎ・油揚げの味噌汁

胃腸の調子を整えるには、体を温める食事が助けになります。具体的には、汁物などが胃腸の働きを活性化させるのに役立ちます。さつまいも、油揚げ、味噌、気の流れを促進するねぎなど、胃腸にやさしい食材を組み合わせたお味噌汁を試してみてください。お味噌汁は食欲がない時でも摂りやすく、事前にたくさん作っておけば、料理する気力がないときにも便利です。

豚肉・にら・卵の中華風炒め

血を補充し、気の流れを促進するために、豚肉、卵、そして気の巡りをサポートするにらを組み合わせたボリュームたっぷりの炒め物です。中華風のオイスターソースで味付けされ、ご飯との相性も抜群です。この一品で満足感が得られるので、忙しい日や疲れたときに特におすすめです。

にんじんのはちみつレモンラペ

血を増やすためのにんじんと、肝の働きを助ける酸味のあるレモンを組み合わせた「にんじんラペ」です。レモンのさわやかな風味は箸休めに最適で、事前にたくさん作っておけば、手軽に食べられるので便利です。

夜勤で消耗した血を食材で補って睡眠や疲労感の改善を

夜勤のない日には、できるだけ日をまたがずに睡眠を取ることが重要で、これによって血の消耗を最小限に抑えることができます。しかし、生活リズムを戻すのが難しい場合、食材や生活習慣を工夫して、血を補充しましょう。元気を取り戻すことを願っています。ぜひ、今回紹介した食材やレシピを参考にして、できる範囲から取り入れてみてくださいね。

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なんとなく感じる体の不調、もやもや。道川さんに相談してみませんか? こちらのフォームからあなたの声をお寄せください。

道川佳苗

薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。大学卒業後、薬局にて従事している時に、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校に入学し卒業する。お料理好きの漢方マニア。

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