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コラム

あの栄養がカギを握る!「子どもの学力を伸ばす食事」でとにかく覚えておくべきこと

【"成功する子"の食事術vol.17】子どもの成長に食事が大切ってことは分かっているけれど、どんなものを作ればいいの?毎日のことだから、悩んでいる親御さんも多いはず。シリーズ累計14万部突破「成功する子は食べ物が9割」の著者・細川モモさんに、20年後に後悔しない子どもの食事術を教えてもらいましょう。

年末の足音が聞こえてくる今日この頃。期末試験やセンター試験など受験本番が近づき緊張感が高まる季節です。感染症対策以外に、私たち親が子どもの学力のためにできることはあるのでしょうか?答えは「あります」。

脳は約40%がたんぱく質、約60%が脂質でできており、メンタルヘルスも含めて食事で摂った脂質の影響を受けています。今回は、「子どもの学力を伸ばす食事」と「伸びを妨げない食事」について知りましょう。

「朝ごはんは学力によい」は本当なの?

学力と食事というと「朝ごはん」が有名です。これは本当なのでしょうか?「脳トレ」で有名な東北大学の川島隆太教授と文部科学省による「朝ごはんの影響がその後の人生にどう影響するか」「子どもの頃の朝食習慣が大人になってどういう影響を与えているか」に関する調査(※1)では、朝ごはんを食べる習慣のある人たちの方が、「第一希望の大学に入学できた」「希望の会社に就職できた」など、統計的に有意な差があることがわかっています。

朝ごはんが学力によい理由はいくつかありますが、とくに脳の材料になるたんぱく質と良質な脂質など脳疲労対策になる栄養素は1日3食で満たすことが難しいこともあり、欠食するとまず充足できない=脳の材料不足を招くというデメリットがあります。

脳を栄養で満たす秘訣が朝ごはんにある

では、どんな朝ごはんがよいのでしょうか?実は、朝ごはんを食べている人は多いのですが、4〜5割の人がおかずを食べていないという調査報告があります。これはとても勿体無いことです。なぜなら脳の材料になるたんぱく質や脂質は、おかずが主な供給源となるためです。

さらに、集中力や頭の回転、脳疲労緩和に欠かせないセロトニンやGABA(ギャバ)といった脳内神経伝達物質も、体内ではつくりだせない栄養素によってつくられており、そのうちの1つである「鉄」は成長期にもっとも不足させやすく、1食でも欠食すると満たすことが難しい栄養素になります。長時間の勉強のストレス対策や集中力の維持には、毎日3食の食事+栄養のあるおやつが欠かせません。

前述した東北大学の研究においても、朝ごはんにおかずの数が多いほど脳テストの結果がよい=すべての脳の機能が高いという結果でした。「朝からおかずか‥」と気が重たくなるかもしれませんが、サバ缶を開けたり前夜に多めに作っておいたものを出すだけでOK!!大切なのは手の凝った料理をつくることではなく、脳を栄養で満たしてあげることです。

簡単だけど栄養リッチな朝ごはん

朝ごはんにそんなに時間をかけられない‥そんな方におすすめなのは、のっけごはんや混ぜごはんです。おかずを一品つくるのではなく、そのままごはんにONしちゃいましょう。脳は脂質でできている、とお話ししましたが、よくない脂質を多く摂ると逆効果。記憶に携わる海馬に高濃度に存在する、DHA•EPAを含むお魚をとくに意識して食べましょう。といっても鮭フレークやしらす、サバ缶などでOKですよ!!

大豆や卵、チーズにはセロトニンの材料が含まれますので、豆腐で最も栄養価の高い高野豆腐をお味噌汁にポンしたり、常温で調理不要なうずらの卵の水煮(しかも鶏卵より栄養価が高い)を常備して出すのもオススメ。とくに乾物は栄養リッチなのに賞味期限も長く安価なため、物価上昇時代の成長期の強い味方です。

・鮭フレークや卵、のりをON→たんぱく質、DHA/EPA、ビタミンD、鉄分
・卵にかつお節、しらすをON→たんぱく質、DHA&/EPA、ビタミンD
・しらす、かつお節、桜えびでふりかけ→たんぱく質、DHA/EPA、カルシウム
・切干大根、ひじき混ぜごはん→鉄分、カルシウム

こんな感じで栄養を摂取できます。ぜひ覚えておいてほしいのは「脳によい栄養素はたんぱく質(肉•魚•大豆•卵)が供給源」ということです。だからこそおかずを食べない朝ごはんは勿体無い!!のです。かといってゆで卵だけでよいかと聞かれると違います。セロトニンは糖質を摂ることで脳に効果的に取り込まれるため、脳のエネルギー源になるという意味でも精製度の低い炭水化物(ライ麦パンや発芽米など)は脳のよきパートナーです。

学力の伸びを妨げない食事

最後に、子どもの勉強の努力を応援する意味でも、「脳が歓迎しない脂質」は多く摂りすぎないようにしましょう。学習や記憶に関係する海馬が食事の質に影響を受けるというオーストラリア・ディーキン大学の研究報告(※2)があり、魚や野菜を多く食べる「健康的な食事グループ」と、加工肉(ソーセージ、ハム、ベーコン)とステーキ、ポテトチップスなどをよく食べる「不健康な食事グループ」の海馬の体積を調べた結果、平均的な食事の人と比べて健康的な食事グループの海馬は45.7平方ミリメートル大きめでした。一方、不健康な食事グループの海馬は52.6平方ミリメートル小さくなっていました。

これらの不健康な食事は語彙力や言葉の流暢さを低下させるという報告もあり、面接にもよくない影響があるかもしれません。学校と塾の合間にジャンクフードを食べる学生をよく見かけますが、勉強量と成果が伴わない場合、食事を見直してみるとよいかもしれません。

※1 川島隆太「朝ごはんに関する意識と実態調査」東北大学(2010)
※2 Jacka FN et al. Western diet is associated with a smaller hippocampus: a longitudinal investigation. BMC Med. 2015 Sep 8;13:215.

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細川モモ

ラブテリ トーキョー&ニューヨーク代表理事
2009年春に、医師や管理栄養士を中心に13種の医療専門家及び博士/研究者が所属する「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を発足。専門家の知識を分かりやすく提供することで、日本の家庭教育と子どもたちの健康をサポートしようと幅広い活動を展開。さらに、予防医療のなかでも、”母子健康”に注力。課題は深刻だが国のサポートが手薄なため、妊娠前/妊娠中/産後の女性の健康支援を通じて、次世代の健康の底上げに取り組んでいる。生まれてくる赤ちゃんの栄養状態・成長は妊娠前のママの栄養状態に影響されるが、働く女性の栄養状態は近年悪化している。日本の未来を守るためにも、母子栄養を潤す事は必要不可欠と考え、栄養状態の悪い女性を減らすことで不妊症や低出生体重児を予防し、1人でも多く健やかな赤ちゃんが生まれることを願い、走り続けている。
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