カリスマ保育士・てぃ先生をご存じですか? 保育士として日々子どもたちと接する中で気づいた、子育ての楽しさや子どもとの向き合い方をSNSで発信しています。てぃ先生のTwitterのフォロワー数は52万人・YouTubeのチャンネル登録者数は51万人超え! 子育て中のお父さん、お母さんから絶大な支持を集めるてぃ先生に、子どものごはんに関する悩みについてのお話を聞きました。
――多くの子育て中のお父さん、お母さんが、てぃ先生が発信する情報に救われていると思います。最初はTwitterでの情報発信からスタートされたんですよね
最初は、子育てのいいところを伝えたいという気持ちから、保育中の子どもたちのかわいくて楽しい日々のエピソードをつぶやいていたんです。ふとしたきっかけから、保育士をしている中で感じたことや子どもとの接し方をTwitterで投稿するようになったら、世間のお父さん、お母さんたちから、「そうなの?」という反応が多く届くようになりました。
――その反応がきっかけで、YouTubeチャンネルをスタートしたのですか?
Twitterでは、140文字という文字数制限があるので、もっとしっかり伝えていきたいと思ってYouTubeチャンネルもスタートしました。 子育てに教科書はないし、学校で育児を習うわけでもないから、みなさん、自分自身が育ってきた環境を参考にしながら子育てをされているんですよね。これで良いのかな? と不安を感じながら、きっと知らず知らずのうちに複雑に考えすぎてしまっているんだろうなと感じたので、僕が持っている情報や知識をたくさんの方に共有できればと思ったんです。
――てぃ先生が、十数年間保育の現場を見てきた中で感じる変化について教えてください。
保育園の中で、“食育”が重要視されるようになったと思います。以前は、三角食べ※が推奨されているくらいでしたが、最近は、2歳児クラスでもお魚やお肉の栄養について説明するんです。そのため、子どもたちが、食べ物の栄養に対しての知識に触れる機会は増えていると思います。
※三角食べ…ごはん・おかず・汁物を順番に食べること
――本の中で、自己肯定感が高い子のほうが大きく成長できるとおっしゃっています。子どもの自己肯定感を高めるために、親ができることを教えてください。
ご家庭の中だからこそできることで言うと、子どもの要望を一旦許容してあげることが重要だと思います。例えば、お父さん・お母さんに「抱っこして」と要求してきたら、ほんの少しでもいいからハグや抱っこをしてあげるんです。もちろん、忙しいときやタイミングが悪いこともあると思うのですが、できるだけ子どもが要求したことに対しては肯定的に対応してください。
「抱っこして」と言われて、「ちょっと待ってね」とか、「今、できないよ」と否定から入るのではなく、すぐにできなくても、一旦「いいよ」と言ってあげる。そのうえで、「でも、今はできないからあとでいい?」と言うのでは、子どもの受け止め方も変わってきます。親が自分の気持ちを理解してくれたと感じることが、自己肯定感を高めたり安心して気持ちを表現してもいいんだというところに繋がります。
――子育て中のお父さん、お母さんに響くお話ばかりです。てぃ先生が発信されてきた動画の中で特におすすめの動画を教えてください。
スモールステップの動画です。「スモールステップ」とは、何か目的を達成するうえで、大きな目標ではなく、細かく目標を設定し達成していこうよということです。例えば、保育園からの帰り道、「おうちまで頑張ろう」よりも、「あの郵便局までがんばってみよう」、「次はあの電柱まで」と、細かい目標設定をしてあげることで、達成したというモチベーションに繋がります。
食事の集中が切れてきたころに、「全部食べましょう」と言われると果てしなく感じるけど、「小皿に乗っているものから食べてみるのはどう?」と提案すると、子どもは食べやすいです。
スモールステップについての動画はこちら
――クックパッドには、子どもの食事に関して悩んでいるという声が多く届きます。特に、離乳食をスタートしてから1歳半頃までと、イヤイヤ期がはじまる2歳〜3歳。この時期の食事に関する特徴や解決策を教えてください。
この時期は、まだ上手にスプーンやフォークをあつかえない時期なので、どうしても食べたいという気持ちが先行して手でつかんだり、触ったときの感触に興味がいきがち。大人から見ると、食べ物で遊んでいるように見えるし、投げたりするので怒っちゃうんですという話はよく聞きます。
てぃ先生のアドバイス
結論からいうと、遊び食べを思いきりやらせてあげることです。「手でつかんで食べたい」という欲求が満たされないと、2歳、3歳になってもその欲求が続きます。人は、1回感じた欲求が満たされない限り頭の中に残り続けるんです。
この時期は、「今はそういう時期!」と割り切って、手づかみしてもらう。気になるようなら、手でつかんでも良いものを用意してもいいと思います。柔らかめの野菜スティックなどを用意して、「これはつかんで良いけど、これはよくないからね」とすることで、子どもの欲求が満たされやすいですよね。もちろん、子どもの欲求にすべて応えるのは難しいと思うので、部分的にでも応えられるように準備しておけば親子共にストレスが減ると思います。
この時期は、今まで食べていたもの、まだ食べたことがなかったものを受け付けなくなる時期です。子どもたちにも自我があるので好き嫌いが出てきます。そうなると、今まで素直に食べていたのが、いやだ、いやだ! となり、椅子に座らない、食べてくれないという声を多く聞きます。
てぃ先生のアドバイス
子どもの好き嫌いを認めることです。ピーマンが苦手な子に対して、「今日はピーマン食べられるかな」と出してもきっと食べられないでしょう。2歳の約半数が偏食といわれているので、この時期の好き嫌いは普通のことです。そして、好き嫌いを克服するには、子どもが苦手と思う食べ物に慣れていくしかありません。どんなことも、段階を踏むのは重要。いきなり口に入れるのはハードルが高いので、
ピーマンを観察する
↓
においを嗅いでみる
↓
絵を描いてみる
↓
お父さん、お母さんの調理のお手伝いをしてみる
↓
配膳してみる
↓
「じゃあ、食べてみよう!」
例えばこんなふうに段階を踏んでみると、子どもも食べやすいと思います。
重要なポイントは、慣れる前の「一口食べてみよう」は要注意ワードだということ。大人だって苦手なものや食べたくないものを、「一口だけ」と言われても絶対に嫌じゃないですか。それを子どもに言ってしまうのは、「自分が全部食べさせた」とか、「子どもが全部食べて嬉しい」という自己満足が入っていることがあります。例えば、完食して欲しいなら量を少なくして「食べたねぇ」と認めてみてください。それで量が足りなかったらおかわりをすれば良い。今の時代、昔と違っていろいろな食材があるので、にんじんやピーマンを食べないからって栄養失調になるわけじゃないですよね。だから、そこまでして「一口食べてみよう」をしなくていいと思います。
――最後に、てぃ先生から子育てを頑張るお父さん、お母さんにメッセージをお願いします。
子どもの人生は一度きりですが、お父さん、お母さんの人生も一度きりです。子どもの幸せはもちろん大事だけど、お父さん、お母さんの幸せも大事。それに、子どもを幸せにしたいと思うなら、お父さん、お母さんが幸せじゃないと、子どもは幸せになれないと思うんです。子どものために色々やるのは悪いことではないけれど、自分の幸せをおいてきぼりにすると、余裕がなくなって子どもに優しくできないなど本末転倒なことになってしまいます。
お父さん、お母さんの幸せは、“時間の余裕”から生まれます。人は、時間の余裕がないとイライラしちゃうんです。そういった幸せを作るために、クックパッドや、冷凍食品、お掃除ロボットなど便利なものを活用して自分の中に時間の余裕、気持ちの余裕を作ってみてください。うまく手を抜く方法を考えることが、子どもにとっての幸せにつながると思います。
(TEXT:上原かほり)
メイン画像提供:ピクスタ
「この本は、子育て中のお父さん、お母さんに気持ちの余裕を持ってもらうためのヒントがたくさん詰まっています。子育ての中で、時間や気持ちの余裕を生む方法や、『もっと、こうしたほうが上手くいく』ということが書いてあるので、ぜひ手に取ってみてください」(てぃ先生)