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コラム

パンが入ったおむすび!?台湾の「飯糰(ファントゥアン)」【世界の「米料理」レシピvol.5】

お米は日本の主食ですが、世界を見渡すとお米を食べている国は意外とたくさんあります。お米の食べ方や炊き方、保管方法、そしてお米の価値観など、世界のお米を知ると、その多様性や魅力を再発見することができます。そこでこの連載では、知っているようで知らない海外のお米料理をお米のコバナシとともにお米ライター柏木智帆がお届けします。

俵型の巨大なローカルフード

台湾にはパンが入ったおむすびがあります。奇をてらったメニューではなく、当たり前にローカルフードとして根付いているおむすびです。

台湾ではこのおむすびを「飯糰(ファントゥアン)」と言うそうです。早朝の台北市内をうろうろしていると、飯糰の看板を立てた露店を発見。大興奮で駆け寄りました。

注文すると、店主がおひつからほかほかのごはんを取り出しておむすびを作り始めました。まずは、白米ごはんか黒米入りごはんの二択から選択。ハーフ&ハーフもできるとのことでした。ラップの上にごはんを平たくのせていく様子は、まるで「おにぎらず」か「巻寿司」でも作り始めるかのようです。

ごはんの上に、大豆フレーク、スライスした煮卵、刻んだ高菜のようなものなど、次々に具をのせていきます。ちなみに、肉の具材もたくさんありましたが、私は肉が苦手。でも、台湾には「素食(ベジタリアン)」専門レストランがあるなどベジタリアン食が浸透しているため、「素食」オーダーをするとすんなりと肉なしで作ってくれました(大好きな卵は入れてもらいました)。

具材をぽんぽんと乗せていく様子を見ながら、「もしかして、これはおむすびではなく巻寿司なのかしら…」と思い始めました。日本のおむすびとはあまりにもかけ離れた具材の量です。

あっけにとられながら眺めていると、店主はさらに細長い揚げパンのような油條(ヨウテャオ)をぽんと乗せました。しかも、2本です。

そして、そのまま手際良く具材をぎゅっと包みあげていき、巨大な俵型のおむすびが完成しました。

重たく見えても軽やかな食感

受け取ったおむすびはほんのりと温かく、ずっしり。長さ20センチほどもあります。どうやって食べようか迷いながらも大口を開けてかぶりつくと、ごはんはまさかのもち米でした。これは胃にも重たい。そして、「さくっ」という食感。おむすびを食べてさくっとした食感を覚えたのは、初めての体験です。

あまりにも大きく、ごはんはもち米、中には揚げパンの油條。これは食べきれないのでは…と思いましたが、ごはんの量は思ったほど多くなく、油條はサクサクとして中はスカスカなので、見た目とは裏腹に意外と軽やかな食べ心地でした。

しかし、別の店で食べたところ、今度は重たくて食べ切るのに必死でした。この店の飯糰は、油條の他に切り干し大根などの具が入っていましたが、とにかく全体的に油っぽい。油條がさっくりと油切れよく揚げられているかどうか、具材が油っぽいかどうかによって食べ心地がずいぶんと変わります。

日本のおむすびは何よりもごはんが重要だと思っていますが、台湾の飯糰で重要なのは油條で、時間が経っても失われないサクサク感が味の決め手のように感じました。

自宅で手軽に飯糰風おむすび

そうは言っても日本で油條を入手するには、中華食材店などでないと難しいと思います。そんな時は、こちらのレシピのようにあぶった油揚げを使ったり、仙台名物の油麩を粗く砕いてみたりと、代用品でいろいろアレンジしてみてはいかがでしょうか。

以前に台湾の米どころである台東・池上でつくられたお米を食べ、そのおいしさに驚いたことがあります。でも、台湾では塩むすびはポピュラーではなく、日本式のおむすび屋でしか出会えません。お米そのものを味わう塩むすびは日本独自の食べ方なのだなあと改めて気づかされます。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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