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コラム

溶けないアイスにカラフルラムネ!自然の不思議をおいしく体験できる「サイエンススイーツ」

ケーキデザイナー、芸術教育士として活動し、子どもとママのためのアトリエ「My little days」を主宰される太田さんは、ご自身が母親となったことをきっかけに始めたキッズワークショップで多くの親子から好評を得ています。2020年4月に、開催するワークショップで人気となったレシピを集めた「不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ」が発売。今回はそんな太田さんに、自然の不思議を盛り込んだ「サイエンススイーツ」についてお話を伺いました。

ママたちが子育てを楽しめる環境を作りたくて

OL時代にパリの「エコール・ド・リッツ・エスコフィエ」でお菓子作りを勉強しました。 当時、いろいろなブランドがキッズラインを充実させはじめた時期で、かわいい子ども服のブティックやワークショップスペースが街中にあったんです。美術館に行けば、子どもたちが寝転がってモナ・リザの絵を描いていたりしていて、パリは子どもにとって最高の環境が整っていると感じました。

11年前に長男を生んだときは、今のようにママたちが楽しく子育てをするような場所もイベントもなかったんです。その頃はまだ、ハロウィンやイースターといったイベントも今ほど浸透していない頃。子育てをしていく中で、子どもとの生活をもっと楽しくするために、私ができることはなんだろうと考え、ふとパリでのことを思い出し、ワークショップを開催することにしました。

まず最初に開催したワークショップはハロウィンパーティーでした。仮装をして、ジャックオランタンを作ったり、モンブランを作ったりしながら、「ハロウィンってなんだろう?」という説明をしました。初めての開催なのに参加者は50組を超えたんです。子どもと一緒に楽しめるワークショップに需要があると感じ、そこからさまざまなワークショップを手探りで開催したのですが、エンターテインメント性を出すことと、自分が求めている方向性にズレを感じはじめました。

子どもの個性を芸術で引き出す

そんなときに、「子ども芸術」という学問があるということを知り、京都造形芸術大学院で芸術教育について学ぶことにしました。子どもと芸術というものを学んだことで、ようやく自分のやることの意義が見えてきたんです。

芸術教育は正解がない世界。その子らしさ、その人らしさであることが素晴らしく、それを引き立てていこうという考え方の中で、芸術に重きを置いて子どもたちの個性を伸ばしていきます。大学院を卒業後、「子ども芸術」と元々のスキルである「お菓子作り」を組み合わせて、今のスタイルのワークショップになりました。

自然の不思議を盛り込んだ「サイエンススイーツ」

物が固まったり、溶けたりするという1つ1つがすごいことなんだということ、フルーツの断面は自然が作った芸術なんだということを子どもたちに伝えてあげたいと思ったんです。私たちの暮らしの中の「面白いな」「不思議だな」と思うことをお菓子のレシピに取り込んでいったもの、それが「サイエンススイーツ」なんです。

日々の生活の中にある不思議なことや、面白いなと感じることを親子で話ながら、それをスイーツという形で完成させるという経験は、子どもたちにとって大きな刺激になることは間違いありません。その経験から感じたものを大切にしてほしいと思っています。いろんなことに挑戦し、どこに興味を持つかというのも個性。だから、サイエンススイーツのワークショップでは、自由に楽しんでもらえるような工夫をたくさんしています。

子どもたちに人気のレシピ

色の三原色を楽しむ「レインボーポンチ」というレシピがあります。これは、かき氷のシロップを3原色(赤・青・黄)として、色を混ぜた後に板ゼラチンで固めたゼリーを作る工程があるのですが、子どもたちは、三原色から本当にいろんな色を作りだします。その子の気分で割合が変わったり、3色以上混ぜたりする子もいるので、無限にいろんな色のゼリーができるんです。どの色も全部正解。お菓子教室はお見本通りに作ることもあると思うのですが、私のワークショップではある程度自由度を持って、楽しむことを重視しています。

ある時は「色んな味のラムネ」をワークショップで作った子どものママから、「自宅で、レインボーラムネに挑戦していました」とメールが届いたことがあります。基礎的な作り方を教えて興味を持った子どもは、オリジナルを追求していきます。「色んな味のラムネ」は、作り始めると子どもたちが驚くほど熱中して作るので、気づくと大量のラムネが山積みになっていたりします(笑)。

どのレシピにも、変えてはいけない部分と変えても良い部分があるので、変えても良い部分を伝えて、その子らしい自由な発想でお菓子作りを楽しんでもらいます。デコレーションに自由度があるとその子らしいものが仕上がってきますよ。

作った後は、ぜひお子さんに感想を聞いてみてください。「どうだった?」と聞くと、「楽しかった!」で終わったしまうので、「どんな風に楽しかった?」「何をどう感じた?」という聞き方をしてみてください。そう聞くと、子どもはいろんな言葉で説明してくれます。そこで出てくる言葉にも、その子らしさがたくさん出てくるので、それをしっかり受け止めてあげてくださいね。「こんなことを感じていたの?」と日々の生活の中では気が付かなかったお子さんの新たな側面に気がつけるので、面白いですよ。

まずは、お子さんが興味を持ったレシピから親子で挑戦してみてください。この夏の自由研究として挑戦してみるのも良いですね! 今回は、本の中で紹介しているレシピから、とっても簡単に作れる「溶けないアイス」のレシピをご紹介します。

溶けないアイス

材料(アイスポップ型6本分)

牛乳…400ml
粉寒天…4g
砂糖…30g
好みのカットフルーツ…適量

作り方

1.アイスポップ型にカットフルーツ適量を入れる。
2.小鍋に牛乳、粉寒天、砂糖を入れて中火にかける。
3.沸騰したら弱火にして2~3分温め、ゆっくり混ぜながらとろみがついたら火から下ろす。
4.アイスポップ型に流し入れる。アイス棒をさし、冷凍庫で4時間冷やして固める。

作った後は、すぐ食べるのではなく固まった様子を観察してみてください。「おいしい!」と思うだけではなく、材料を型に入れて冷凍庫で凍らせると固まるということを経験してみることで、子どもはさらにいろんなことに興味を持つようになります。 自然界にあるものを私たちがお菓子にして食べているので、その面白さや楽しさ、すばらしさに気づいて、レシピがもつ裏側や外の世界を楽しんでもらいたいです。

(TEXT:上原かほり)

太田さちかさんの最新著書

不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ』(マイルスタッフ

お子さんと一緒に作るサイエンススイーツのレシピが盛りだくさんの1冊。本の第一印象は、大人向けのレシピ本かと思うほど洗練されたデザインです。

「この本を手に取ってくださったママたちには、まず「親愛なるリトルシェフたちへ」というページにある「安全について」「清潔、整理整頓」「道具」「材料」のページを、ママの視点から理解して、お子さんに説明してもらえると良いなと思います。子どもと作るお菓子のレシピを載せていますが、大人が見てもかわいい作りにこだわりました。各レシピページにある「POINT」には、ちょっとした豆知識を載せているのでぜひ読んでくださいね」(太田さん)

一緒に作るお子さんたちも、レシピ本に目を通すことがあるかもしれません。そんなときには、ぜひ注目してもらいたいポイントがあるそうです。

「レシピ本をお子さんが見るということはあまりないかもしれませんが、もし見るのであれば、サイエンスポイントの部分を読んでもらったら面白いと思います。自然の不思議がたくさん詰まっていますよ」(太田さん)

お子さんと一緒にお菓子作りをしようかなと思っている方は、ぜひ「不思議なお菓子レシピ サイエンススイーツ」を試してみてくださいね!

太田さちか
ケーキデザイナー・芸術教育士

撮影:三好宣弘
パリ・サンジェルマン・デ・プレで過ごし、慶應義塾大学、エコール・ド・リッツ・エスコフィエ、京都造形芸術大学大学院など日本とフランスで製菓、芸術を学ぶ。MFA(芸術系修士号)を取得後、芸術教育士として、キッズクリエイティビティを軸にしたアトリエアプローチを実現。2009年にこどもとママンのためのアトリエ「My little days」を設立。

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