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独特な日本語使いで大人気のモデル、滝沢カレンさん。新刊レシピ本『カレンの台所』にはカレンワールド全開の不思議なレシピが満載です。レシピ誕生の裏話や、カレンさん流の料理との付き合い方など、「カレンの台所の舞台裏」を前中後編の全3回でお届けします!
独特な日本語使いに思わず笑顔にさせられてしまう、何とも味のあるキャラクターで大人気の滝沢カレンさん。彼女がInstagramで公開して話題になった「鶏の唐揚げレシピ」をご存じでしょうか?
「冷たい何も知らない鶏肉」
「お醤油を全員に気付かれるくらいの量」
「無邪気にこんちくしょうと混ぜてください」
「二の腕気にして触ってるくらいの力で、鶏肉をさらに最終刺激」
…と、材料や分量、工程など、レシピの概念を根底からひっくり返すその内容に、「独特すぎる」「文章が神がかっている」と多くの人が注目しました。
そんな唐揚げレシピをはじめ、カレンさんのオリジナルレシピ約30品が掲載された新刊『カレンの台所』(サンクチュアリ出版)が2020年4月7日に発売! そこで、カレンさんの新感覚レシピ誕生の裏側に迫るべく、お話を伺いました。
全3回でお届けする「カレンの台所の舞台裏・前編」は、カレンさんの料理観に迫ります。不思議なほっこりカレンワールドをどうぞ♪
――カレンさんの新刊『カレンの台所』は、“超感覚レシピ本”というキャッチコピーが付けられていますが、カレンさんとしてはどんな感覚で執筆されたんですか?
最初、Instagramにレシピを上げ始めた時は、誰かに作ってほしくて書いたわけじゃなかったんです。とにかく字にしたい、ごはんがうまく撮れたから写真載せたいっていうだけで。
でも投稿を見て「すごくおいしかったです」って言ってくれる人がいて、まさかこれで作ってくれるなんて! と逆に驚きました。私のサバとの思い出に寄り添ってくれる人がこんなにいるってうれしくて。
この本は、自分と食材との間で、毎日台所で起きていることを大切に書いたものなんです。自分が描いていた頭の中を本にできたのが楽しかったです。
――サバとの思い出…。本を読むと、食材や材料が擬人化されて登場してますよね。作る工程も、それぞれの材料とのやりとりがストーリーとして描かれていて。
本当に会話してるわけじゃないですよ(笑)。
これ食べたいなって考えた時、今日作る料理のストーリーが浮かぶんです。子どもの時からずっとそうで。外食の時も、料理が出てくるのを待っている間、コックさんの作る様子をイメージしてみたりしますね。
キャベツが踊っている感じがしたり、切られていくたまねぎのスリム感とか見て、自分も切って細くなれたらいいなと思ったり。この食材は私が痩せさせてあげることもできるんだぞと思ったり。映画じゃないけど、食材たちにもそういうストーリーがあると思うんです。
例えば新しい服を買って着る時でも、自分の中で世界というかその服のストーリーを作ります。服たちに感情がないならあきらめるけど、私はあると思っていて。雨の日に着た服は、次は晴れの日に着てあげようとか。料理も同じ感覚で、毎回違うストーリーが頭の中でできあがるんですよね。
――『カレンの台所』には、カレンさんがInstagramでアップして話題になった「鶏の唐揚げ」のレシピのほか、新作レシピも盛りだくさんですよね。Instagramで公開されていないレシピは、今回新たに執筆されたんですか?
はい。Instagramにまだ載せていなかった料理は、撮影用に作ったその日にレシピを書き起こしたりしていました。次の日だと忘れちゃうので。
レシピによって、感情が強いものもあれば、この物語さっぱり終わったなという食材もいて。それをあえて同じ温度で執筆しようとすると、それも違うなと思ったのでそのままにしています。
やっぱり好きなものには熱くなれるので、魚と肉の差はある。私は子どもの頃は毎日ほっけを食べていて、クリスマスとかだけお肉という生活だったので、反動で今は肉が好きなんです。肉は熱くなりますね。
料理は次へ次へと行けるから好き。失敗しても誰にも怒られないし、自分にしか降りかからないラッキーな失敗。料理はやさしいなって思います。
――失敗というキーワードが出ましたが、カレンさんが初めてお料理したのはいつですか? 今のようなお料理上手になるまでには、もちろんたくさん失敗もしたと思うんですが…。
初めて1人で料理をしたのは高校2年生の頃かな。
ママと2人暮らしで、ママは仕事に行っていて、家にすぐ食べられるものがなくて、1人でスパゲティを作って食べたんです。スパゲティを茹でるのも初めてで、塩を入れることも知らず、ミートソースはレトルトのものをあっためて。
おいしかったけど、手作りのソースとは温かさが違うと思った。ミートソースって、あんなに常温のものを、切ってだんだん手を入れて温度を入れていくじゃないですか? だから、やっぱりできあがりの温かさが全然違うんですよね。
高校2年生までは、実家でおじいちゃんやおばあちゃんも同居していたんです。ママは料理を一切しない人だったから、よくおばあちゃんが料理を作りながら「あんたは料理覚えときなさいよ」って言っていました。その時は嫌だなと思っていたんです。火が怖いし、食材も固くて切るのが怖いって。
でもママとの2人暮らしを始めて、とにかくお腹を満たすために料理をしなきゃと。本気で料理をするようになったのは、フランフランのかわいい食器があって、そこに何かをのせたい、と思ったことがきっかけでした。
フランフランの食器に、買ってきたハンバーガーをのせても合わない。この食器にはおいしいものが必要! と思って(笑)。
あ、でもおいしさよりも気持ちかな。お皿と料理と自分の3人の気持ち。全部が心地良くなるような料理が必要だなって思いました。
――そこから料理をし始めて、数々失敗もしました?
たくさんしました。生焼けでお腹こわしたり、逆に焦がしちゃったり。もう本当に悔しくて。なんで私の言うことをこの食材は聞いてくれないんだ!? って。
大好きなハンバーグも最初は全然うまくできなくて、でも絶対うまく作れるようになりたいって思って、何度も何度も作り続けたんです。それでだんだんうまく作れるようになって、今はハンバーグが一番の得意料理になりました。
揚げ物もやったことがなかったので、最初は適当に唐揚げを作ったら大失敗して。携帯でクックパッドとかWebサイトを見て調べて、そこで「あ、調べればいいんだ!」って気づいて、それからはいろいろ見るようになりました。
ダンスと同じで、料理も一回覚えてしまえばできる。アレンジもできるようになる。無限に広がっていくから完成形もないし、ゴールなんて見えていないです。
料理もその時その時で、仕上がりが違います。余裕がある時のハンバーグはふっくらできるし、あせって作ると野菜がバラバラしちゃったりする。お皿にのせた料理の仕上がりで、自分のコンディションがわかるなって思います。
――お仕事でとても忙しい毎日だと思いますが、週にどれくらい自炊しているんですか?
ほとんど毎日してます。夜、友達と外食するとか、そういう予定がない日はだいたい自炊です。
ダイエット中は、冬場ならもう毎日のように鍋です。野菜主体で、おつゆはだしをとって自分で味付けします。ごま油、おしょうゆ、鶏ガラ、みりん、お酒なんかを使って。
付けダレで食べる鍋の時も、自分で作ります。野菜はそれだけでおいしい、独り立ちしている食材だから、つゆとかタレの味付けくらいは自分でやろうと思って。
――自炊が負担になることって、カレンさんはないんですか?
自分は誰かに作っているわけではないから。自分のことだけ考えて、好きなものを作っているので楽しいです。
でももし自分がお母さんで、子どもがいたら、栄養のこととか考えなきゃいけなかったりするし、家族のために人数分作って、家族が喜ぶものを作ったりするのは本当に大変だと思います。今思えば、おばあちゃんは本当にすごいってわかるし、感謝ですよね。
私にとっては、食べた後に後悔しないのは手料理だし、料理は「自分が楽しむ時間」なんです。
私みたいに1人暮らしをしている人や始めたばかりの人で、料理をまだしたことがない人、苦手な人は、料理の何に怖がっているか、嫌がっているか、人それぞれ。面倒くさい、わかんない、いろんなレベルの人がいると思います。だから、みんなに楽しくやろうよとは言えないです。
きっと最初は全然楽しくないだろうし。私も最初は、発表会でずっとコケてるような気がしていました。今、同時に4品とか作れるようになって、やっと楽しくなりました。
でも、スタートダッシュから楽しいものって世の中少ないですよね。
最初はつらい数カ月が待っているけど、ほかのつらいことに比べたら絶対楽しくできるという保証もないんですけど、乗り越えると楽しくなってくる。自分の自信になったり、人に見せたくなったり。
1人暮らしの人なら、1人だし、誰もやれとは言わないけど、外食ばかりよりカラダに良いし、きっと両親も喜んでくれるし、料理はいいことしかないです。
自分の仕事がつらい時、ご褒美と思って自分に料理してあげてほしいなと思います。
――そういう料理初心者の方にも『カレンの台所』は楽しんでいただけそうですね。
買った人の数だけ、楽しみ方は違うと思うので、そこはお任せしたいです。でも、「こんな作り方あるんだ!」「こんなんでいいんだ!」って料理のハードルを下げられたらいいかな。参考にしろではなくて、こんなこともあるんだ! って思ってほしい。
『カレンの台所』は、自分が人生で欲しかった自分の本なんです。食材たちとの思い出になる大事な本。
材料を計らないことの自由さを私も知ったから、みんなが自由に料理してもらうきっかけに自然になったら嬉しいなと思います。どこにきっかけが落ちているかわからないですから。
――ありがとうございました。次回「カレンの台所の舞台裏・中編」では、カレンさんおすすめのレシピをご紹介します。お楽しみに!
(TEXT:福井千尋)
言葉の魔術師・滝沢カレンが綴る、人類未体験の新感覚レシピ文学!
「冷たい何も知らない鶏肉」「お醤油を全員に気付かれるくらいの量」「無邪気にこんちくしょうと混ぜてください」「二の腕気にして触ってるくらいの力で、鶏肉をさらに最終刺激」などなど、「その発想はなかった!」と思わず唸ってしまうレシピたちが目白押し。
レシピとは思えないその詩的な文章は、時には食材目線にまでおよび、1つの料理ができあがるまでの壮大な物語に吸い込まれ、実際に作らなくても、読むだけでも面白い一冊となっています。
レシピだけどレシピじゃない。爆笑。なのに作れる。うまい。――独特の世界観で描かれた豪華全30メニューをご堪能ください。
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