2002年に誕生した世界初の完全養殖クロマグロ「近大マグロ」。2004年から関西の百貨店への出荷が始まり、じわじわと人気に。そんな近大マグロを食べられる飲食店が今年4月に大阪、12月に東京・銀座でオープンし、いよいよムーブメントを巻き起こしそうです。
近大マグロは、2002年に近畿大学水産研究所が世界で初めて完全養殖に成功したクロマグロのこと。完全養殖とは、人工ふ化から育ったマグロが生んだ卵を再びふ化させること。世界的にも希少なクロマグロを完全に養殖のみで育てることができるようになりました。
研究所では近大マグロの他にも、ハマチやマダイ、カンパチ、クエ、トラフグなどさまざまな魚を養殖しています。2003年にこれら養殖魚の販売を開始。翌2004年から近大マグロの出荷も始まり、今では年間2000尾ほどの近大マグロが販売されているそうです。
そして、今年4月に「近畿大学水産研究所 大阪店」、12月に「近畿大学水産研究所 銀座店」がオープンしました。近大マグロを中心に研究所で養殖した新鮮な魚のメニューを楽しむことができます。料理が美味しいのはもちろんのこと、学生が経営やメニュー開発などに関わっているという点でも注目されています。
両店共にオープン当初から大人気で、大阪店は1月末まで、銀座店は年内の予約席が既に売り切れとのこと。決して多いとはいえない当日席を巡って、争奪戦が繰り広げられそうですね。
やっぱり気になりますよね。安全で美味しいからこそ、これほどの大人気となっているとも言えます。その秘密をもう少し詳しくご紹介します。
近大マグロは釣り上げ後、3分以内に血抜き・内蔵抜きをして氷水につけて市場に直送。お店では朝に釣り上げたマグロをその日のうちに提供しているそうです。冷凍しないという徹底ぶりが素晴らしいですね。
養殖の魅力は飼育を通して、脂の量や味を自由自在にコントロールできること。天然モノに比べて、当たり外れがありません。ちなみに、現在は赤身30%、中トロ40%、大トロ30%の割合だそうです。
出荷される近大マグロには、一尾一尾に卒業証書がついています。そこには、生年月日や養殖場、食べたエサなどの生育歴がしっかりと書かれています。育った環境がわかると安心できますね。
日本は世界のマグロの3分の1を消費する世界一のマグロ消費国。マグロは、お寿司や刺身に欠かせません。そんなマグロの供給が近年、ユネスコ無形文化遺産にも選ばれた和食の世界的な人気の高まりや国際的な漁獲量の削減によりピンチになるかもしれないと言われています。
そして、近大マグロはこうした状況に歯止めをかけることができるのでは?と期待されています。安定に供給されて、天然モノよりも手頃な値段で食べられるのであれば、とてもうれしいことですよね。養殖魚は言ってみれば、「人が手間ひまをかけて、大切に育てた魚」。そんな近大マグロが一日も早く、私たちの家庭で気軽に食べられるようになるといいですね。(TEXT:中本タカシ/ライツ)