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コラム

旬は年明けだった?!「納豆ごはん」にベストなお米を調べてみた【お米ライターのコメバナシvol.3】

私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。

極小粒・小粒に合うお米は?

私は納豆ごはんが好きで毎朝必ず食べています。ところで、一年中店頭に並んでいる納豆は、実は1月2月が旬の時期ってご存知でしたか。私は知りませんでした。そこで年明けに旬を迎える納豆をおいしく食べるために、納豆ごはんに合うお米を探してみることにしました。

ご存知のように納豆のサイズには一般的に「極小粒」「小粒」「中粒」「大粒」があります。同じメーカーの納豆の各サイズと5品種のお米の炊飯後の状態をデジタルノギス(測定器具)で測ってみると、ほとんどのお米の長さが「極小粒」と「小粒」と同程度。

ちなみに、納豆の極小粒と小粒とでは差が少ないどころか、個体によっては大きさが逆転しているものもありました。しかし、食べた感覚ではやはり極小粒のほうが小さく感じます。幅のサイズは極小粒のほうが小さいこともありますが、極小粒のほうが小さい個体の割合が多いのかもしれません。多くのお米にサイズが近いせいか「極小粒」と「小粒」は万能サイズだと感じました。

ただし、納豆との相性で重要なのは、ごはんの「粒感」です。ごはんの硬軟にも左右されますが、いかにごはんの粒立ちが良いかが大前提だと思っています。お米の粒立ちの強弱は、品種特性だけでなく、栽培や炊飯方法によっても変わります。そのため、同じ品種でも納豆に合うお米もあれば、合わないお米もあると感じます。

たとえば、もちもちとやわらかい低アミロース米の「ミルキークイーン」は、やわらかすぎて納豆とのバランスはいまひとつ。しかし、同じ「ミルキークイーン」でも、粒感があって口の中でほろほろほどけるものならば極小粒や小粒と合わないこともありません。

ただし、納豆をそのままごはんにのせるだけでは相性はいまひとつ。こうした品種に合わせるときは、納豆をいつもより余計に混ぜて糸が泡状に“もわもわ”してから食べると、「ミルキークイーン」の“もわもわ”とした食感と合うように感じています。

同様に「いのちの壱」も粘りが強くやわらかい品種のため、納豆の糸が泡状になるまで混ぜることをおすすめします。「いのちの壱」は一般的なお米に比べて大粒なので、小粒や中粒の納豆に合うかと思いましたが、意外にも極小粒に合いました。

その理由は、納豆は粒が小さいほど粘りが出やすく、粒が大きいほど粘りが出づらくなるからです。つまり、「いのちの壱」のやわらかさと極小粒の粘りが融合するのです。米粒のサイズと納豆のサイズが近ければ必ずしも合うわけではないのだと学びました。

個人的には粘りが少なく粒立ちの良いしゃっきりとした食感のお米と、ほどほどに混ぜた極小粒を合わせるのが好みです。最近では、「雪若丸」「天のつぶ」「里山のつぶ」「ササシグレ」「亀の尾」「ハツシモ」「ササニシキ」などがお気に入り。ごはんの米粒と米粒の間に納豆がバランスよくまぶさってサラサラと軽い食べ心地です。朝食時、目覚めたばかりの胃にもするりとおさまります。小粒でも合いますが、極小粒のほうがより合うように感じています。

中粒・大粒でも楽しめる!

納豆とお米の相性は、納豆のサイズや粘りだけでなく、食感によっても変わります
今回食べ比べた納豆の中粒は他のサイズに比べて軟らかい食感で、箸で簡単に切れるほどでした。すると、米粒よりも大きいサイズであるにもかかわらず、ごはんの軟らかさによくなじんだのです。中粒はお米に合わせるには悪く言えば中途半端なサイズだと感じているので、もしかしたらごはんに合わせてあえて軟らかくしているのかも…と思ってしまうほどの絶妙さでした。

一方で、大粒は中粒よりも硬めで、極小粒・小粒と同程度の軟らかさ。お米よりもサイズは断然大きいですが、大粒がごはんに合わないわけではありません。

極小粒〜中粒で食べるごはんは「納豆ごはん」で、大粒で食べるごはんは「納豆丼」だと思って食べると、大粒もごはんと合うのです。先ほども書いたように、納豆は大粒になるほど混ぜても粘りが出づらくなっていきますので、大粒を食べる場合はごはんにまぶして一緒に食べるのではなく、たとえばカツを食べてごはんを食べるカツ丼のように、納豆をおかずにごはんを食べる感覚で楽しむのがおすすめです。

以前に「冷や飯が好き」という某ミュージシャンを取材させてもらった時に、「温かいごはんの上に納豆を乗せて納豆が温まるのがいやだ」と言っていました。「冷蔵庫から取り出した納豆と炊きたてごはんの温度差がいやだ」という人もいるかもしれません。私は特に納豆ごはんの温度問題に違和感がなく、冷や飯よりは炊きたてが好きですが、熱々よりはあら熱がとれて落ち着いたごはんのほうが味や食感の持ち味がわかりやすいように感じています。1歳の娘がいるので最近はあら熱がとれるまで待つ余裕がない場合が多いですが…。

ちなみに、納豆は付属のタレを使わずに醤油だけを使うのが好みです。そして、納豆は必ずパックから器に移して食べています。たとえすぐに納豆をごはんの上にのせてしまうとしても、気分的にも断然おいしくなると思っています。また、このひと手間があるだけでも、冷蔵庫から取り出した納豆の温度が常温に近づいてくれるように感じています。

選ぶお米の品種、合わせる納豆の大きさややわらかさや混ぜ具合、食べ方、温度帯など、ひとくちに「納豆ごはん」と言ってもその楽しみ方はさまざま。いろいろなお米の品種、いろいろな納豆を用意して、自分好みの納豆ごはんを探究してみてはいかがでしょうか。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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