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映画『めんたいぴりり』監督・キャストが明かす、ほろ苦懐かしい子どもの頃のあの味【江口カン・博多華丸・富田靖子】

クックパッドニュース編集部

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今話題のあの方に印象深い料理の思い出についてインタビューする『あのひとの「思い出レシピ」』連載。今回は、2019年1月18日(金)公開の映画『めんたいぴりり』の監督・江口カンさんと、W主演を務めた博多華丸さん・富田靖子さんにお話を伺いました。福岡県出身のお三方が語る、子どもの頃のほっこりエピソード満載な「思い出レシピ」をどうぞ♪

“おいしくない”思い出がとても懐かしい

――映画『めんたいぴりり』の中では、博多華丸さん演じる主人公・海野俊之の“思い出の味”として、韓国の「明卵漬(ミョンランジョ)」が登場しますね。皆さんにとっての“思い出の味”といったら何でしょうか?

江口カンさん(以下、江口) 僕は亡くなったおふくろが作ってくれた“ホットケーキ”ですね。子どもの頃、毎日のようにおやつに出てきたんです。

ホットケーキといっても、全然厚みのない、ぺったんこのチヂミみたいな感じです。ほんのり甘みはあるものの、正直そんなにおいしくなくて(笑)。でも、おふくろとしては身体に良いものを僕に食べさせてあげようと、市販のものではなくわざわざ手作りのおやつを用意してくれていたわけで、子ども心にそういう思いは感じ取るじゃないですか。だから、嫌いだとも言えず、我慢して食べてたんですよ。そうしたら、おふくろはすっかりこのホットケーキが僕の大好物だと誤解して、毎日のように作ってくれちゃうわけです。

嫌だな〜でも言えないよな〜、と思いながら食べ続けていた記憶が鮮明に残っていてね。おいしい思い出じゃなくて恐縮なんですが(笑)、でも今は無性にあのホットケーキが懐かしくて、食べたくなるんですよ。嫌いだったはずなのに、不思議なんだけど。

富田靖子さん(以下、富田) あー、それすごく分かります。私も同じような“思い出の味”があって、それはお正月に食べたお雑煮なんです。

私は福岡県八女市の出身で、実家ではものすごく具だくさんのお雑煮を作っていました。野菜のほか、昆布などの乾物を細かく切って入れるんですが、お正月になるとこのお雑煮作りの手伝いに子どももみんな駆り出されるんですね。固い乾物をハサミで細かく切るのは、子どもの小さな手では大変な作業です。しかも大量だし、もう手が痛くて痛くて!

毎年毎年、お正月のこの作業が、子どもの頃は本当に嫌でした。ほかにいくらでもシンプルでおいしいお雑煮があるのに、なんでうちのお雑煮はこれなの〜!?といつも不満に思ってたんです(笑)。

でも大人になってみると、実家のお雑煮には百合根や銀杏、栗の甘露煮なんかも入っていて、すごく手の込んだお料理だったんですよね。実家で大家族だったあの頃だからできたお料理で、今の自分ではとても作れない。再現できないからこそ、あの味がとても懐かしくて……。

文句を言いながら手伝う自分の姿や手の痛みとともに、家族総出でお雑煮を作ったあのお正月の光景を、今もとてもよく覚えているんです。

初めての自炊、初めてのクックパッド!?

――お2人とも、ご家族との素敵なエピソードが“思い出の味”として残っているんですね。華丸さんはいかがですか?

博多華丸さん(以下、華丸) 私は両親が共働きだったので、忙しくてそんなに手の込んだものを作ってもらった記憶はあまりないんです。なので、お2人とはちょっと毛色は違うんですが、でも忘れられない料理の思い出があります。

子どもの頃、スイミングスクールの前にちょっと腹ごしらえしてから行ってたんですが、母は仕事でいないので、いつも自分で肉まんをチンして食べてたんですね。でもある日、いつもの肉まんがなくて、冷蔵庫をあさっていたら冷凍のフライドポテトを発見して。これなら油で揚げるだけだし、自分でも作れるだろうと思ってやってみたんですよ。

鍋に油をなみなみ入れて火をかけ、気泡も立ってきてそろそろ温まったかなと、ポテトを投入するんですが、どうも様子がおかしい。何だかうまく揚がらない。それでもポテトは温まってはいるようだったので、ひとまず皿に上げたんです。で、食べてみるんだけど、やっぱりいつも食べてるポテトと味が違う。おいしくない。でもまあ解凍はされてたし、せっかく作ったからと全部食べたんですよね。変な味だな〜と思いながら。

結局、今思い返すと、私が油だと思ってたものは、おそらく台所用洗剤だったんだろうなと。

富田 えええ!? 何それ!? お鍋に出した時点で気づかなかったの!?

華丸 気づかんよ、そんなの。子どもだもん。

富田 だとしても、味! 味でわかるでしょ!? 本当に全部食べちゃったの?

華丸 食べたよ。お腹減ってたし。

富田 信じられない〜!

――そ、それは食べちゃいけないやつだと思いますが……でも、博多さんにとって初めての“自炊”の思い出というわけですね。

華丸 そ! これが初めて自分で作った料理。何なら私の最初のクックパッド!!

富田 違うから〜!!(笑)

江口 (失笑)

――華丸さん、すみません。次は食べれるものの中で、思い出の味がもしあれば教えてください(笑)。福岡は食文化も豊かですし、郷土料理で昔から好きで懐かしい味などありませんか?

華丸 私は今も福岡にしょっちゅう来てるから、郷土料理なんかも普段から普通に食べてるんですよね。もちろんおいしいものがたくさんあるんだけど、自分にとっては特別なものじゃなくて、思い出の味って言われると選ぶのが難しいなぁ。監督も福岡にいることが多いから、そうじゃないですか?

江口 そうだね。確かに。

華丸 だから、懐かしい味と言われると、逆に日常の朝食とかなんですよね。うちの朝は、母も仕事に出なきゃいけないからバタバタで、だいたいパンだったんです。そういえば、マーガリンをたっぷり付けたトーストを紅茶に浸しながら食べるのとか好きだったなぁ。

富田 えー! 紅茶に浸すの? 初めて聞いた。

華丸 これが意外とうまいのよ(笑)。寝坊してきた自分に、「早く起きんから!急げ!」と叱る母の姿とセットで、いつもバタバタしていた朝食の光景は私もよく覚えてますね。

家族で囲む食卓シーンこそ「ふくのや」の原点

――『めんたいぴりり』にも、そうした家族みんなで食卓を囲むシーンが多いですよね。

江口 そうですね。狭い居間にみんなで集まって、ギャーギャー言いながら食べているシーンが多いです(笑)。映画も、最初のシーンは朝の食卓から始めようって決めてました。

TVドラマから始まって、福岡の皆さんを中心に愛してもらってきた『めんたいぴりり』が、映画になってまた帰って来ましたよ!という思いが一番伝わるかなと。あの食卓こそが、「ふくのやファミリー」の原点ですから。

華丸 TVドラマが始まった2013年から、ずっと同じメンバーでやってますからね。即席でできたチームじゃない。本物の結束力があるからこそ生み出せる“奥行き”を、スクリーンを通して感じてもらえたらと思います。

一人一人はまだまだ小さな粒々ですが、束になるとすごいんです。明太子のように!(笑)

富田 映画では、「ふくのや」の昭和30年代のある1年を切り取って物語が展開していきます。戦後の激動の時代を、私たちが泣いて、笑って、のたうち回りながら生きていく、その姿を見てほしい。そして、大変な時代だからこそ、大人も子どももみんなが助け合い、支え合う、そんな家族や友達を想う愛が伝われば嬉しいです。

――ちなみに、クックパッドには「明太子」を使ったレシピが1万9000品以上も投稿されています(2019年1月16日現在)。最後に、辛子明太子の生みの親である“海野夫妻”がオススメする明太子の食べ方を教えてください。

富田 お料理で使うなら、王道だけどパスタがおいしいですよね……。

華丸 うん。パスタうまいね。

富田 あーーーでも、やっぱり白かメシで楽しんでほしい!

華丸 そう!やっぱ白かメシが最強!!

――はい。白かメシでいただきます! 監督、海野夫妻、本日はありがとうございました。

(TEXT:福井千尋)

映画『めんたいぴりり』2019年1月18日(金)全国ロードショー


■ストーリー:昭和30年代。戦後最大の引揚港でもあった福岡は戦争の傷跡を残したまま、復興を遂げようとしていた。主人公・海野俊之は焼け跡となっていた中洲の一角に小さな食料品店「ふくのや」を立上げ、妻の千代子と営んでいた。博多の祭り<博多祇園山笠>に情熱を燃やし盛り上げてきた「山のぼせ」でもあった。一方で俊之には山笠と並んで熱中しているものがあった。それは「めんたいこ」作り。戦前、日本の統治下でもあった韓国の釜山で生まれ育った俊之は、当時の思い出の味「明卵漬 → ミョンランジョ」をヒントに明太子を作り出し、日々味の改良を重ねていたが、なかなか納得できる味に近づかず苦悩の毎日だった――。映画『めんたいぴりり』はドラマでは語りきれなかったエピソードも加え、福岡の代表的な惣菜として知られることになった「辛子明太子」が出来上がるまでを「笑い」と「涙」を交えながら描いていきます。
■出演:博多華丸、富田靖子、博多大吉(友情出演)、田中 健(特別出演)、でんでん、吉本実憂、高田延彦、柄本時生、中澤裕子 ほか
■監督:江口カン
■脚本:東 憲司
■公式サイト:http://piriri_movie.official-movie.com/

執筆者情報

クックパッドニュース編集部

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