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コラム

お米の“アルデンテ具合”が重要?!うまみたっぷり「本格パエリア」【世界の米料理レシピvol.7】

お米は日本の主食ですが、世界を見渡すとお米を食べている国は意外とたくさんあります。お米の食べ方や炊き方、保管方法、そしてお米の価値観など、世界のお米を知ると、その多様性や魅力を再発見することができます。そこでこの連載では、知っているようで知らない海外のお米料理をお米のコバナシとともにお米ライター柏木智帆がお届けします。

食感の「ベストポイント」が大事!

スペインの米料理と言えば「パエリア」
そして、パエリアで有名な米と言えば中粒種の「ボンバ」という品種です。ところが、稲作が盛んなバレンシアのエル・パルマール村の米農家を訪れ、作っている品種を聞くと、予想に反して中粒種の「センダラ」という品種でした。

この米農家は、「お米は硬すぎても、やわらかすぎてもダメ」と言います。その点については日本人と同じ。しかし、スペインでさまざまな人たちに聞いて回ったところ、お米の食感のポイントが違うことが分かりました。

日本ではお米の食感と言えば、「もっちり」「あっさり」「やわらか」「しゃっきり」といった要素が問われますが、スペインで重要なのは「アルデンテ具合」だったのです。

「アルデンテ」とは、お米に少し芯が残った状態のこと。
この米農家は、「ボンバはスープを吸う速度がゆっくりでアルデンテに仕上げやすいが、いつまでも硬い。センダラはすぐにスープを吸ってやわらかくなるので、アルデンテとソフトの中間が出せる。それが私にとってベストな食感だ。」と主張し、「ボンバは有名だけど、好きではない。」と切り捨てました。

その後に訪れたバレンシア中央市場の店員は、中粒種の「アルブフェラ」という品種を勧めてきました。アルブフェラはドライなタイプなので、パエリアに合うそうです。ボンバもドライなタイプではあるものの「アルデンテすぎず、やわらかすぎない微妙な食感がボンバでは出せない」のだそうです。

スペインの人たちはそれぞれ理想のアルデンテを出すために、品種を選んでお米を使っているようでした。

日本米でも「アルデンテ」はできる?!

スペインのバレンシアと、バルセロナのレストランを食べ歩いてみたところ、アルデンテ具合は店によってもさまざま。ほのかにアルデンテが感じられる程度の食感のパエリアを提供している店もあれば、バッキバキ、ザックザクのアルデンテのパエリアを提供している店もありました。

スペイン米に比べて日本米はアルデンテを保つ時間が短く、パエリアにふさわしいアルデンテの状態にするためには技術が求められるそうですが、日本でも日本米を使ってパエリアのアルデンテを生み出しているスペイン料理店はあります。

ある店の店主は「スペイン米はアルデンテに仕上げやすいが、米粒がどことなく崩れている感じがして、ぷりっとしない。日本の米は加熱していくとアルデンテを一瞬で超えてしまうけど、品種によっては煮込んでもお米がべちゃっとならない」と言います。 さまざまな日本米を使ってみると、スペイン米で作るパエリアの味に近づけられる品種もあり、新たな日本米の可能性を見出せるかもしれません。

仕上げはオーブンで手軽にパエリア

パエリア鍋がなくても、フライパンやダッチオーブンや無水鍋のふたなどで代用できます。パエリアと聞くと豪華な材料をイメージしがちですが、手軽にそろえられる材料だけでも十分。身近な夏野菜を使ったパエリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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