【“クックパッド芸人”藤井21のソロ飯 vol.33】クックパッド芸人を自称し、自らのキッチンに1000品以上のレシピを掲載している「藤井21」さん。一人(ソロ)で作って一人で食べるという「ソロ飯」を日々楽しんでいるそう。藤井21さん自作のおすすめレシピと、悲喜こもごものエピソードをご紹介します。
日本人が本能的に好きなもの、それが「初物」。
日本人は昔から何かと「初」と名の付くものをありがたがる傾向にある。一年の最初は「初詣」に始まり「初夢」「初売り」「書初め」などなど…。料理界隈でも「はしり」と呼ばれる初物の概念がある。
初物の有名どころで言うと、初鰹は昔から特にありがたがっていて「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という有名な俳句があるがこれは、目にも鮮やかな青葉、ほととぎすの綺麗な鳴き声、そして初鰹、この3つを江戸っ子は最も好んだという俳句だ。
なぜ初物をそこまで好むかと言うと、初物は昔から縁起が良いものとして珍重されてきたので、縁起物を好む江戸っ子は特に喜んで食していたという。現代でも初物と言われると何か特別な感じがしてありがたがっている様子を見ると、“初物=ありがたいもの”という考えは、日本人のDNAにしっかりと刻み込まれているらしい。
さて、初物といえば、昔からあるものとは別に、日本では近年になってから脚光を浴びたものがある。それが「ボジョレー・ヌーヴォ」だ。ボジョレー・ヌーヴォはフランスのボジョレー地域で作られる新酒のワインで、毎年11月の第3木曜日に解禁されると決まっている。今年もボジョレーでワインが出来ましたよ、といういわゆる地方の農業祭的なものなのだが、日本では90年代頃から解禁日にボジョレーを飲む一大ブームが起きた。
90年代後半から2000年代初頭くらいは、BARやバルのようなワインをメインで提供する店に限らず、普段はワインが脚光を浴びない大衆居酒屋やコンビニまでも11月が近づくと「ボジョレー解禁!」の文言や「ここ10年で最高の出来!」や「昨年よりも最高の仕上がり!」的なキャッチコピーが書かれたポスターが貼られ、祭りのような盛り上がりがあった。
ここ数年、特に昨年はコロナの影響もありボジョレー祭りブームも落ち着いていきているが、僕が子どもの頃は毎年解禁日になると大勢でカウントダウンをしてボジョレーを飲むパーティーの様子がニュースが流れていた。
一大ブームを起こしたボジョレー解禁だが、前述の“初物=ありがたい”の日本人的な性にピタリとハマったからこんなにも流行ったのだろう。本家フランスではボジョレーの解禁日は日本ほど盛り上がってパーティーをしたりはしないと聞いたこともあるし。ということはボジョレーの解禁日というのは、日本的な催しという一面もあるのかもしれない。
だったらボジョレーに合わせるおつまみも、和の要素を盛り込んでもおもしろいかもしれない。というわけでレシピをご紹介。
和の味噌に洋のチーズを合わせて、中華の餃子の皮でサンドし、イタリアンのカルツォーネ風に仕上げる。そしてフランスのワインを飲む。なんだか国籍不明になってしまったが、これもまた一興。
さて、今年もたぶん解禁日にはスーパーでボジョレー・ヌーヴォを見かけるだろう。そしてせっかくだから飲んでおくか、と手に取ってしまうのだろう。
なんたって日本人は初物が好きだから。
料理と笑いで天下を目指す男性ピン芸人。
埼玉県東松山市出身。東松山のやきとりを愛し、東松山市親善大使「東松山市應援團」の一員。食品衛生責任者の資格を持ち、クックパッドには1000以上のレシピをアップしている。日本テレビ系列『ウチのガヤがすみません!』などに出演。
>>オフィシャルブログ「良い香りのある生活」