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コラム

【大河ドラマで注目!】紫式部の天才的頭脳を支えたのはあの食材?現代にも活かせる平安時代の食生活とは

現在放送中の大河ドラマで注目が集まっている平安時代。紫式部や清少納言をはじめとした女流作家や随筆家、詩人たちが活躍した時代ですが、そんな人たち頭脳を支えたのが“平安時代の食生活”です。今回は、日本人の長寿食研究家である永山久夫氏の著書『紫式部ごはんで若返る 平安時代の食事は健康長寿食』(現代書林)から、現代にも生かせる平安時代の食文化を少しだけお届けします。

実は大好物だった!?
紫式部の天才脳を支えた「イワシ」

卓越した才能の持ち主は、食物を選ぶようです。ある種の食材には、才能をのばす効果があると、本能的に見抜いているのかもしれません。

『源氏物語』の作者として世界的に有名な紫式部は、イワシが大好物でした。イワシの丸干しを、こんがりと焼き、頭から食べるのです。

ところが、平安時代の貴族たちは、イワシは「いやし(賤し)」に通ずるといって、焼いている現場に出会ったりすると、着衣の袖で鼻をおさえ、悲鳴を上げて走り去って行くのです。「イワシの頭は、鴨の味」ということわざがありますが、ほどよく焼けたイワシの頭部は、確かに美味。脂が一番のっているのが頭部で、淡塩で干したものを焼いて食べると、さくさくとしていて、実にうまいのです。

美味な上に、イワシの脂質には記憶力や創作能力をパワーアップする上で効果のある必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)と、血液のめぐりをよくするサラサラ成分のEPA(エイコサペンタエン酸)がたっぷりなのです。

大まかにいうと、DHAは脳の回転をよくし、目、髪などを老化から守り、EPAは血行をよくして、血管とお肌の若返りに働く成分と覚えておくとよいでしょう。AI(人工知能)時代に直面している現代人にとっても、DHAとEPAは重要な成分であることに変わりはありません。

イワシの丸焼きは、紫式部にとっては大作を仕上げる上で欠かすことのできない「ブレーンフード(頭脳食)」だったのです。

イワシだけじゃない!
紫式部の才能を開花させた
もうひとつのブレーンフード(頭脳食)とは

紫式部は、子供のころから驚くほどの暗誦能力を身につけていたようです。彼女は弟の惟規(のぶのり)が、父から漢文学を学ぶかたわらに同席させてもらっていましたが、弟は覚えが悪く、集中力も持続するのがつらそうです。彼女の方は、どのように難しい漢籍でも、スラスラと暗誦してしまうので、父は紫式部が男だったらよかったのにと嘆いていたと伝えられています。

紫式部は、成長するに従って、漢籍から物語類、仏書、歌集、歴史書と幅広い基礎知識を身につけていきます。彼女の学習能力の高さは生来のものですが、加えて、ふだんの食生活が、脳の活性化に役立っていました。

そのひとつが、前にも説明しましたが、好物の丸干しのイワシ。そして、彼女の頭脳食は、もうひとつありました。

それは大豆です。

これを煮豆「末女豆岐(まめつき)」にして食べています。現在の「きな粉」のことで、ご飯にかけたり、お菓子の材料にして楽しんでいます。

スーパー情報化時代といわれる現代でも、時代の成功者となるためのブレーンフードとして、注目されているのがこの大豆。大豆には、長寿にも作用する栄養成分が豊富に含まれています。いくつになっても、若々しくて、しなやかな発想力や記憶力などを維持する方法として、このところ脚光を浴びているのがブレーンフードなのです。

煮豆ときな粉には、
頭脳力向上効果のレシチンがたっぷり

頭の機能を向上させる上で効果的な栄養成分が、だんだんわかってきました。そのひとつが、コリンという成分。大豆に多いレシチンに含まれている健脳成分で、大豆を食べると、レシチンは体内でコリンに分解され、記憶や創作能力と関係の深い、神経伝達物質の「アセチルコリン」が合成されます。 アセチルコリンが不足すると、脳の働きもうまくいかなくなり、脳の老化が進んで、物覚えも悪くなります。紫式部のような作家にとって、コリンがいかに大切かが理解できます。

コリンと並んで、大切な健脳成分が、ビタミンB群の仲間である葉酸で、これも大豆には豊富に含まれています。血液中の葉酸値が低い人の場合、急激に入ってくる新しい情報を記憶してインプットしておくことが難しいといわれ、この成分も作家にとっては欠かせません。葉酸は、記憶力を一生にわたって、健全に機能させるために、コリンと共に摂取したい重要な栄養素なのです。

作家というのは、脳にストックした情報や資料などを参考にしながら、ストーリーを組み立てていくわけで、言ってみれば、インプットしたさまざまな情報をアウトプットしながら書き進めていく仕事です。したがって、紫式部のような作家は、何よりも記憶力が、非常に卓越しています。それを支えていたのが、イワシのDHAやEPA、それに大豆のコリンや葉酸、タンパク質などでした。

これらの食物を日常的にとることによって、創作能力をフルに発揮し、継続することが可能になったのではないでしょうか。脳が必要とする栄養成分を上手に摂ることによって、才能がさらに向上したのです。

本文は『紫式部ごはんで若返る 平安時代の食事は健康長寿食』(現代書林)より一部抜粋・編集しています。

画像提供:Adobe Stock

著者メッセージ

平安王朝の美しい才女たちは、重ね着の装束で仕事をします。
これが重い。そのため食欲も進んだようです。
食への関心も深く、『源氏物語』の作者である紫式部がイワシを好んだというのも、物語を創作するための脳がイワシの成分を求めていたのかもしれません。EPAやDHAなどには、血行をよくしたり、脳の機能を向上する働きがあります。情報化時代の現代でも、これらの成分は注目されています。
美女で名を残した小野小町は、熊の掌のシチューを食べてコラーゲンをとり、都の貴公子たちを魅了していましたし、情熱的な歌人の和泉式部は味噌を上手に食べて美肌を創り、恋に明け暮れていました。
そのような才女や美女たちの食生活をまとめたのが、今回の『紫式部ごはんで若返る』です。

書籍紹介

『紫式部ごはんで若返る 平安時代の食事は健康長寿食』(現代書林)
「大河ドラマ「光る君へ」で話題の紫式部。紫式部の大好物は、イワシだったそうです。イワシに含まれるDHAが、紫式部の記憶力や創作能力を支えていたのでしょう」

そう語るのが、「チコちゃんに叱られる!」でおなじみの、御年91歳の食文化史研究家。

本書では、平安時代の食事を紹介しています。サケ茶漬け、油飯、いもがゆ、ワカメ汁……。平安時代のドーナッツもあります。質素なメニューを想像するかもしれませんが、現代人にとっても健康や美容にいい、長寿食なんですよ。

「小野小町の美貌の秘訣はコラーゲンたっぷりの熊の掌!?」「恋に奔放な女流歌人、和泉式部が恋人にプレゼントしたのはお味噌!?」など、読んで楽しく、ためになる内容です。オールカラーページで、かわいいイラストが満載。

本書をきっかけに、平安時代のメニューを食卓にのせ、「源氏物語」の世界に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。健康になって若返るという、うれしい特典付きですよ。

著者紹介

永山 久夫 (ながやま ひさお)
食文化研究家・日本人の長寿食研究家。1932年(昭和7年)5月23日、福島県生まれ。古代から昭和時代の食事復元研究の第一人者。日本人の長寿食の研究でも知られ、海外からのマスコミ取材も多い。テレビ出演も多く、最近ではNHKの「チコちゃんに叱られる!」や「突撃!カネオくん」など多数出演。ラジオのレギュラー番組も持っている。平成30年度文化庁長官表彰(和食文化研)を受ける。主な著書に『万葉びとの長寿食』(講談社)、『なぜ和食は世界一なのか』(朝日新聞出版)、『長寿村の一〇〇歳食』(角川書店)、『日本古代食事典』(東洋書林)、『長寿食365日』(角川学芸出版)、『日本長寿食事典』(悠書館)、『美女が長寿食を好む理由』(春陽堂書店)、『絵でみる江戸の食ごよみ』(廣済堂出版)、主な監修書に『まいにちにんにくレシピ』(池田書店)など、100冊近くがある。

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