「お酒の締めにお米を食べようとすると、お腹がいっぱいで食べられない」。そんな声を聞くことがあります。ならば、お米を食べながら、お酒を楽しむのはどうでしょう? 思わずお酒が呑みたくなるようなお米料理、名付けて「つまみめし」。お酒の肴になるだけでなく、子どももおいしく食べられる楽しい“日常酒飯”ライフを、お米ライター・柏木智帆がお米のコバナシとともにご提案します。
炊飯には軟水が向くと言われていますが、果たして本当なのでしょうか。そこで、あえて超硬水でごはんを炊いてみました。
使った水は、硬度(※1)1310mg/lのドイツの水。炊きあがったごはんは黄色く、米粒が十分に膨らまなかったためか、長細く見えます。硬水で炊くと水が米粒の中まで入りづらいというのは、本当なのかもしれません。
香りは酸っぱいトウモロコシのよう。口に入れると桜餅のような不思議な風味。食感は通常のごはんと大きな差異はありませんでしたが、味については夫は「苦い」と言っていました。
硬水はやはり炊飯に向かないということが分かったところで、今度は2種類の軟水で炊飯してみることにしました。一方は、手に入った軟水の中で最も硬度が低い1.7mg/lと、もう一方は硬度63mg/lの水を使いました。
硬度1.7mg/lの水にお米を入れると、水がほんのり黄色みがかった白濁に変わりました。硬水とは逆に水が米粒の中まで入りやすいのでしょうか。そこで、硬度1.7mg/lと63mg/lの水で浸水速度を比べてみましたが、結果はほぼ変わりませんでした。不思議です。
炊きあがりを比べると、硬度1.7mg/lの水で炊いたごはんはお米の香りが強く感じられ、外観はつやつやしっとり。硬度63mg/lの水で炊いたごはんは少しかさついていました。ところが、いずれも食感がねちょっとしていま一つ。
硬度1.7mg/lの水で炊いたごはんは、見た目はふっくらと膨らんでいますが見かけ倒しで、米肌が少し溶けているのだろうか…と思えるような印象の食感です。一方で、硬度63mg/lの水で炊いたごはんはほろっと粒感はありました。もしかしたら、硬度だけではなく、pH(※2)やミネラルの種類ごとの含有量などによっても違いが出るのかもしれません。
結論から言うと、水道水で炊いたごはんのほうがおいしい。しかし、それは「わが家の場合は」と言えそうです。
上水場の水の硬度を調べてみると、全国平均は50mg/l。わが家に最も近い上水場は33mg/lでした。ちなみに、少し離れた地域の上水場の水は2mg/l。水道水とひとくちにいっても地域によって硬度は違い、水道水のほうが炊飯に向く地域もあれば、購入した水のほうが炊飯に向く地域もあるようです。
「炊飯には軟水が向く」「おいしい水で炊いたごはんはおいしい」などと言われていますが、水のおいしさは好みによっても違い、たとえ飲料としておいしくても軟らかすぎる水は炊飯には向かないのでは…という推論にたどり着きました。
超硬水の炊飯はおすすめしませんが、軟水といっても硬度はさまざま。水道水で炊いたり、購入した軟水で炊いたりして、マイベストオブ“スイハンウォーター”を見つけてみてはいかがでしょうか。
水を追究して炊いたおいしいごはんはシンプルに楽しみたいところ。そこで、旬の菜の花を使った「菜の花混ぜごはん」はいかがでしょうか。
塩を効かせてシンプルに楽しむも良し。白ごまを混ぜて醤油をほんの少し足しても良し。小さめのおむすびにすると、日本酒のつまみにも、お子様の食事やおやつにもなります。
※1 硬度:水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値。WHO(世界保健機関)の基準では、硬度が120mg/l未満を「軟水」、120mg/l以上を「硬水」としている。
※2 pH:水溶液の性質を表す単位で、水素イオン濃度(酸性とアルカリ性の度合い)を表す。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら