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コラム

場所は病院!?初開催のこども食堂の様子に密着しました【全国こども食堂探検Vol.6】

こども食堂は、子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂。2019年6月時点で、全国に3,718箇所あることをむすびえと地域ネットワーク団体が公表し、こども食堂は3年で12倍増えていることがわかりました。 ほぼ児童館と同じ数まで急増し、地域の交流拠点として開催されているところがほとんどですが、行ったことがない人が多いことも事実。そこで今回は、むすびえスタッフが、こども食堂を実際に訪問してみた様子をレポートします。

東京都目黒区にある「街の内科外科クリニック」で、こども食堂を初めて開催される人がいらっしゃるということで、のぞいてきました。

ココがポイント!

【1】運営方法がわからない!他のこども食堂にボランティア参加で勉強

【2】運営スタッフの得意をちょっとずつ持ち寄る!

【3】運営費は「持ち出しにしない」のが長続きのコツ

このクリニックは、訪問医療を主な事業として実施しているそうで、今回「こども食堂 あやちゃんち」の舞台となったのは、日頃は訪問医療従事者の詰所でもあるスペース。

閑静な住宅街の中にあり、「旬八」の看板が目印です。

こども食堂を開いた「あやちゃん」こと村山彩さん(左)と、街の内科外科クリニック院長の塙勝博さん(右)

「旬八」とは、このクリニック院長がオーナーの八百屋さんの名前で、日々患者さんと向き合う中で、毎日の食事の大切さを痛感し、住宅街で八百屋さんを始められたそう。

入ってみると3階にキッチンがあり、ボランティアスタッフが調理中でした。 
主宰の食欲コンサルタントの村山彩さんはじめ、ボランティアスタッフは食の専門家から、イラストレーターまで実に多才。

村山さんの趣旨に賛同した農園から寄付された、新鮮な食材を使った料理がこちらです。

人参の葉を使ったふりかけ、大豆を使ったハンバーグ、根菜のお味噌汁に、ビタミンたっぷりのミカンのデザートまで、栄養たっぷり

村山さんは、これまで食に関わる書籍を多数出版するなど、食欲コンサルタントとして活躍する中で、何か社会の役に立つことをしたいと思っていたそうです。そして、そんな時出会ったのが、「こども食堂」だったそうで、構想から1年かけてついにオープンとなりました。

【1】運営方法がわからない! 他のこども食堂にボランティア参加で勉強

このこども食堂は、自身も2人のママということもあり、特に子育て世代に気楽な気持ちでふらっと来て欲しいという気持ちを込めて、「こども食堂 あやちゃんち」というネーミングにしたそうです。

開催する前は、何から準備していいのか、当日の運営はどうしたらいいのか「???」の連続だったそうですが、実際、恵比寿で開催されているこども食堂にボランティアに行き、運営方法などを学び、今回の開催を迎えられました。

やりたいと思ったとき、実際に近くのこども食堂を調べて行ってみるというのも、こども食堂が全国にあるからできること。こども食堂は、3700ヶ所という、ほぼ児童館と同じ数だけ全国に広がっています。

【2】運営スタッフの得意をちょっとずつ持ち寄る!

さて、いよいよ、こども食堂オープン。

普段は、小食なお子さんだそうですが、大きなお口で、パクパク。みんなと一緒だとご飯がすすみます

続々とこられる参加者は、Facebookのイベントページで知った方がほとんど。
SNSを活用すると、お金をかけずにママ友などに告知することができますね。なるほど。

そして、イベントページのイラストは、こども食堂をしたいと思っているイラストレーターの方がボランティアで描いてくださったそうです。

今回のこども食堂は、栄養たっぷりの食事をみんなで食べるだけでなく、ハンバーグの中に入っている大豆の成り立ちや、寄付してくださったお野菜の生産者さんの話などの食育につながるプチ講座や、モデル、女優でありジュエリーデザイナーと多才な村山さんの友人が、クリスマスオーナメントのワークショップ、紙芝居をするなど、子どもたちが楽しめる豪華な企画も盛りだくさんでした。

クリスマスのワークショップでオーナメント作りを体験!

みんなが自分の専門や、「これならできる」とできることを持ち寄るのが、こども食堂の長続きの秘訣かもしれないですね。

これは、「旬八」のスタッフが旬の野菜あてクイズをしてくださった時の様子。子どもたちが集中している間に、パパやママたちは、楽しいおしゃべりタイム

Facebookページでの告知ということもあって、友人たちがたくさん来られたようで、「久しぶり~」という再会の場面があちこちでありました。

誰かのお家に集まるとなると、「何かお土産を持って行かないと」と思いがちなところが、「こども食堂」だと誰でも手ぶらで来られて、そこで久々にみんなで会えて近況報告しあったり、「元気?」と声をかけられるのも、いいですね。

他にも、土曜日にお仕事のあるご両親のお子さんが、お友達の家族と一緒に来ていました。特に今回の開催日のような寒い雨の日に、お金のことを気にせずに、楽しめる場所って、意外とないですからね。みんなにやさしい。

【3】金額設定は、子ども一人分を大人がまかなう設定

今回、参加費は子ども無料、大人一人500円で、大人の料金で、子どもの食費一人分を賄う設定にされたそう。毎回持ち出しだと、ちょっとキツくなるところですが、ここにも継続する工夫がありました。

今回、会場を提供してくださった街の内科外科クリニックの院長の塙さんは、「使っていない時間をこうやって地域の皆さんに使って欲しかったから、ようやくそれが実現できて本当に嬉しい」と満面の笑み。

こういう地域の場所って、意外にあるような気がします。

世帯の収入にかかわらず、核家族、共働きが当たり前になる現代で、子育てを応援する場や、パパママが子どもが騒いでも気にしなくていい場って必要だなぁと感じます。

そして、みんなでワイワイ食事をする経験って、現代ではどんどん少なくなっているので、「みんなで食事をする」という経験が子どもにとっても大事なように感じています。

食後に、机の下で井戸端会議をする子どもたち

保育園や幼稚園以外で、こうやってたくさんのお友達ができるのも、いいですね。子ども同士は仲良くなるのが早いです。

ママと「まごころぼきんばこ」を作ってきてくれた女の子。運営費を寄付してくれた人には、心を込めて作った折り紙のオーナメントをプレゼントしていました。これには、感動! きっと2回目も開催されることと思います

今日来ていた男の子。いつもは緑の野菜が嫌いなんだそうですが、今日の「人参の葉のふりかけ」をパクパク食べていました。来ていたママもびっくりしていましたが、こども食堂で嫌いなものを食べる! というのは、意外によくある光景。「こども食堂 あるある」だったりします

子どもも、たくさんの人と関わることで、苦手をヒョイと超えらえる。

自由な発想で「やってみる」。

そして、それをママに褒められる。周りの大人にも褒められる。

そこから、ちょっと自信をつける。

そんなこども食堂の日常が、全国のどこかで、今日もきっとおきています。

(取材・TEXT:全国こども食堂支援センター・むすびえマネージャー 三島理恵)

「こども食堂」の活動を支援しませんか?

こども食堂は、「おなかをすかせた子が行く所」と思われがちですが、地域みんなの居場所として開催されているところがほとんど。
地域交流拠点として開催されるこども食堂をもっと知ってもらうために、こんな企画も実施しています。
https://readyfor.jp/projects/tabeasowara

取材協力

村山彩

「食×運動=豊かな心・健やかな体」をモットーに、食事と運動について学ぶセミナー講師や、ランニングと食事を組み合わせたイベント・パーソナル指導、アスリートへの食事指導、アスリートやダイエット向けのレシピメニュー開発・レストランへのアドバイス、メディアでの連載、生活習慣病のカウンセリングを行う。現在は「食と運動」を無理なく習慣化させるための仕組み作りも提案している。その一つとして、300例の冷蔵庫を分析した経験を活かし冷蔵庫コンサルタントを行うなど活動の幅を広げている。   著書に『あなたは半年前に食べたものでできている』(9万部を突破。韓国・中国・台湾にて翻訳)『あなたは半年前に食べたものでできている 実践編』『やせる冷蔵庫』(台湾にて翻訳)新刊『豆皿しあわせレシピ』がある。

こども食堂 あやちゃんち

llustration by タイラ

次回は、2月開催を予定!
開催のご案内は、Facebookページで行います。

NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ

「こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる。」のミッションのもと、2018年に全国に点在するこども食堂を統括する団体を組織。地域ネットワーク支援事業、企業・団体との協働事業、調査・研究事業を軸とした事業を通じてミッションの実現へ向けて活動している。

>>公式HPはこちら

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