神奈川・鎌倉に2店舗、東京・二子玉川、大阪・北浜の計4店舗の展開をしているOXYMORON(オクシモロン)は、カレー好き、スイーツ好きの女性に人気の、いつも多くの人で賑わうお店。今年6月には書籍『OXYMORONのあまいもの: 何度でも食べたくなる、飾らない味』が発売され、ますます話題に。「あまいもの」のメニュー開発、製造を担当する大島小都美さんに、お店のこだわりやおいしく作るコツを聞きました。
私と店主の村上は、どんなときもあまいものが欠かせません。OXYMORONの立ち上げ時に、カレーだけではなく、思いの伝わるおいしいあまいものも提供しようと、当時のスタッフ皆でお店に合うメニューを考えました。
お客さまの多くは、カレーとあまいものをセットで召し上がってくださいます。嬉しいことに、あまいもの目当てに来てくださる方も多いです。
店名の「OXYMORON」は、「oxy」=「賢い」と、「moron」=「愚か」という、相反する言葉を二つ並べて作り出す表現方法である「撞着語法 (どうちゃくごほう)」 を意味します。スパイスを使った、カレーとあまいもの。まさに相反するこの2つの組み合わせは、店名そのものです。
「OXYMORONと言えば!」と言ってもらえるあまいものの中で、多く挙げていただくのが、カスタードプリンといちごのババロアです。どちらも、オープン当初からレシピもほとんど変わることなく続いているメニュー。幅広いお客さまにわかりやすく、喜んでいただけるものを、と開発した2つですが、今ではOXYMORONを代表するあまいものとなりました。
当店のカスタードプリンは固い食感のプリンです。オープン当時、世の中はとろっとしたなめらかなプリンが人気でしたが、スタッフ全員一致で迷いなく昔ながらの固めのプリン出すことを決めました。
普遍的で、記憶の片隅にでも残るものでありたいという思いから、定番のあまいものは、見た目はシンプルだけど、ひとくち食べると小さな驚きのあるものを、と考えて作っています。お店に足を運んでいただいた方に、ここだからこそ感じられる雰囲気とともに、お客さまによろこんでいただけるようなメニューは何かな、と日々考えています。
手に入りやすいシンプルな材料を使っています。作り方も特別難しいことはしていません。ただ気をつけているのは、全ての工程を丁寧に作業することです。
卵を混ぜるときに卵白のコシをしっかり切ること、牛乳を熱々にしすぎない程度に温めること、プリン液をきめの細かい網で2回こすこと。低温でじっくりと湯煎で蒸し焼きにして、表面がきれいになるように焼き上げます。 使う材料で強いて特別なものとして挙げるなら、バニラビーンズ。あるのとないのでは風味が全く違うので、ぜひご家庭で作る際も入れていただければと思います。
これからの季節、店頭でも人気の高いあまいものです。インドでは卵を使わないアイスとしてポピュラーなスイーツです。当店では季節に合わせて爽やかな仕上りのグレープフルーツやいちごとローズを使ったものが並んできましたが、夏本番を迎えるこれからはマンゴーとレモンを使ったものを提供する予定です。
これはおうちでも作りやすいメニューです。カルダモンシードで清涼感のある香りを出すのがポイント。スパイスとお菓子の組み合わせの奥深さを、ぜひ感じていただきたいです。エバミルクを使うと牛乳を煮詰める時間を短縮でき、気軽に作れるのでおすすめです。基本の材料はスーパーで揃えられるものばかりなので、お好みのフルーツを使ってアレンジを楽しんでみてください。
市販のお菓子はもちろんおいしく、日常生活の楽しみのひとつ。ですが自分で作ったお菓子というのは、材料を合わせて泡だてたり、混ぜ合わせたり、と自分の手でひとつひとつの工程を感じながら、出来上がりまでを見届けることができます。たとえ失敗したとしても、ずっと記憶に残ります。私自身、子どものころのそういった経験がお菓子を作る楽しみになり、今の仕事に繋がっています。誰かのために、ときには自分のために、喜んで欲しい!と、気持ちが届くお菓子を作り続けていけるといいなと思っています。
(TEXT:上原かほり)
「レシピの内容を簡単にしているのは数点で、ほとんどはお店のレシピのまま落とし込んでいます。定番のあまいものに関しては、包み隠さずそのままのレシピを載せました。だからこそ、この本を見て、おうちで作ってくださった方が、答え合わせのようにお店にきてくださったら楽しいなと思っています。失敗しないポイントは、とにかく丁寧に作ることです。もし思ったような出来上がりにならなくても、それはそれでオリジナルのあまいもの! ぜひ、OXYMORONのあまいものをご家庭で楽しんでみてください」(大島さん)
兵庫県生まれ。夫の転勤を機に上京。同時に以前より趣味であったお菓子づくりを本格的に学び、菓子店にて製菓製造スタッフとして勤務。OXYMORONの前身である間借りカレー店にスタッフとして勤務しはじめたことから、2008年OXYMORONオープン時にあまいもののメニュー開発や製造に携わる。「日々アップデート」がモットー。