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コラム

無駄な買い物や食べ残しを減らせば、温暖化を止められる!?国連職員が語る「家庭の食品ロス」の現状

今年のSDGs週間が始まります。 SDGsとは、国連サミットで採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)のこと。国連に加盟している193か国が、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標を指します。

最近SDGsという言葉をよく目にするようになりました。
メディアで話題になることも多く、小中学校の教育の場でもさかんに取り上げられています。 そしてこのSDGsが採択されたのが2015年の9月25日であったことから、この日を「GLOBAL GOALS DAY」とし、世界各地ではこの日を含む1週間をSDGs週間として様々なイベントを実施しています。

SDGsの中でも特に、食品ロスに関わるのが12番目の「つくる責任、つかう責任(持続可能な生産消費形態を確保する」という目標です。今年発表されたSDGs報告書(※1)によると、日本はこの分野で”重要な課題がある”と見なされているので、さらに注力していくことが必要とされています。 そこで、私たちひとりひとりが家庭で取り組めることを、国連食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所所長・日比絵里子さんにお聞きしました

コロナ禍で、食品ロスの状況は改善した?

国連食糧農業機関(FAO)の駐日連絡事務所の所長を務める日比絵里子さん
昨年から続く外出自粛の要請で、家庭で食事をする機会が増えました。食料のロス・廃棄にどう影響したのかという具体的な数値はFAOでは出していませんが、世界各国で少しずつ統計が出てきています。
食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんの記事(※2)によると、アメリカ、イタリア、オーストラリア、イギリス、アイルランド、カナダ、日本などの現地アンケート結果を総合すると「2020年、家庭の食品ロスは減る傾向が見られた」とのことです。

日本では「食品ロス」というと、家庭や外食産業などフードチェーンの消費者側で起こる廃棄に注目しがちですが、国連では、生産者や加工、流通過程で生じるロスの課題についても注目しています。この両者を合わせて食料のロス・廃棄の問題を考えていく必要があります。

国連がなぜ消費だけでなく、生産者や加工、流通過程も含めた全工程でのロス・廃棄について注目しているかというと、2011年にFAOが発表した「食料の約3割が食されずに無駄になっている」という調査結果が世界各国に強いインパクトを残したからです。
これにより、「つくる責任、つかう責任(持続可能な生産消費形態を確保する)」というSDGsの目標の中に、食料のロス・廃棄を2030年までに大幅に減らそう!という具体的な目標が掲げられました。この目標を実現するためには、生産者(加工流通も含む)と消費者(外食産業や小売も含む)双方でのロスを削減することが必要となるのです。

日本でも新型コロナの影響でこれまで出荷していたホテルやレストランに出せなくなった食材を直接消費者に提供するためのオンラインのサイトができたり、廃棄される食料を家庭にまわすフードバンクが活発に利用されるなど、これまでにない食料システムの融合が起こりました。新型コロナ感染拡大の影響に背中を押された形で、新しい技術やITを使うなどこれまでにない可能性に踏み出した生産者、物流関係者、消費者がたくさん出てきたのです。この傾向は、仮にコロナ禍が収束しても継続していくものでしょう。食料のロスや廃棄の問題を含め、これは貴重な転換点となるのではないでしょうか?

家庭での食品ロスは、環境へも影響する

世界全体では生産した食料の3割が食されずに無駄になり、日本だけでも年間612万トンが食べられるにもかかわらず廃棄されています。一方で、世界では10人に1人が飢餓に苦しみ、経済的理由から3人に1人が栄養バランスのとれた食事を摂ることができないという現状があります。

栄養バランスのとれた食事を摂ることができない人は、2019年→2020年で増加しています

このいびつな状態は大変もどかしいですが、残念ながら私たち日本人が家庭で無駄にする食料を減らすことで、飢えた人の食料に直接充てることができるわけではありません。なぜなら、今日の世界の飢餓や栄養不良の問題の根底にあるのは、紛争、気候変動などの環境問題、そして経済ショックや停滞などの要因だからです。

しかし、家庭での食料のロス・廃棄の際は、新たな温室効果ガスを排出してしまいます。言い換えれば、食料の廃棄を減らすことは、気候変動を遅らせること、これ以上進めないことにも繋がるのです。ですから、温室効果ガス発生の一因である食料の家庭での廃棄を減らすことは非常に意義のあることなのです

私たちの食べるものは、どこから来てどこへ行くのか

持続可能な食料システム、つまりは、環境を守りつつ、安心安全な食料をすべての人に行き渡らせることができるような、生産から消費までの仕組みをつくることが大切です。そのために私たち一人ひとりの日本の消費者ができることは、他にもあります。例えば、購入する食料について興味を持つことです

どこから来たのか。どのように生産されたのか。どのような自然資源やエネルギーを利用し、環境や生態系にどのような影響を与えて、自分の食卓まで到達したのか? その背景に想いを馳せることで、消費者の考え方や行動が変わります。例えば、より少ない資源で手元に届く地元の食材を率先して選ぶ、多様な魚や野菜を購入することで生物多様性を守る、など。それによって、生産者や食品加工、流通も変わるかもしれません。

その他にも、家庭からでる生ゴミを再活用してガーデニング用の堆肥をつくる「コンポスト」があります。また、家庭菜園をやってみる、フードバンクに協力する、など、個々人の行動は小さくても、食料システムの改善に大きな影響を与える可能性のある行動はたくさんあります。

画像提供:Adobe Stock

今すぐ意識したい、9つのこと

FAOでは、食料の生産から消費にかけての各段階でのロスや廃棄を減らすよう、以下の9つの項目を"9 easy tips"として呼びかけています。ぜひ家庭でも意識してみましょう。

1. 1回で取る分は小さめに
 食べられる分だけ取って、こまめにとっておかわりしよう
2. 残り物も無駄にしないで
 翌日の食事に再利用しよう
3. 無駄な買い物をしない
 空腹で買い物に出ない、買い過ぎない、計画を立てて
4. 見栄えの悪い野菜や果物を買おう
 形が悪くても味は同じ、積極的に使って廃棄を減らそう
5. 冷蔵庫は常にチェック
 詰めすぎず、適切な温度設定を 
6. 古いものから順番に消費しよう
7. 賞味期限や消費期限を正しく理解しよう
 賞味期限は最適な状態を示す日付。過ぎていても食べられる
8. コンポストをつくろう
 ゴミを無駄にせず、ガーデニングの材料に
9. 余剰の食料は必要なところへ共有しよう
 フードバンクへなどに寄付をしよう

食品ロスを減らす若者の活動を、クックパッドも応援!

2021年にFAOのユース委員会によって世界食糧フォーラム(WFF)という取り組みが始まり、若者たちが中心となって活動するイベントをサポートしています。そして、そのイベントの一つである「クリエイティブクッキングバトル」にはクックパッドも深く関わっています。

今年の「クリエイティブクッキングバトル」では、食材を使い切る料理の動画コンテストを開催しました。このコンテストは、現役の中高生が実行委員を担っており、若い世代から食品ロスをなくす新しい動きが広がることを期待されています。みなさまも家庭からできる食品ロス対策を、なにかひとつでも始めてみませんか?

「Creative Cooking Battle/クリエイティブクッキングバトル」
海外版(現在投稿募集中)
http://www.world-food-forum.org/highlights/detail/en/c/1155083/
日本版(応募締め切りました)
https://ccb.cookpad.jp/

(TEXT: 中山あこ)

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