「節塩(せつえん)」という言葉を聞いたことがありますか?減塩と似た意味ではありますが、実はちょっと考え方が違うのです。長く健康を守るためにも、節塩はとても大事な考え方です。今回はさまざまな年代に知ってほしい、節塩の知識について解説します。
減塩は、高血圧の方や血圧が気になる方が取り組むイメージがありますよね。
対して「節塩」は、大人も子どもも、食塩摂取量が多い人も少ない人も、血圧が気になる人もそうでない人も、みんなでコツコツ食塩摂取量を節約しよう!というような考え方を指しています。
日本人は食塩の摂りすぎが問題になっていることもあり(※1,2)、高血圧患者が増える原因となっています。「血圧が気になってきたから減塩しなくちゃ」ではなく、血圧が気になる前から食塩の摂取量を減らすことが大切です。
「歳をとると、だれでも血圧は高くなるよね」と思っている方も多いかもしれません。実際、加齢により血圧が高くなることは知られていますが、実は若いころから長期間摂取した食塩の量も関係していることがわかっています。
32ヶ国、52施設で1万人以上の被験者を対象に、食塩摂取量と高血圧の関連を調べた研究があります。(※3)この研究では、食塩摂取量が多いほど1年後に上昇する血圧の値が大きくなり、たとえば食塩摂取量が1日7gであれば、1年後に上昇する血圧は0.3mmHg程度で、14gであれば血圧上昇は0.7mmHgと、約2.3倍上がるということがわかりました。
若いころから食塩をとりすぎる生活を続けていると、加齢に伴い高血圧発症のリスクが高まる、ということが言えるでしょう。
若いころからの節塩の大切さ、伝わりましたか?毎日の食塩の量を減らしていくためにも、日ごろから薄味を心がけることが大切です。
薄味の食事を物足りなく思う方もいるかもしれませんが、薄味は「慣れ」がポイントです。徐々に食塩を減らしていくと、薄味でも満足できることが知られています。
オーストラリアで行われた研究で、パンに含まれる食塩を段階的に減らし、どの程度減らすまで気づかないかを調べたものがあります。(※4)この研究では6週間にわたり、同じ食パンを食べ続けるグループと、徐々に食塩が減らされていく食パンを食べるグループに分けて、食パンへの塩味の評価を比較しています。
その結果、4分の1食塩を減らす程度ではほとんど気づかれず、パンの風味や好みの評価を影響しなかった結果になりました。
「濃い味が好き」と思い込んでいる方でも、少しずつ食塩を減らせば慣れていけるかもしれません。料理に使うしょうゆや塩をちょっとだけ控えてみる、外食やお惣菜で減塩メニューを手に取ってみる、などできるところからはじめてみませんか?
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節塩・減塩と同時に、排塩も意識しましょう。排塩とは、字の通り食塩の排出を促すことを指します。ポイントは、食塩の排出を助けるカリウムと食物繊維の摂取です。
カリウムは体内で浸透圧の調整に関わり、ナトリウムが過剰な場合に排出して調整してくれる働きがあります。また食物繊維は、ナトリウムを吸着して体外への排出を助けます。
カリウムと食物繊維は、野菜、果物、海藻類、きのこ類などに含まれます。これらを取り入れた食生活は、高血圧だけでなく糖尿病や脂質異常症などほかの生活習慣病対策としても有効です。ぜひ意識して取り入れましょう。
節塩はさまざまな年代で取り組みたい課題です。家族や周囲に減塩が必要な方がいる場合、一緒に減塩に取り組むのも良いですね。薄味に慣れるほか、食塩の多い食べ物を減らしたり、排塩を助けるカリウムや食物繊維を摂取したりするなど、できることからはじめてみましょう。
【参考・参照】 (※1)厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要<https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf>(最終閲覧日:2022/05/30) (※2)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版) (※3)Intersalt Cooperative Research Group,“Intersalt: an international study of electrolyte excretion and blood pressure. Results for 24 hour urinary sodium and potassium excretion. Intersalt Cooperative Research Group”,BMJ. 1988 Jul 30;297(6644):319-28. (※4)S Girgis, B Neal, J Prescott, J Prendergast, S Dumbrell, C Turner, M Woodward,“A one-quarter reduction in the salt content of bread can be made without detection”,Eur J Clin Nutr. 2003 Apr;57(4):616-20.
【執筆者:管理栄養士 広田 千尋】
これまでに500件以上の指導経験があり、ダイエットや生活習慣病対策はもちろん、妊婦から高齢者まで幅広い指導を経験。栄養指導、レシピ制作、栄養教室や料理教室開催などのスキルと知識を生かし、あすけんではコラム執筆やオンラインカウンセリングを担当。
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