「お酒の締めにお米を食べようとすると、お腹がいっぱいで食べられない」。そんな声を聞くことがあります。ならば、お米を食べながら、お酒を楽しむのはどうでしょう? 思わずお酒が呑みたくなるようなお米料理、名付けて「つまみめし」。お酒の肴になるだけでなく、子どももおいしく食べられる楽しい“日常酒飯”ライフを、お米ライター・柏木智帆がお米のコバナシとともにご提案します。
焼きおむすびを作ろうとすると、焼いている途中で崩壊してしまう。そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。
崩壊を防ごうと、おむすびをつくるときに「ぎゅっぎゅっ」とかためる方もいますが、それでは米粒がつぶれてしまいます。食べた時に、おむすびの中心部の米粒がダマのようになってしまっているのは、力の入れ過ぎです。
外側はカリカリで、中は米粒がふっくら、口に入れると一粒一粒がほろほろと際立つ。そんな食べ心地の焼きおむすびが作りたい……という方へ、今回はお米のでんぷんの特性を活かした焼きおむすびの作り方のコツをご紹介します。
お米は加熱して炊飯することで「アルファー化」して消化しやすくなりますが、炊けたごはんを冷やすことで消化しにくい状態に戻り、「ベータ化」していきます。この変化を利用すると、おいしい焼きおむすびを作ることができるのです。
まずは、ごはんが熱々のうちにおむすびを作って、あら熱がとれたらラップをして冷蔵庫へ。半日から1日経つと、ベータ化して表面が硬くなります。これを弱火でじっくりと焼いて、再アルファー化。表面がカリッとなってから、醤油を塗って、再びさっと焼いたら完成。
作りたて熱々のおむすびを焼くと、途中で崩壊しがちですが、この“ベータ化の技”を使えば簡単にうまく焼くことができます。甘じょっぱくしたい場合は、醤油に少しみりんを足してみてください。
炊飯して食べきれないごはんの活用法としてもおすすめ。夕食の余りごはんで作ったおむすびを冷蔵庫へ入れておけば、翌朝の朝食に最適です。朝はパン派の方もぜひお試しを。
醤油にカレー粉を混ぜたり、味噌を塗ってみたり、紫蘇を巻いたりと、アレンジは自在です。朝食の余りごはんで作ったおむすびを冷蔵庫へ入れておいて、午後にお子さまのおやつにしたり、晩酌のつまみにするのもいいですね。
ただし、余りごはんをおむすびにする場合は、ごはんが炊きたて熱々のうちに。冷めてからむすぼうとしても、ごはんがうまくまとまってくれません。熱々のごはんならば、力を入れなくてもごはんがまとまり、米粒がふんわりとしたおむすびができますよ。
海苔の佃煮、ごはん、白ごまという最強の組み合わせ。さらに、加熱によってアミノ酸と糖が結びついて起こる「メイラード反応」が生み出す、お焦げの香ばしさ。日本酒に合わないはずがありません。
焼きおむすびと熱燗もいいですよね。焼き加減を見ながら醤油を塗るのが面倒……という方には、下のレシピのように先に味付けしてしまえば後は焼くだけ。
混ぜごはんを焼きおむすびにしようとすると、白ごはんよりも崩れやすいため、より“ベータ化の技”がおすすめです。
ごはんに混ぜるものは、ほかにも、ジャコ、桜えび、鰹節など、常備食ならば、手軽にいつでも作ることができます。塩をきつめにむすんでシンプルに「塩焼きおむすび」にするという手も。焼きおむすびの楽しみ方は無限です。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。