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コラム

大事なのは研ぎ方と水分量!米農家に聞いた「お米をおいしく炊く秘訣」とは?

【プロがすすめるキッチンアイテム Vol.4】食卓を鮮やかに彩るうつわ、質の良いこだわりの料理道具や調味料などの食材。毎日の料理を楽しくしてくれるようなお気に入りのアイテムを持ってみたいと思うものの、どれをチョイスすればいいのか迷ってしまいますよね。そこで、素敵なうつわ・料理道具・食材をその手で生み出しているクリエイターさんたちに、おすすめの品とその楽しみ方をお聞きしました。第四回目の今回は、長野県高山村で、農薬、化学肥料、除草剤を使わずにお米を作っている「瑠璃屋」の牧野稔さんにお話を伺いました。

お米の味わいが変わる!おすすめ品種とおいしい炊き方

−−農薬、化学肥料、除草剤を使わずに作られたお米は、味にどのような特徴がありますか?

肥料分も少ない厳しい環境で、時間をかけて育てられたお米は、あっさりとしながらも、お米本来の持つ甘さとしっかりした味わいがあるように思います。自然な甘みがあるのが特徴ですね!

−−お米を作っている牧野さんが実践している、炊飯の仕方を教えてください!

あっさりした硬めの炊き具合のご飯が好きなので、炊飯時の水加減を少なくすることと、お米の研ぎ方にこだわって炊いています

研ぐ時は、お米を傷つけないようプラスチックのざるを使っています。まずお米を2~3回水ですすいで、研ぎ過ぎないように3回ほど指先だけで研ぎます

水を変えて30分ほど給水し、ざるに上げて水を切ります。

実際に牧野さんが研ぐ時と吸水時に使っているざる。排水もしやすい

普段は炊飯器で、少量炊きの時は土鍋で炊いています。炊飯器の時は、水加減を炊飯器のメモリより1~2mm低く、土鍋の時も同様で、お米の量と同量より気持ち少なくします。

土鍋の時は最初は弱火から中火にして、沸騰したらごく弱火にして追い焚きし、10分経ったら火を消して10分蒸らし、全体をほぐしておきます。

−−その炊き方をすると、味や食感にどんな変化があるんですか?

お米の外側のタンパク質を崩さないように研ぐことで、中側のデンプン質が溶け出さず、お米の味をしっかり噛みしめられる硬めのお米に炊き上がりますよ!

蒸らした後すぐに全体をほぐしておくと、余分な水分が飛んで、冷めてもおいしく食べられます。

お米のおいしさを存分に味わえる!おすすめの食べ方とは?

−−お米を使ったおすすめメニューがあれば、ぜひ教えてください!

お赤飯や炒り黒豆ご飯がおすすめです。お赤飯は、富山県の品種のもち米、新大正もち2合にササシグレ1合、合わせて3合にして炊くとおいしいです。

牧野さんが作ったお赤飯(左)と炒り黒豆ご飯(右)。ふっくらおいしそう

炒り黒豆ご飯は、黒豆を皮が弾けるくらい炒ってから、ササシグレの5分づき米と黒豆、調味料で炊くと香ばしい黒豆ごはんが簡単に作れますよ!

炒り黒豆ご飯のレシピ

お米…2合 
黒豆…50g 
水…2合分 
酒…大さじ2
塩…小さじ1

精米加減でも味が変わる!おすすめの「5分づき」とは?

他には、精米加減を変えるのもおすすめです! 私は季節や気分に合わせて、白米と5分づきのお米を選んで食べています。

−−5分づきとはどんなお米なんですか?

5分づきは、玄米のぬか層を約半分取り除き、胚芽もぬかも残っている状態のお米です。玄米の半分の栄養が残って、浸水時間や炊き方も白米とほぼ同じ。手間がかからず、栄養価が高いのがメリットです。

玄米の食感や香りが苦手な方や健康志向の方、炊飯に手間や時間をかけたくない方におすすめですよ!

精米したササシグレの白米(左)と五分づき米(右)。色味がかなり異なる

ただ、玄米ほどではないですが、ぬか特有の香りや味が残っているので、夏の暑さで食欲のなくなる時期は白米の方が食べやすいかもしれません。

−−スーパーなどで見かけませんが、5分づき米はどこで入手できるんですか?

一番簡単な入手方法は、分づき米を販売している農家さんからネットなどで直接買う方法ですかね。瑠璃屋でも分づき米をネットで販売しています。

あとは、米屋さんや自然食品店さんなど専門店に直接行き、購入するか、ご自分で小型の精米機を購入すれば、玄米をお好みの分づき米にできますよ。

おいしいお米作りが豊かな環境づくりに繋がる

−−今後、牧野さんがお米作りで取り組みたいことがあれば教えてください!

お米作りを通して、人も生き物も豊かに暮らせる環境づくりができたらいいなと思っています。

田植え時(左)と冬期湛水時(右)、年中水が張られている牧野さんの田んぼ

従来の農法では、収穫が終わった冬の田んぼには水を張らないのですが、私はいくつかの田んぼで冬期湛水(とうきたんすい)という手法をとり、水を溜め、米ぬかなどの土壌生物のエサになる肥料をまいています。

冬でも湿地状態を保つことで、ミジンコから、ゲンゴロウやホタル、トンボなどの水生昆虫、カエルなどの両生類が育ち、それらを食べにヘビやトカゲなどの爬虫類、サギなどの鳥類が集まってくるんです。

微生物や生き物を増やすことで、田んぼの地力も上がり、おいしいお米作りも実現できます。これからも高村山の生態系を守り、持続可能な農業を営みながら、おいしいご飯が食べれたら幸せだなと思います。

今はこのようなご時世ですが、今後は皆さんと田んぼで生き物を観察したり、新米を食べたりする場が設けられれば嬉しいですね。

(TEXT:小菅さちえ)

瑠璃屋 牧野稔さん

1972年神奈川県横浜市生まれ
多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業
造形業、園芸業、食品加工業を経てIターンで2017年、長野県高山村に新規就農しました。
自然と生き物が大好きです。

中山間地域の過疎、高齢化、後継者不足による耕作放棄地が増えた事により、人の営みと共存してきた里山の生き物たちが姿を消しつつあります。農薬や化学肥料、除草剤を使わない持続可能な農業を営むことで、生物多様性を守り中山間地域の農業の担い手として、人も生き物も豊かに暮らせる環境づくりに貢献できるように日々努力していきたいです。

そして、安心で安全な農産物を提供すると共に、それが育まれた高山村の素晴らしさを皆さんにお伝えしていければと思っています。瑠璃屋のイラストやロゴは自作で絵を描くことやもの作りも大好きです。

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