【“クックパッド芸人”藤井21のソロ飯 vol.34】クックパッド芸人を自称し、自らのキッチンに1000品以上のレシピを掲載している「藤井21」さん。一人(ソロ)で作って一人で食べるという「ソロ飯」を日々楽しんでいるそう。藤井21さん自作のおすすめレシピと、悲喜こもごものエピソードをご紹介します。
お鍋の季節がやってきた。
日本の冬の定番を超えて殿堂入りを果たした料理「お鍋」。蓋を開けると温かく白い湯気が立つお鍋は、冬の寒い日の冷えた心も身体も芯から温めてくれる。
さて、皆さま、今どんな鍋を想像しましたか?
豚肉と白菜たっぷりピリ辛のキムチ鍋? はたまた白濁した濃厚なスープに野菜をたっぷり入れた豆乳鍋? 鶏肉の旨味がふんだんに染み出した極上スープの水炊き? カレー鍋やおでんってのもありますね。
そう、鍋という料理はあまた存在するのです。
料理名でありながらその実、調理器具名でもある、それがお鍋。具材の種類に特別な決まりはなく、味付けも千差万別で多種多彩。具材を何でもひとつの容器に入れて味付けをし、煮てしまえばそれはもうすべからく鍋なのです。皆が大好きな冬の定番大衆料理、それが鍋なのです。
ただその中でも異彩を放つ鍋があります。それが「すき焼き」。
具材は牛肉、ネギ、豆腐、白滝が定番。味付けは日本人の好きな和出汁ベースの甘辛い醤油味。よく煮えた具材を溶き卵に絡めて口に入れると、じゅわっと牛肉の旨味が染み出し、甘辛い醤油味と一体になる。そして、卵のまろやかさが全体を包み込み、幸福感に満たされる。
他の料理には類を見ない食べ方、そして満足感がある鍋なのです。このフォーマットがすき焼きであり、皆が大体同じものを思い浮かべるのです。
しかも、同じ鍋料理にありながら、すき焼きには「すき焼き鍋」という、その名を冠した独自の鍋すらも存在するのです。食べ方だけでなく鍋そのものにも独自性がある。
そして、すき焼きには「鍋料理=大衆料理」という固定観念から逸脱する「豪華」という概念が否が応にも横たわっているのです。
同じ鍋というカテゴリーにいながら、すき焼きだけが特別な存在なのです。ちなみに余談ですが、僕が子どもの頃に食卓にすき焼きがのぼる時は、基本的には豚肉のすき焼きで、牛肉は5回に1回くらいでした。牛肉という概念が削がれるだけで、途端に大衆感が増すのですからすき焼きというのは不思議な料理ですね。
さて、そんなすき焼きですが、他の鍋と同様の問題が生じることがあります。それが「翌日の鍋」です。
鍋の底でクタクタのさらに向こう側へ行っているネギや牛肉の切れ端等、余っている具材に哀愁を感じ、色々な具材の旨味滲み出て艶に深みを増したスープに垂涎する。
あんなに幸福を与えてくれたのに、これを捨てるのは確実にもったいない…。
そんな時には、翌日に持ち越さず、夜の間にちょいちょいと仕込んでおくだけで翌日の朝食にもすき焼きの豪華な気分を味わえるアレンジレシピに。
前日に浸しておいて、朝は焼くだけなので簡単。甘辛ダレの卵液が極限に染み込んだパンがふわふわしっとり、すき焼きのあの甘辛いタレと卵、牛乳そしてバターの組み合わせが濃厚で華やかで香り高くて最高においしくて……朝からテンション上がりまくります(実体験)。
翌朝にまで幸福をもたらしてくれるすき焼きよ、ありがとう。
料理と笑いで天下を目指す男性ピン芸人。
埼玉県東松山市出身。東松山のやきとりを愛し、東松山市親善大使「東松山市應援團」の一員。食品衛生責任者の資格を持ち、クックパッドには1000以上のレシピをアップしている。日本テレビ系列『ウチのガヤがすみません!』などに出演。
>>オフィシャルブログ「良い香りのある生活」