お砂糖を使わずに作る「発酵あんこ」を知っていますか? “腸活”や“美腸”など、腸内環境に対しての意識が高まる中で、今発酵食品が注目されています。その中でも、簡単に作れて健康的な「発酵あんこ」がじわじわブームになっています。今回は、聞いたことはあるけど作り方やアレンジの仕方がわからないという方のために、発酵のプロである発酵家族さんに「発酵あんこ」についてのお話しを聞きました。
――クックパットの中で、発酵家族としてさまざまな発酵食のレシピをご紹介いただいていますが、発酵家族さんが発酵食品のレシピを掲載するようになった理由を教えてください。
「発酵家族」という名前には、子育てで忙しいお母さんたちのごはん作りを、発酵の力で楽にするという意味が込められています。私には3人の子どもがいるのですが、子育てをしていると、うまくいかないことがたくさんありますよね。お母さんたちはすごく頑張っているのに、うまくいかないことを自分のせいにして自己肯定感を下げてしまうんです。そんな中で、お母さんたちが自分を褒められるように自分で環境を整えることができるのが、日々のご飯作りなのかなと考えたんです。
――それが発酵食品につながるんですね。
もともと料理がうまい人であれば別かもしれませんが、夕ご飯を作るときって思考も体力も疲れ切っている時間ですよね。その中で食事の用意をすることがそもそもすごいことなのに、栄養バランスを考えたり、品数を考えたり、お母さんたちは大変です。そんな大変な食事作りを、発酵の力を使って楽にできたら良いなと思っているんです。発酵することで、より旨味が増すので味付けや調理時間が短くておいしくて健康的なものが作れます。私のレシピは、楽に褒められたいということがモットーなので、複雑な工程はなく、食材もスーパーで買えるものを使っているので、誰でもすぐにはじめられます。
――発酵家族さんは、“発酵のプロ”ということですが、何か資格などをお持ちなのでしょうか。
私は、東京農業大学の醸造科学科というところを卒業しています。そこは、発酵のメカニズムを勉強する学科です。発酵というと、発酵食品というイメージがあると思いますが、食品だけではないんです。例えば、生活排水をきれいにするのも、ワクチンを作るのにも発酵の力が使われているんです。大学では、排水がいかに発酵の力できれいになっていくか、どのように抗生物質が作られていくのかといったことも勉強してきました。
――なぜ、発酵を学ぼうと思われたんですか?
子どもの頃から発酵した香りが好きなんです。発酵した香りは独特。微生物が増えることで作られる香りは、良い香りだなぁと思って学びました。発酵食品を作っていると、発酵中の香りも楽しめるんです。すごく癒されるので、私にとってはアロマのような(笑)。
――じわじわとブームが来ている「発酵あんこ」ですが、普通のあんこと何が違うのでしょうか?
まず、甘さが違います。あんこは、小豆に砂糖をどれだけ入れたかで決まりますが、発酵あんこは、小豆と麹だけで作るので、小豆が持っている甘さを最大限に引き立てます。なので、発酵あんこのほうが優しい甘さを感じると思います。私が作る発酵あんこは、ブレンダーで潰すので粒感がないんです。こしあんとつぶあんの中間といった感じですね。
――一般的に、発酵あんこは潰して食べるのでしょうか。
一般的な発酵あんこは、小豆と麹の粒が目視でわかるものが多いと思います。我が家では、そのままの状態で出すと子どもたちが警戒して食べてくれないので、ブレンダーで潰しています。家族が食べてくれてなんぼなので、わからないように作ってお味噌汁に入れたりしています。
――発酵あんこの良いところを教えてください。
まず、血糖値が上がりにくいことです。食べた後もゆっくり血糖値を上げるので体に優しいんです。麹が作った酵素が腸内環境を整えてくれるので、腸活にもなりますね。
――気温が高い日も増えてきました。発酵あんこを作る際の注意点を教えてください。
発酵と腐敗って紙一重なんです。発酵食品を作る際には、ある程度の塩分、糖分、温度が大事。なんでも減塩にすれば良いというわけでもないし、常温にすれば良いというわけではないんです。
発酵あんこを作る際は、温度を60℃でキープしてください。できるだけ温度が下がるのは避けたいので、2時間に1度は温度を計り、60℃を下回らないように温め直してください。温度が高すぎても低すぎてもダメです。一定の温度をキープしないと、酸っぱくなったり苦くなったりします。
小豆(乾燥)…200g 米麹…200g 水…1リットル
1.小豆は洗って鍋に入れる 2.水を加え沸騰したら弱火。柔らかくなるまで煮る(約30分) 3.2を60℃以下まで冷まし米麹を加えて混ぜる 4.温度計を使って60℃に温める 5.鍋を毛布などでくるんで6時間保温する *途中1~2時間に1度温め直す 6.冷蔵庫に入れる
冷蔵庫で保存して、1週間以内に使い切るようにしてください。使い切れない場合は、冷凍保存をしてください。冷凍した状態のままいただくと、“発酵あんこのあずきバー”になり、とってもおいしいですよ。小豆は鉄分が多い食材です。昔は、毎月1日と15日は小豆ご飯を食べていたくらい女性は定期的に摂りたい食材です。
――発酵あんこを楽しむアレンジ方法を教えてください。
我が家では、お味噌汁に大さじ1〜2杯を入れて食べることが多いです。あとは、カレーにも入れます。子どもたちは多分気づいていないですね(笑)。
1.味噌こしに発酵あんこ(大さじ1)を入れて味噌汁に溶かす
そのほかのアレンジだと、子どもたちはゼリーの上のトッピングにしたり、きな粉をかけて食べています。最近話題の「あんバタートースト」もおいしいですよ。
1.トーストに発酵あんこ(適宜)とバター(10g)を乗せる
発酵あんこは、いろいろなアレンジができるし善玉菌も摂れます。小豆の皮には、食物繊維がいっぱい含まれているので、いろいろな料理にプラスアルファで使っても良いと思います。
(TEXT:上原かほり)
洗い物が嫌いな発酵料理研究家。元研究職という経験と醸造学で学んだ発酵食品の知識を活かして夫、娘2人、発達障害の息子のご飯作りをしている。発酵食品を活用して、ラクしておいしく作るレシピを日々研究中。
【instagram】@85kazoku
【HP】http://epoch-hakko.net/