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コラム

浪費を抑えるコツは◯◯にあり!2022年・年間ベストセラー第1位『三千円の使い方』の著者が語る"頑張りすぎない節約術"

東海テレビ・フジテレビ系全国ネットで放送中のドラマ「三千円の使い方」。ご覧になっているという方も多いのではないでしょうか。この物語のテーマは、「幸せになるお金の使い方教えます」。とっても気になる言葉ですよね。原作となる小説は2022年、年間ベストセラー文庫本第一位を獲得するほど注目されている作品。今回は、この物語の著者である原田ひ香さんにお話しを伺いました。

普通の人たちを描いた節約小説

――「三千円の使い方」を書こうと思ったきっかけはなんだったのですか?

小説は、どうしても不幸な人を描くことが多いんです。でも、主婦向けの雑誌を見ていると、かわいい子どもがいて、不満はあっても仲良しの旦那さんがいて、いろいろ問題を抱えながらも頑張って工夫しながら幸せに暮らしている人達がいることが見えてきました。そういう"普通の人たち"のことを描けないかなと思ったことがきっかけです。

――主婦向けの雑誌で見て、今回の作品に活かされているネタなどはありますか?

昔は、「年間で30万貯めよう!」「100万円貯めよう!」という特集が多かったんです。多くても300万円とかだったと思うのですが、ある時、「やっぱり、1000万円ほしい!」という特集を見つけて、「普通の主婦が年間に1000万円!?」と、すごく衝撃を受けました。それを人に話したら、私が受けた衝撃を理解してくれる人がいなくて(笑)。

――1000万円を貯める主婦の話っておもしろそうですよね。

私はもともと純文学を書いていたので、ただケチな女性が1000万円を貯めるために奮闘する話を書くのもおもしろいかな、と思っていたんです。ある時、編集さんたちと節約の話になり、「節約の小説を書いてみたい」と話したら、「良いですね!」となって、この作品を書くことが決まりました。老後の2000万円問題が話題になる少し前だったこともあり、老後の資金が気になるという人が増えてきたタイミングでもありました。なので、一人の女性がお金を貯めるというよりは、20代のOL、更年期を迎える女性、老後を過ごす女性を描きたいと考え、家族の話にしようということになりました。

自分から一番遠い存在を主人公に

――まさに、ライフステージが異なる人々が軸になり話が展開されていきますよね。美帆・真帆・琴子・智子それぞれが抱える悩みは何を参考にされたのでしょうか?

この物語の主人公は、貯金が30万円しかない20代のOL美帆です。保護犬を飼うために家がほしいというところから自分の生活を見直します。ダメダメな部分はあるけど、美帆は成長していける。彼女は、ある意味一番今の私から遠い存在なんです。私くらいの年齢になると、欲しいものなんてそうないけど、そんな私も20代の頃は、雑誌の発売日には掲載されている商品をチェックしてお店に電話をかけていました。物欲が有り余っていたんですよね、当時は。そういう気持ちや思い出を込めて美帆というキャラクターを作りました。

――原田さんの20代の頃の経験が、美帆というキャラクターに活かされているんですね。

東京・紀尾井町のフェラガモの電話番号を暗記していたんですよ、私(笑)。今ならネットで調べて買えるから時代も変わりましたよね。一番遠い存在の美帆に比べて、おばあちゃんの琴子は、今の私の延長線上に存在する人です。老後のやりくりや、やりがいの見つけ方。あと、日本で古くから続いている家計簿についても書きたかったので、琴子というキャラクターができました。 真帆は、まさに1000万円を貯めることを目標にしている主婦。そして、美帆と真帆の親である智子は、更年期や熟年離婚について悩む人が多い世代。見る方に刺さるところが違うようです。面白いのは、決して自分と同じ世代のキャラクターが刺さるわけではないところです。

――小説のタイトルに、なぜ「三千円」という金額を選んだのでしょうか?

1000円でも良いかなと思ったのですが、今って、1000円では映画も観られないんですよね。単行本も1000円では買えないし……。例えば、単行本を買ってプラス何か、映画を見てプラスなにかができる金額がちょうど"三千円"くらいなんです。そのくらいの金額を何にどう使うかが、これからの人生を決めていくという意味を込めて"三千円"にしました。

調理器具はクーポンを貯めてゲット!

――智子が節約のために食材を下ごしらえするシーンや、真帆が豆腐ハンバーグを作るシーンなど、節約を意識した料理のシーンが出てきますが、原田さん自身は普段料理をされますか?節約を意識した料理の話を色々とお聞かせください。

真帆が夫の給料日に作る豆腐ハンバーグは、私が昔から作っているものです。豆腐と合い挽き肉を同量混ぜて、そこにコーンを入れるんです。大学時代のアルバイト仲間に教えてもらってから、私のハンバーグはずっとこのレシピです。チーズを乗せて豪華にしたり、100円ショップで買えるハヤシライスをデミグラスソース代わりに使ったり。ケチャップとソースを混ぜたものも好きなんですけど、ちょっと良い感じに仕上げたいときはレトルトのハヤシライスを使います。

――豆腐ハンバーグ、すごくおいしそうです。100円ショップのハヤシライスもすごいアイデアです!

最近はやめたのですが、以前はむね肉を自分で挽いて挽き肉を作っていました。挽くときに使うフードプロセッサーはポイントを貯めて貰ったものです(笑)。小分けにして冷凍していたこともありますが、数年前から普通に買うことにしました。挽き肉にすると20〜30円高くなるんですけど、挽いた後の掃除が面倒で……。

――フードプロセッサーのように活用していて、節約につながる調理器具はありますか?

ホームベーカリーはすごく活用しています。ホームベーカリーもポイントで貰ったんです(笑)。最近は、小麦粉の高騰でパンも買うと高いですよね。私は、食パンなんだけどフランスパンのような仕上がりが好みなんです。クックパッドには、簡単に作れるものから本格的なものまでたくさんレシピが載っていて、すごく助かっているんです。焼きたてのパンを食べると、おいしくてすごく贅沢な気分になります。でも、計算すると、1斤100円以下でできますよ。

――使う器具も全て上手にゲットされているんですね。

実は最近、親戚から炊飯器を貰いました。20年くらい土鍋で米を焚いていたので炊飯器を持っていなかったんです。場所も取るしなぁと思いながらも、炊飯器調理というものに興味があったので、貰ったその日からいろいろなものを作っています。テレビで、「ご飯が炊けるまでの43分間におかずを作る」というのを見て真似してみたりもしました(笑)。年齢的にも少し疲れていたのかもしれません。使う道具が変わると、食事も変わって楽しいという発見をしました。

生活を整えれば浪費は減る

――本書を通して、読者に強く伝えたいことを教えてください。

小説を読んだりドラマを見た方から、参考にしたいと言っていただくことが多いのですが、そんなに頑張る必要はないんじゃないかなとも思うんです。節約や投資を考えてみようと思ったとか、家計簿をつけてみようと思ったという声をいただくこともありますが、逆に、本は好きだけど節約のためにこんなことできないという方もいらっしゃいます。小説として読んでいただいて、取り入れられそうなことは取り入れてもらえたらいいし、できない方は今のままでいい。それもあなたの物語だと思います。

――最後に、クックパッドニュース読者にメッセージをお願いします。

クックパッドを愛用したり、レシピをアップされている方は、すでに生活もきちっとしてる方だと思います。その延長線上で節約をしたり、生活が整っていれば未来明るいですよね。 たまたま読んでいた本に、お金を使っちゃう人達のカリキュラムが載っていたのですが、お金を貯める、節約するというのは、生活を整えるところからはじまるらしいんです。つまり、生活が整っていたら浪費が抑えられるという話だったのですが、クックパッドユーザーのみなさまは、すでにそれができていると思います。なので、あまり将来を悲観せずに、ぜひ楽しく生きていってほしいなと思います。

(TEXT:上原かほり)

メイン画像提供:Adobe Stock

三千円の使いかた』(中央公論新社

「この本は死ぬまで本棚の片隅に置いておき、自分を見失うたびに再び手に取る。そういった価値のある本です」

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?知識が深まり、絶対「元」もとれちゃう「節約」家族小説!

原田ひ香(はらだひか)

撮影:喜多剛士
1970年神奈川県生まれ。2006年「リトルプリンセス二号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。

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