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コラム

料理は人と人をつなぐ、言葉じゃない“コミュニケーション”【あのひとの「思い出レシピ」/太賀&吉田 羊】

今話題の“あのひと”に、印象深い料理の思い出についてインタビュー。今回は、2018年11月16日(金)公開の映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』に出演している、太賀さんと吉田 羊さんにお話を伺いました。小説家・歌川たいじさん自身の壮絶な母子関係を描いた本作の中で、太賀さんは青年・タイジを、そしてその母・光子を吉田さんが演じています。劇中には母子をつなぐ大事なアイテムとして「まぜご飯」が何度も登場。そこでお2人にも「料理」や「自身の思い出の味」についてお話を聞いてみました。

「生きること」は、「食べること」だと思う

――映画に出てくる「まぜご飯」はタイジにとって“母との思い出の味”ですが、お2人にとっての“思い出の味”とは何ですか?

太賀 僕は、オカンに作ってもらった「トマトとチキンを煮込んだスープ」ですね。母に「いつものお願い」と言うと、毎回作ってくれます。それを初めて食べたのは、僕が体調を崩した時でした。オカンが家にあった野菜をたくさん入れて作ってくれたんです。普段からオカンの作る料理は何でも好きなんですけど、そのスープは特別おいしく感じて。それ以来、僕の好物になりました。今も実家に帰ると必ず食べています。

吉田 羊(以下、吉田) 私は小さい頃から「母が作るミートソースパスタ」が大好きで、お誕生日や人生の節目の時には必ず作ってもらっていました。大人になってから自分でも作ってみようと思って、母に「あのミートソースってどうやって作るの?」ってレシピを聞いてみたんですけど、母は目分量で作っていたみたいで(笑)。唯一わかったのは、和風だしを使っていること。てっきりチキンブイヨンやコンソメなどの洋風だしを入れていると思っていたので、それを知った時は衝撃でした。

――映画で登場する「まぜご飯」を食べた時の感想や、撮影時の印象深いエピソードがあれば教えてください。

吉田 劇中に登場する「まぜご飯」は、原作者の歌川さんご本人が作ってくださったものなんです。だから、「まぜご飯」をぶちまけるシーンは本当に心が痛みましたね。誰かが自分のために作ってくれたものって特別だから、何でこんなことをするのだろうという思いでいっぱいでした。

そのことも含め、今回私が演じている光子に対しては理解できないことが多くて……。唯一、彼女に共感できることがあるとしたら、ご飯を作り続けたこと。「生きること」って「食べること」だと思うので、ご飯を作っていたということは“息子を生き続けさせたい”という思いはあったのかなと、「まぜご飯」のエピソードを通じて感じました。

太賀 タイジは、お母さんの愛を取り戻したい一心で、母との思い出の味「まぜご飯」を自分で作るんですよ。料理で、言葉ではないコミュニケーションをお母さんと取っていたというか、近くにいなくてもその“味”でお母さんを感じていたのだと思います。

だから、実際に現場で歌川さんご本人が作った「まぜご飯」を食べた時は、特別な感情が湧いてきましたし、よりおいしく感じました。そこで感じた気持ちは、演じる上でも大事にしたいと思いました。

「自分だけで頑張らなくていいんだ」と思ってほしい

――吉田さんは普段からよく料理をされるんですか?

吉田 家にいる時はしていますね。最近は「アクアパッツア」をよく作っています。そう言うと、みなさんに「すごい」とか「おしゃれ」と言われるんですけど、アクアパッツァって実はものすごく簡単なんですよ。煮魚の上にハーブをかけるだけで、作れちゃうんです。フランスで買った“プロヴァンスハーブ”をかけて食べたらとってもおいしくて! それ以来、アクアパッツアにはまっています。

――太賀さんもご自身で料理をされたりしますか?

太賀 いや、もう僕は本当に料理の経験がなくて……。一人暮らしを始めて2年経ちますが、まだ家に鍋も包丁もお皿もないんです。あっ! でも、この映画のクランクイン前に「まぜご飯」は作りました。母にアドバイスをもらいながら作ってみたんですが、なにせ初めて料理をしたもので……。歌川さんが作ってくださった「まぜご飯」とは比べ物になりませんでした(笑)。

――最後に、子育て世代の女性読者たちへ映画の見どころについて一言お願いします。

吉田 読んでくださっている人の中には、私が演じた光子のように、妻として、母として、女性としてこうあるべきということに縛られて生きている人もいると思うんです。でも、その答えはそれぞれの家庭の中にあって、家族と一緒にしか見つけられないから、自分の信じた道を、自分の信じた家庭を焦らず作っていってほしいです。そして、この映画を見て「自分だけで頑張らなくていいんだ」と思ってもらえたらいいですね。

太賀 この映画は、母と子のズレや衝突を描いていますが、最終的にはそれを乗り越えていく愛の物語になっています。親子関係に悩んでいる方がこの作品を見て、少しでも何かを感じていただけたら嬉しいです。

(TEXT:河野 友美子)

映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』2018年11月16日(金)公開

■ストーリー:タイジ(太賀)は幼い頃から美しい母・光子(吉田羊)のことが大好きだった。だが、家にいる光子はいつも情緒不安定で、タイジの行動にイラつき、容赦なく手を上げる母親だった。17歳になったタイジは、ある日光子から酷い暴力を受けたことをきっかけに、家を出て1人で生きていく決意をする。努力を重ね、一流企業の営業職に就いたタイジは、幼い頃の体験のせいで、どこか卑屈で自分の殻に閉じこもった大人になっていた。しかし、かけがえのない友人たちの言葉に心を動かされ、再び母と向き合い始めた。
■出演:太賀、吉田 羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野 花 ほか
■監督: 御法川 修
■公式サイト:http://hahaboku-movie.jp/

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