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コラム

11月中旬に食べたい!良縁&夫婦円満を招く開運スイーツ「出雲ぜんざい」【ニッポン全国「和食探訪」の旅 vol.1】

東京すし和食調理専門学校の学校長・渡辺勝さんが、日本各地を旅してお届けする「和食探訪」連載。知られざる和食の起源や、絶滅寸前の郷土料理などにフォーカスし、素敵なエピソードの数々をご紹介します。

奥深い「和食」の世界

こんにちは。「東京すし和食調理専門学校」の学校長、渡辺勝です。私は休みの度にあちこちへ和食探訪の旅に出かけ、家を空けてばかりいます(笑)。

和食って、とにかく素晴らしいのですよ。健康に良いことはもちろん、伝統や神事などに関連するから縁起が良くて御利益がある。

この連載では、日本各地を旅して発掘した知られざる和食や、絶滅寸前の郷土料理のおいしさ、すばらしさをお伝えしていきたいと思っています。

まずは、出雲の旅からご紹介していきましょう。連載第1回目にお届けするのは、出雲のおいしい“甘味”です。

出雲は「ぜんざい」のふるさと

出雲に着いて、早速足を運んだのは出雲大社。縁結びのお守りや御朱印目当てじゃありませんよ。私のお目当てはもちろん和食、「ぜんざい」です。

出雲大社前の参道には、ぜんざいを出すお店が何軒もあるのです。駅から出雲大社までの道、神門通りを歩いて行くと、山を背景に立つ大鳥居が近づいてきます。道の両側には、ぜんざい、出雲蕎麦、またぜんざい……と、のぼりや看板が並んでいます。

まずは1軒目、「日本ぜんざい学会壱号店」。ここは古民家を改装した木造の建物で、風情がたっぷり。神門通りの落ち着いた雰囲気に溶け込んでいます。

紅白1個ずつの白玉澄んだ汁粉……お餅のぜんざいと比べてボリューム控えめで、たくさん食べられない人にもおすすめ。お漬物も添えられていて、塩辛さで甘さが引き立ちます。甘さは控えめで何杯でもいけそう! 

お代わりしたいところを我慢して、2軒目は鳥居の向かいの「出雲ぜんざい餅」へ。こちらでは、紅白のお餅を入れた出雲ぜんざいをいただきました。

ふむふむ、豆を大事にしているぜんざいですね。大粒の小豆がふっくらとおいしい。さらに、この日は暑かったので、かき氷と紅白の白玉を入れた、冷やしぜんざいをいただいてみました。……よくそんなに食べられるって? だっておいしいんです。

甘味処は昔から、お参りする人の長旅の疲れを癒してくれる、ありがたーい場所。神様のパワーをいただいて、寿命が伸びた気分です。

出雲ぜんざいは、汁は小豆を甘く茹でて、透明な上澄みが出るような小豆汁で、さっぱりしています。何といっても、出雲ぜんざいがほかと違うのは、小豆汁の上にポッカリと、お餅または白玉が浮かんでいるところ。それも紅白で2つ浮かんでいる。可愛らしいです。

もちろん、これは仲睦まじい男性と女性をイメージしているんです。ホッコリ、ニコニコしながら、おいしく食べられること請け合いですよ。

日本ぜんざい学会壱号店には、焼いて焦げのあるお餅を使い、それを2つくっつけた「縁結びぜんざい」もありました。「やきもちをやいてもくっついている2人」という意味で、験を担いでいるんだそうです。シャレが利いていますね!

10〜11月はさらに良縁パワーがアップ!

ところで、なぜ出雲大社でぜんざいなのか。皆さんは、ぜんざいの起源をご存知ですか?

ぜんざいの起源、それは出雲地方の「神在餅(じんざいもち)」にあるのです。これが島根のなまりで、「ずんざい」、さらに「ぜんざい」になったのです。

旧暦の10月は一般的に神無月(かんなづき)と呼ばれますが、出雲地方では神在月(かみありづき)と呼ばれています。旧暦10月11日~26日(新暦11月中旬)に全国の神様が出雲に集まるため、全国では「神が無い」月の神無月になり、出雲だけが「神が(いっぱい)在る」月になるんですね。全国の神様が出雲で一堂に会する季節。神様のサミットですね。

ですから、11月中旬のこの時期に神在(ぜんざい)を食べると、神様の御利益パワーも最強になり、良縁を結ぶ効果が高いのです。10~11月の出雲と松江は、婚活中の方には必訪の場所と断言します!(笑)

この土地には、出雲大社以外にも「縁結び・良縁」にご利益のある神社は、たくさんありますから、皆さんもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

例えば美保神社の一番のご利益は「商売繁盛」ですが、祀られている神様は、出雲大社の妻と子なのです。だから出雲大社と両参りがおすすめ。縁結びのご利益がさらに増すと言われています。

また、八重垣神社は須佐之男命(スサノオノミコト)と、その妻の稲田姫命(イナダヒメノミコト)を祀る神社で、「日本の結婚式発祥の地」と言われています。敷地の奥にある鏡池の良縁占いも有名です。そして神魂神社は、有名なイザナギノミコトと、その妻の女神イザナミノミコトを祀っていて、両者は仲睦まじいと伝えられています。

縁結びと並んで、「夫婦円満」のご利益もありますから、ご夫婦やカップルでのご旅行にもおすすめですよ。ご一緒に各所のぜんざいも味わってみてくださいね。

神在祭に合わせて自宅で本場の「神在餅」を 

今の時期、出雲地方で高まっている良縁と、夫婦円満のパワー。これにあやかって、ご自宅でも出雲風のぜんざいを作って、幸せを願ってはいかがでしょうか? 

汁粉は、市販の「ゆであずき缶」を使うのが便利。水を加えて濃度を調整し、できれば上澄みができるくらいにしてみてください。調理のポイントは、本場出雲の神在餅は餡の上に餅をのせること(餅がはっきりと見える)。関東風のぜんざいは、餅の上から餡をかけているため、餡の中に餅を沈めないようにしてください。

特に良縁や夫婦円満を願うなら、紅白の餅を使うのもいいでしょう。米粉をつかった白玉でもOKです。紅玉は、食紅または紅生姜の汁を使用して着色するといいですよ。思い切ってハート形の神在餅を作れば、ご利益倍増(?)かもしれません。

出雲が「縁結び」の土地柄である理由

さて、結びにうんちくを一つ。出雲大社には、なぜ「縁結び」のご利益があると言われるか、ご存じでしょうか? それは「出雲族」と関係しています。

出雲族は、かつては日本国中に分布した、日本の先住民族でした。この出雲族が日本中を支配していた時代、各地の出雲族のリーダーである豪族が、年に1回、貢物を手にして、10月に出雲に集まりました。

その時に豪族たちは、息子や娘たちを結婚させる、縁結びの話し合いをしました。これを神議(かみはかり)と言います。戦国時代などと同じく、国と国の結びつきを深めるための政略結婚ですね。この伝説が、出雲大社が良縁を司るという、言い伝えの原点になっていると言われています。

和食に歴史や謂れあり。ぜんざいにも歴史とロマンあり。古代の豪族たちも、ぜんざいを食べたのかな。想像すれば、ますます味わい深いのではないでしょうか?

出雲の旅は続きます。次回は出雲の蕎麦のお話です。独特の「釜揚げ蕎麦」とは? 年越し蕎麦のアイデア探しにも必読です。お楽しみに!

渡辺 勝

東京すし和食調理専門学校の学校長。度重なる海外出張で日本の良さや和食のおいしさに気付く。趣味は旅行と食べ歩き。近年、郷土料理の素晴らしさに目覚め、日本の宝である『郷土料理』を世に広める使命を個人的に請け負っている。

東京すし和食調理専門学校

日本で唯一のすしと和食を学ぶ調理専門学校。2016年4月に東京都世田谷区に開校。海外からの留学生も多数在籍。校舎1階のカウンターにて学生によるすし懐石料理店「一膳」を定期的に営業。卒業生はすしや和食の専門店や旅館、海外のホテル内和食店などで活躍中。

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