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コラム

女子高生が食品ロス問題の専門家に聞いてみた。「食べ物のゴミを減らすには?」

恵方巻の廃棄のニュース等でたびたび話題になる「食品ロス」。企業の問題かと思いきや、実は家庭からでる量が全体の46%と言われています。とはいえ、個人で対策できることがわからない……そもそも何でダメなの?という素朴な疑問を、食品ロス削減活動をする女子高校生・加藤愛子さんが、食品ロス問題の専門家・井出留美さんに聞いてみました!

「食品ロス」って結局何が悪いのか?

加藤愛子さん(以下、加藤):食べ物を捨てるのは良くないことだという認識は広まっていますが、食品ロスの何が具体的に問題なのかを改めて教えてください。

井出留美さん(以下、井出):おうちの方は、家族のための食事を用意するときに人数分の食事を用意しますよね? 4人家族のために10人分、20人分の食事を用意することはありますか?

加藤:いいえ。4人分作ります。

井出:そうですよね。今まさに地球では、食べきれない量の食品が作られています。ところが、世界には十分な食事ができていない人が約8億人いると言われています。あるところでは、余って捨てている食べ物があり、あるところでは足りていないんです。

加藤:もう少し詳しくお伺いできますか?

井出:ゴミの量を減らすリデュース(Reduce)、捨てずに誰かにシェアするリユース(Reuse)、ゴミを堆肥に変えるコンポストなどのリサイクル(Recycle)、全てが「RE」が始まるこの3つの単語を「3R」(スリーアール)と呼びます。リデュースが一番大事で、この3つをうまく回すことが理想的なんですが、うまく回っていないんです。資源を使いすぎて地球が1つでは足りない状態になっているんです。

すでに地球が4つから5つ必要な状態になってしまっているそう

加藤:もし、このまま食品ロス問題に取り組まなかったら…。

井出:すでに地球は危機的状況です。生ゴミは燃やせばいいと考える方も多いと思うのですが、生ゴミの重さの80%は水分と言われていて、とっても燃えにくいんです。じゃあ埋めれば良いのかと思いきや、埋めるとメタンガスが発生してしまいます。

加藤:メタンガスは二酸化炭素よりもたしか27倍くらいの温室効果があるって学びました。

井出:そうそう! 当たりです! FAO(国連食糧農業機関)のレポートだと二酸化炭素の25〜30倍あるって言われているんです。その影響もあって、北極や南極の氷が解け始めていて、地球の温暖化が進んでいます。気温が1℃上がることで水蒸気が増えます。最近日本でも大雨被害が増えていますよね。このまま放っておくと、どんどん地球が暮らしにくくなってしまうんです。

日本の家庭ゴミを減らすには?

加藤:その取り組みの一つとして食品ロスを減らすというのがあると思うのですが、日本の食品ロスのうちの約半分は家庭から出ていますよね。

井出:はい。その原因は大きく分けて3つあります。1つ目は食べられる部分を捨ててしまっている過剰除去。2つ目は、食べきれなかったものを捨ててしまう直接廃棄。3つ目は作り過ぎなどによる食べ残しです。

加藤:私たちも野菜などの皮を有効活用するコンテストを現在開催していますが、実際、過剰除去で多く捨てられるものはどんなものなんですか?

井出:家庭から捨てられる食品で多いのは野菜なんです。2020年5月に発表されたハウス食品グループ本社の食品ロス調査では、最も廃棄されているのがきゅうりでした。次いで調味料も多いんですよ。

加藤:きゅうりですか!? 意外です。

井出:きゅうりは傷みやすいというのが廃棄される理由だと思うのですが、きゅうりの半干しというレシピを作ってみたらすごくおいしかったんです。干すことで噛みごたえが出て、ごま油とお酢、だし醤油に漬けておいたら、おつまみにもおかずにもなる1品ができました。調味料も同じで、使い方を絞ってしまうと余らせてしまうので、多様に使える方法を知ることで使い切りができるようになると思います。

トマトケチャップは水で薄めると味噌汁にも合うとのこと

加藤:無駄なく料理をしていく以外に、ゴミを減らしていくよい方法はどんなものがあるのでしょうか?

井出:私は、2017年から、食べ物のゴミが出たら専用の乾燥機で乾かしてからコンポストに入れています。生ゴミの80%は水分だと言われています。私もゴミの総量を平均60%減らすことができました

加藤:60%も! それはすごいですね。そのほかにも何かゴミを減らす方法があれば教えてください。

井出:玉ねぎの皮や野菜の固い部分などは、破棄せず袋に入れて冷凍庫に貯めておきます。ある程度の量が溜まったら、煮込んでベジブロス(野菜の出汁)を作ります。それを使ってリゾットやスープを作ると奥深い味になるんです。煮込んだ野菜をこした後は、乾かしてコンポストに入れます。ぜひ試してみてください。

加藤:やってみます! 

ヨーロッパでは「ゴミをゴミにしていない」

加藤:日本に比べて、ヨーロッパはフードロス政策が進んでいると聞いています。また、わたしが留学していたニュージーランドでは、国民一人ひとりの食品ロスへの意識が高く、日本との違いに驚きました。井出さんは、その違いはどこから来ていると思いますか?

井出:実際にヨーロッパの政策を見て感じたのは、「ゴミをゴミにしていない」ということです。日本は食べ物ゴミとその他のゴミが一緒に捨てられますよね。でもヨーロッパでは「オーガニック」と言って、食べ物ゴミや落ち葉を分けて回収するんです。コーヒー豆やリンゴの芯、落ち葉や枝、それらはゴミではなく資源として活用されます。オランダでは電力にしたり、スウェーデンではバイオ・バス(バイオガスで走るバス)のエネルギーになったりします。

加藤:なぜ、日本ではそういう政策ができないのでしょうか。

井出:日本は、ゴミは燃やせばすむという考え方があるように感じます。「食品リサイクル法」という法律では、できるだけ資源・廃棄物を分別回収し、再利用しようとされていますが、私はリデュース法としたほうが良いと感じているんです。燃やせば済む、リサイクルしておけばOKという流れが、日本の食品ロスが改善されない一因になっているような気がします。

京都では20年でゴミの量が半減!?

加藤:そんな中でも、徳島や京都では食品ロスの削減に成功していますよね。詳しく事例をお伺いできますか?

井出:徳島県の上勝町は、ゴミを13品目45分別してリサイクル率81%を達成しています。同じ人口の別の町と比べるとゴミの量自体が少ないわけではないのですが、リサイクル率81%はすごいですよね。食品ロスの削減という意味では京都市の「しまつのこころ条例」により、ゴミを半分にしましょうという取り組みによって、2000年に年間82万トンだったゴミが40万トン強まで減っています。ゴミ半減プランを20年かけてやってきたんです。

加藤:京都市がその条例で成功できた秘訣は何ですか?

井出:京都市は、ゴミを学ぶ小学校4年生に食品ロスの下敷きを配っています。飲食店では食べ残しゼロを推進店舗という認証制度を作って800店舗以上が加盟しています。京都市はいろんな社会実験をやっています。幹事さんが「残さないように」と声をかけたときと、何も言わなかったときの食べ残しの量の違いについて実験をしたり、スーパーで賞味期限、消費期限の手前の販売期限で撤去する商品をぎりぎりまで売ると食品ロスが10%減り、売上が5.7%が伸びたという実験結果が出たりしています。なかなか熱心な自治体です。

売り切れや品切れを許さない風潮が「食品廃棄」を生む

加藤:食品廃棄の改善のために、商品の賞味期限を延ばした食品メーカーもありますよね。消費者からすると食中毒リスクなど衛生面が気になる方もいそうです。

井出:賞味期限は「おいしさの期限」なので大丈夫です。

加藤:賞味期限は、食べられる期間の中でどのくらい短く設定されているものなんですか?

井出:例えば10カ月はおいしく食べられるカップラーメンがあるとします。味は変わらないけどネギが変色してしまう。そういった条件やリスクを予測し、1未満の安全係数を使って賞味期限を設定します。国は0.8以上を推奨していますから、2割以上短く設定されることが多いです。

加藤:3分の1ルールというのも聞いたことがあるのですが、詳しく教えてください。

井出:賞味期限が6カ月の商品だとすると、その3分の1にあたる最初の2カ月のうちに小売店に納品するというルールがあるんです。それ以上のものは、納品を拒否されてしまいます。その理由は、新鮮なものを売りたい、賞味期限ギリギリのものを並べたくないからです。次の3分の2(4カ月)で、販売期限が切れます。すると商品は棚から撤去されます。日本では、スーパーやコンビニはこのルールのもと商品が並びますが、法律ではないんです。

加藤:なぜ、そのようなルールができているのでしょうか。

井出:売り切れや品切れを決して許さない風潮があるからです。地方のスーパーなどで欠品OKとしているお店もありますが、大手のスーパーでは難しいみたいです。

冷蔵庫の整理が「食品ロス」の軽減につながる

加藤:食品ロスを減らすために、今日からでもすぐにチャレンジできることは何かありますか? 気軽に続けられることを教えていただきたいです。

井出:冷蔵庫をスッキリさせるということです。冷蔵庫がパンパンに詰まっていると、何がいつまで食べられるかもわからないので、食品ロスが起きるんですよね。

加藤:冷蔵庫をパンパンにしないために、買い物の際に気をつけるべきことを教えてください。

井出:まず、買い物に行く前に、冷蔵庫、食品庫に何があるかを確認し、その中から何を作るかを考えることが大事です。最近は新型コロナウイルスの影響で買い物にもなかなか行けないことがあり、あるものから作るということがイギリスやオーストラリアでも増えています。無駄なく使い切っているという自信がつくと、気持ちがいいものですよ。

加藤:無駄な買い物が減ると、節約にもなりそうですよね!

井出:そうですね。食品ロスを意識して、日本の政令都市で一番家庭ゴミが少ない京都市ですら、1世帯当たり年間に6万円の食品を捨てていると言われています。ということは、意識していない場合はそれ以上に捨てているはず。捨てる食品を減らせれば、年間数万円の節約につながるということになりますよね。

加藤:今後、井出さんは「食品ロス」の問題をどんな人に伝えていきたいと考えていらっしゃいますか?

井出:小・中学生に伝えていきたいです。私の新しい本『捨てられる食べものたち』(旬報社)には、すべての漢字にルビをふり、子どもでも読めるように作りました。給食を残さない活動をしてきた北海道の高校生の男の子や、私の講演を聞いて食品ロスに関心を持ってくれ、論文を書いて賞を取った女子高生もいます。実行力のある若い人たちがたくさんいるんです。加藤さんもそのお一人ですよね。そういう世代の人たちにもっと知ってもらえる機会を増やしたいと思っています。

加藤:たくさんのヒントをありがとうございました! 私のこれからの活動に活かしていきたいと思います!

(TEXT:上原かほり)

井出留美さん 食品ロス問題専門家/ジャーナリスト


office 3.11代表。奈良女子大学食物学科卒。
博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等を経て独立。日本初のフードバンクの広報を委託されるなど食品ロス問題に取り組み、「食品ロス削減推進法」成立にも協力。第2回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞、Yahooニュース個人オーサーアワード2018受賞。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎)、『食品ロスをなくしたら1か月5000円の得』(マガジンハウス)、『捨てられる食べものたち』(旬報社)ほか。

加藤愛子さん


都内の高校に通う16歳。中学3年生のときにフードロスの教材の翻訳を担当したことをきっかけに興味を持つ。高校1年生でのニュージーランドへの留学中、現地のチャリティー機関へのボランティアを経験し、帰国後にクリエイティブクッキングバトルを在校生向けに開催。最近では中高生から大学生まで計14名と共に、コロナ下で発生する食品ロスを啓発するメッセージ動画の企画等の活動も行った。また、現在開催中の食品ロスを楽しく解消する料理動画投稿コンテスト『クリエイティブ・クッキングバトル・オンライン “KAWA”』の実行委員長も務めている。

●食品ロスを楽しく解消する料理動画投稿コンテスト「クリエイティブ・クッキングバトル・オンライン “KAWA”」開催中

『クリエイティブ・クッキングバトル』とは、「アリモノからおいしい料理を作ることは、生活の中で最もクリエイティブな行為である」を合言葉に、残り食材を工夫して自由に料理する能力に焦点を当てた、エンターテイメント型フードロス解消イベントです。

今年のイベントは『クリエイティブ・クッキングバトル・オンライン “KAWA”』と題し、オンラインにて開催中。今回インタビューをしてくれた女子高生の加藤さんは、本イベントの実行委員長を務めています。

野菜や果物などの食材の「皮」を活用した、これまでにないクリエイティブな料理を作る様子を撮影した3分動画を投稿する本イベント。ぜひ奮ってご参加ください!

>>特設ページはこちら

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