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コラム

これなら私たちもできるかも!南極シェフ・渡貫淳子さんが教える「ゴミを出さない」献立術

南極地域観測隊の調理隊員として約1年半、南極・昭和基地で生活をしていた渡貫淳子さん。あの話題の「悪魔のおにぎり」の考案者でもある彼女に、南極での食事や「食品ロスの問題」について聞いてみました。私たちが今「食品ロス」のためにできることは何か、渡貫さんが実践している対策法などもご紹介します。

南極に行って世界が変わった!?

――食品ロス問題に興味を持ったきっかけを教えてください。

お恥ずかしい話ですが、飲食の仕事をしていたにもかかわらず、食品ロスに関して重きをおくようになったのは南極に行ってからでした。それまでは日常的に廃棄もしていましたし、もったいないと思いつつも安全上やむを得ず「捨てる」という思考回路になっていたんです。それが、約1年半南極で生活をしたことで変わりました。

――どのように変わりましたか?

自分でも驚いたのですが、帰国後、夕方のスーパーで売れ残った山積みの総菜を見て泣いてしまったんです(苦笑)。南極に行く前はそれらが廃棄されることを普通に受け入れられていたのに…。それくらい南極での経験は自分の中で大きなものでした。

――南極ではどのような生活をしていたんですか?

南極はゴミの廃棄にルールがあり、自分たちで出したゴミは一緒に日本に持って帰らなければいけません。焼却炉で燃やせるものは燃やし、生ごみ処理機でできる限り処理をして、灰になったものをドラム缶に詰めるんです。それらのゴミと一緒に帰国をするので、ゴミの総量を減らさなければいけない。そのため、梱包材も含めて、持っていく前からできるだけゴミの少ないものを選ぶことを意識しました。

――ゴミを減らすために具体的に何をしていましたか?

最も意識したのは排水ですね。日本だったら飲み干せなかったラーメンの汁はシンクに流し捨てますが、南極ではそれができません。なので、固形の生ごみよりも液体の生ごみに悩まされていました。いかに鍋の中の残り汁を出さないように料理をするか、もし料理の煮汁やだし汁が余ったら、それをいかに次の料理に変えるかを考えました。

――例えばどんな料理に?

うどんを作ったときのスープで煮物を作りました。うどん汁に煮物になりそうな具材とお麩を入れて作るんです。そうするとお麩が鍋の液体を吸ってくれて、鍋の中には液体がなくなるんですよ。それで今度はその煮物が余ってしまったら、刻んでごはんと一緒に炊き込みご飯にします。「悪魔のおにぎり」もそのようにして残ったものをムダにしないために生まれました。

隊員大絶賛のカレー!その中身とは…?

――隊員の皆さんに評判のよかった料理はありますか?

毎週金曜日はカレーの日と決まっていて、その日はご飯の量が2倍でしたね。しかも、カレーのおかげで食品ロスはかなり減らせました。余ったさばの味噌煮の汁を入れたり、チキンを焼いたときの焼き汁、そのほかにも何か茹でたときの汁みたいなものもまとめてカレーに入れて、とにかく使えそうな余り物は一緒に煮込んでいました。
それがとても好評で、隊員のみんなも「あのときのカレーがおいしかった」と言ってくれるのですが、いろいろ入れていたので、何が味の決め手になったのかわからなくて…(苦笑)。同じ味が作れないのが残念です。皆さんのご家庭も2週間に1回くらいカレーの日があるといいかもしれません。いろいろなものが消費できますよ。

――そのほか、私たちが家庭でできそうな食品ロス対策はありますか?

どうしても食品ロス問題がどこか遠い話のように感じるのは、ふだん自分が出しているゴミの総量がわかっていないからだと思います。先程もお話したとおり、南極ではゴミの量が可視化されているので、減らす努力ができるんですね。

といっても、日本で南極のような生活はできないので、そこで私が行ったのは「ゴミ袋のサイズをあえて小さくする」こと。袋に入る量が少ないと無意識に出すごみを少なくしようとします。最初のうちは大変かもしれませんが、きっと1か月も経つと慣れてきますよ。そうやって習慣化していくことが大事だと思います。

食品をムダにしない献立術

――ゴミを減らすという点では、食材の使い方も大事になってくるのではないかと思います。ふだん、渡貫さんはどのように献立を立てていますか?

まず、冷蔵庫の中を見て、そこにあるもので作れる料理をメモします。それプラス、材料の有無やジャンルにかかわらず自分が作ってみたいものを書きます。それで1枚の「献立メモ」を完成させるんです。何枚もあると管理できないので、1枚に大体3日分くらいの献立を書き込みます。

これを1つずつ消していくのが好きなんです。そうすると、だいたい冷蔵庫の中にあるものが2週間でリセットされて、入れ替わるようになっています。冷蔵庫の隅でいつか使うかもしれないと思っていたものや眠っていた乾物などもムダにせずに消費できますし、冷蔵庫の中のものを把握することで、「あと1品ほしいな」と思うときもすぐに用意することができます。「あと1品足りないから食材を買いに行こう」ではなく、「あと1品足りないから冷蔵庫にあるものでなんとかしよう」と考え方を変えることで、食品のムダはなくなっていくと思います。

――買い物はどのようにしているのですか?

先程のメモをもとに、「自分が作ってみたいもの」に必要な材料を買います。そのときに、例えばオクラやホウレン草、いんげん、小松菜、プチトマトなどの分けられる食材はあえて1度に使い切りません。2~3本ストックしておきます。その残ったものでさらに1品、何が作れるかを考えます。本来作るもので使った食材を使い切らずにまとめておくと、それで炒め物やスープなどが作れるので、献立も立てやすくなりますよ。
冷蔵庫の在庫で献立を立てるのが難しい…という方は、クックパッドで何とかなります(笑)。

――最後に、クックパッド読者にメッセージをお願いします。

ゴミを減らそうと意識を変えることは大事ですが、無理はせず、できることから少しずつやっていけばいいと思います。ダイエットもそうですが、無理をすると続きませんからね。例えば、今月はゴミ袋を小さくして、それが成功したら来月は汁物をアレンジしてみるとか。一度きりで終わることのないよう、習慣化させていくことが大事。無理なく、まずは自分のペースで始めるといいと思います。

(TEXT:河野友美子)

映画『もったいないキッチン』が8月8日(土)より全国順次ロードショー

食の「もったいない」を美味しく楽しく解決! 舞台は“もったいない精神“の国、日本。
“もったいない精神”に魅せられ、オーストリアからやって来た食材救出人で映画監督のダーヴィドと、パートナーのニキが日本を旅して発見する、サステナブルな未来のヒントとは?

8月8日(土)よりシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか、全国順次ロードショー

渡貫淳子(わたぬき・じゅんこ)

1973年青森県八戸市生まれ。40歳を過ぎてからのチャレンジで第57次越冬隊の調理隊員として約1年半を南極で過ごす。
著書は、南極での挑戦を綴った本『南極ではたらく:かあちゃん、調理隊員になる』(平凡社) など。

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