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コラム

カレーやシチューは要注意!食中毒「ウェルシュ菌」を正しく知ろう

細菌やウイルスによる食中毒を防ぐために「加熱」は有効な手段です。でも加熱しても安心できない食中毒菌も存在することをご存知ですか?「ウェルシュ菌」もそのひとつ。加熱調理したカレーやシチューも要注意です!

ウェルシュ菌ってどんな菌?

加熱調理は食中毒防止のための有効な手段ですが、このウェルシュ菌は、少し性質が変わっています。

ウェルシュ菌は人や動物の腸管内、土壌、水中など、自然界に広く存在します。食中毒を起こすウェルシュ菌の特徴として、熱に強く、100°Cで 1〜6時間加熱したとしても死滅しない「芽胞(がほう)」を作ります。芽胞は休眠状態になって生き延びようとする形態ですが、加熱した食品の温度が50°Cまで下がると発芽し、40〜45°Cで最も盛んに増殖します。

増殖したウェルシュ菌が食品と一緒に人の体内に入り、腸管内まで達すると芽胞が作られますが、このときにエンテロトキシンという毒素を作り出すために、食中毒症状を引き起こすことになるのです。

煮込み料理に要注意

魚や野菜の煮物なども原因食品となることがありますが、なかでもカレーやシチューはなかなか冷めにくく、増殖の最適温度である 45°C前後にとどまる時間が長いため、大量に増殖する可能性が高い料理です。

またウェルシュ菌は「嫌気性」といって、酸素がない環境を好んで増殖します。加熱でカレーやシチューなどを温めていくと、表面にプツプツと空気が出てきて内部の酸素が少なくなることもウェルシュ菌にとっては好都合となりますので、注意が必要です。

ウェルシュ菌食中毒は、6~18時間(平均10時間)の潜伏時間後、主に腹痛、下痢等の症状を起こし、嘔吐や発熱を伴うことは少なく、健康な成人は 1〜2日で回復しますが、小さな子どもやお年寄りはまれに重症化することもあるため、注意が必要です。

予防は「すぐ食べる」「すぐ冷ます」「しっかり再加熱」

加熱しても死滅しないウェルシュ菌の芽胞による食中毒は、どうやって予防したらよいのでしょうか。

ウェルシュ菌は自然界に幅広く存在し、肉類、魚介類、香辛料などにも多く存在しています。一般的に食中毒予防するためには手洗い、器具の洗浄など菌をつけないことも重要ですが、ウェルシュ菌に関しては、「増やさない」ことが最も大切です。発症には大量の菌が必要なため、菌が増殖する前に「調理後は早めに食べる」を徹底しましょう。できたての加熱調理品をすぐ食べるのであれば発症は防げます。

でもカレーやシチューなどはたくさん作って、翌日も食べるということも多いですよね。そんなときは保存や再加熱の方法が重要となります

調理の過程で、食中毒を引き起こす微生物が増殖しやすい温度帯(10~60℃)があり、これを危険温度帯といいます。この温度帯に置いておく時間をできるだけ短くすることが重要になります。保存する場合はできるだけ早く10°C程度まで冷却するようにします。

具体的には、「よくかき混ぜる」ことと「小分け」することです。かき混ぜて空気に触れさせることで菌の増殖機会を少なくすることができますし、小分けすれば温度が下がりやすくなります。 粗熱が取れたら、早めに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。

再加熱して食べる際には、100°C、15分間程度を目安として中心部まで十分に熱を通すことで、もし放冷中などに細菌が増殖していたとしても殺菌できます。食品をかき混ぜながらぐつぐつと沸騰した状態(100°C)で煮込めば安心です。もちろん再加熱の場合でも、熱いうちに早めに食べることが大切ですよ。

ウェルシュ菌食中毒を予防するためには、調理した当日に食べることが基本です。可能ならできたてをすぐ、がベスト。もし調理後時間を置くようであれば、速やかな冷却と十分な再加熱に気を付けて料理を楽しみましょう!

監修:公益社団法人日本食品衛生協会

飲食物が原因となって起こる食中毒などの健康被害を防止し、消費者の健康を守るため、食品等事業者に正しい食品衛生の知識を広めることを目的として、地域の保健所や食品製造業や飲食店等の人々と協力し、 食の安全を守るための活動を行っています。
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