今年も花粉症がつらい季節がやってきました。毎年毎年、花粉症に悩まされている人は、薬などで症状を抑えるだけではなく、根本的な改善に向けて動き出すようにしたほうがいいかもしれません。そこで、花粉症の根本的な原因と対策について、YouTubeチャンネルの登録者数が37万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。
花粉症の基本病態は「アレルギー性鼻炎」です。 今では日本人の2人に1人がアレルギー性鼻炎の症状を持っていると言われています。
もっとも多いのはスギで、ほかにも樹木や草、雑草などの花粉、さらに空気中のカビや胞子に対するアレルギーなどもアレルギー性鼻炎の原因になります。
基本的には、花粉を中心とした鼻炎を引き起こすアレルゲンとの接触を避けることが、花粉症の治療になります。 なるべく外に出ないようにする、空気清浄機を活用する、外出の際にはマスクやメガネを着用する、外から帰宅したらすぐにシャワーを浴びて着替えるといったことです。
アレルギーを抑える薬を飲んだり、点眼・点鼻薬を使ったりする人も多いですが、点鼻薬などはステロイドが入っていることが多いので、なるべく使わないほうがいいかもしれません。
近年は免疫療法も行われていて、アレルギー反応を鈍らせるために注射をしたり舌下薬を使ったりしますが、効果があるかわかるまでに1年くらいかかってしまいます。
ただ、どちらも根本的な解決には至らないため、また来年同じことをくり返す羽目になってしまいます。
そもそもなぜアレルギー反応が起こるかというと、免疫がポイントになります。
免疫細胞の70%は腸内に存在するため、免疫細胞によるおかしな反応は、アレルギー性鼻炎を発症している目や鼻だけではなく、腸内でも起こっています。
それは、体全体の免疫が少し狂っている状態とも言えるでしょう。
免疫が一番働いている腸内の免疫を整えないと、体全体の免疫をコントロールすることはできないのです。
腸内環境を改善するためには、プロバイオティクス(善玉菌)が使用されることがあり、プロバイオティクスのサプリメントが花粉症を改善するという研究結果もあります。
制御性T細胞という免疫を抑える細胞が、プロバイオティクスを摂ることでコントロールされて、免疫そのものが調整されることがわかっています。
これは、腸内に何かを入れるとアレルギーの反応が変わるということが証明されたということ。 つまり、普段からの食事によって腸内環境が変われば免疫の応答も変わってくるということでもあります。
腸にスポットを当てて改善していくと免疫系も改善されて、結果的に花粉症の改善にもつながるのです。
さらに、ビタミンDが花粉症の発症を改善する可能性があるという研究も数多く報告されています。
ビタミンDには免疫細胞の刺激性をコントロールする役割があり、免疫を調節してくれる機能としては無視できません。
ビタミンDの摂取には、普段から適度に日光に当たるようにすることがとても大事。 花粉症の季節の前にビタミンDを高めておくと、免疫反応が起きにくくなったり、免疫反応が軽く済んだりすることにつながるでしょう。
花粉症を抑えるためには、腸のメンテナンスとビタミンDのコントロールをきちんと意識しておくことが重要です。
腸のメンテナンスとしては、保存料、着色料、人工甘味料、香料などの添加物がたくさん入った食品は摂らずに、ホールフードの食品を心がけること。
さらに、砂糖の摂りすぎや悪い脂の摂取に注意し、野菜や果物を中心とした食生活にし、便通を良くして体から不要なものを出すと免疫が調整されていきます。
生活スタイルを改善すれば花粉症はコントロールできるということを覚えておいてくださいね。
(TEXT:山田周平)
▼動画でもっと詳しく知る
画像提供:Adobe Stock
消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は37万人超(2024年1月時点)。