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コラム

日本の「ふじ」も大人気!アメリカ人がこよなく愛する秋のデザートとは?

【アメリカの最新ごはん事情vol.2】1989年に渡米し、「セレブ御用達プライベートシェフ」としてアメリカで料理を作り続けてきた明比玲子さんに、日本ではなかなか知ることができないアメリカの食事情を教えてもらいます。第2回目のテーマは「りんご」です。ニューヨークのニックネームはThe Big Apple(ビッグアップル)。その由来は、いくつかの説があるためここでは割愛しますが、ニューヨークは、ちょうど今がりんごの最盛期なので、りんごにまつわるアメリカの食事情をお届けします。

今も昔もアメリカ人にとって大切な「りんご」

スーパーマーケットに並ぶ大量のりんご

アメリカ映画やドラマで、りんごを丸かじりしているシーンを見たことありませんか。実際、子どものランチボックスにもよく入っているし、「One apple a day keeps the doctor away(1日1個のりんごは医者を遠ざける)」ということわざもあるくらい、りんごはアメリカ人にとって身近なフルーツ。

アメリカにりんごが入ってきたのは1620年。当時のアメリカ人は、りんごをほぼ主食のようにしていたそう。生でも食べられるし、揚げ物、シチュー、ベーキング、ジュース、ビネガー、ブランデー、ジャムなど、ありとあらゆる物に使えたからです。どんなに質の悪いりんごでも何かの料理に使え、保存性も非常に高く、最悪は家畜の餌にもなったので、なくてはならない食べ物だったのです。

そういう理由からか、今もアメリカにはりんご農家が多いですし、ちょっと郊外に行くと、裏庭にりんごの木がある家も珍しくはありません。

日本の品種もアメリカで人気!

ニューヨークで1番人気のりんご「ハニークリスプ」

ニューヨークでは早生のりんごは、8月の中旬ぐらいにはマーケットに出始め、遅い種類でも11月中旬までには全て収穫されます。なお、ニューヨークで1番人気の種類はハニークリスプです。値段は高めですが、とても甘くておいしいりんごです。

数十種類のりんごが並ぶグリーンマーケット

グリーンマーケットに行くと、りんごはよりどりみどり、常に最低10種類の選択肢があります。ある農家に聞くと、その日のマーケットに出ていたものは29種類でしたが、早生の種類なども合わせて全部で95種類のりんごを栽培しているとのこと。

日本の「ふじ」はアメリカでもとても人気! その他にも5〜6種類の日本種をマーケットでよく見かけます。日本のりんごは生食に適するように開発されているのに対し、アメリカのりんごは調理に向いている品種がほとんどです。とはいえ、最近では生食に適した品種も増えてきています。

アメリカの国民的デザートは「アップルパイ」

りんご、そしてデザートと言えば、アメリカではアップルパイ。国民的デザートです!「非常にアメリカ的な」と表現するのに、「As American as apple pie」という慣用句を使うくらいです(笑)。そこで今回は、おいしいアップルパイの作り方をコツと一緒にお伝えします。

アップルパイをおいしく作るコツ

ニューヨークに住み始めた当時、あまりにもりんごの種類が多いので、どれを使ってアップルパイを作っていいのかもわからず、いろいろと思考錯誤しました。そして、アップルパイをおいしく作るコツはこれ!というのがわかりました。それは、「数種類のりんごを混ぜて作る」ことです。

それほど悩まないで適当に種類を混ぜてもいいと思いますが、私は最低3種類ぐらい混ぜます。酸味が強く硬めのもの、適度に甘味のあるもの、比較的柔らかく煮崩れし易いものです。そして、りんごを切る時も、硬い種類は少し薄め柔らかいものは大きめに切って調整します。

こうすることによって、ちょっとトロっとした部分や、りんごの食感が残る部分を作れます。何より、種類を混ぜることにより風味がとてもよくなります。

アップルパイをおいしく食べるコツ

アップルパイに限らず、パイは焼き立てを食べないようにしましょう。熱々を切って食べるのがおいしいように思いますが、少し我慢を。熱々を切ってしまうと、フルーツの汁が外にあふれ出してしまいます。ゆっくり休ませて、中を落ち着かせましょう。焼き上がってから4〜5時間ぐらい休ませて、熱くない状態になってから切るのがベストです。第一、熱いと味がよくわかりません。

日本では、ニューヨークのようにりんごの種類が多くないと思います。でも、ご自分でいくつかのりんごを試してみて、上記を参考に自分がおいしいと思う組み合わせを見つけてください。今年は、例年とは違う風味のいいアップルパイができることを願っています!

プライベートシェフが直伝!アップルパイレシピ

パイ生地を一から作るのは難しいので、今回は冷凍パイシートを使用します。

アメリカでは、アップルパイを作る時、りんごを生のまま入れて焼くのが主流ですが、フィリングを先に調理してしまってからの方が水分のコントロールがし易いですし、焼き上がりも早いです。

<材料>(23型用)

冷凍パイシート……1枚

[フィリング]
りんご (3〜4種類ほどを混ぜる)……最低900g
※例)青リンゴ、ゴールデンデリシャス、紅玉、ふじなど
バター……30g
砂糖……15g
塩……ひとつまみ
★シナモン……小さじ1/2
★ナツメグ……少々
★レモン汁……大さじ 1
★カルバドスかラム酒……大さじ 1〜2
★すりおろしたレモンの皮……1/2個分
※できれば国産のノーワックスで無農薬(低農薬)のレモンを使いましょう。

[クラム]
オートミール……60g
小麦粉……60g
ブラウンシュガー……150g
アーモンドプードル(ローストしておく)……30g
※ローストしてざっくり切ったくるみでも可
バター……115g

<作り方>

1)クラムを作っておく。
バターを冷蔵庫から出して、少し柔らかくなったら、他の材料を全部ボウルに入れて、指かフォークですりつぶすように混ぜる。ところどころ塊が残り、ぽろぽろした状態になるまで混ぜる。ビニール袋に入れて、使うまで冷蔵庫に入れて保存。フードプロセッサーに材料を入れて混ぜても良いが、オートミールを細かくしすぎないこと。

2)冷凍パイシートを延ばして、パイ型に入れて冷凍庫で休ませておく。

3)オーブンを200℃に温める。

4)りんごは縦に8つ切りにして、それぞれ横方向に切る。硬めのりんごは5mmぐらい、柔らかめのりんごは、8mm〜1cmぐらいに切る。

5)鍋に中火でバターを溶かし、砂糖と塩ひとつまみを入れてよく混ぜる。(4)を入れ、炒めて馴染んだら★の調味料を全て入れる。水分が出てきたらふたをして弱火で5分ほど煮たら、ふたを取り強火で水分を飛ばす。

6)(5)を天板にあけて、よく冷ます。

7)冷めたら、(2)のパイ型に入れて、上にクラムを満遍なくのせる。

8)冷凍庫で、10分ほど休ませる。

9)(3)の予熱が完了したオーブンで焼く。

10)20分経ったらチェックして、表面がこげてきそうになったら、アルミホイルを上に被せて、温度も180℃に下げる。おいしそうなきつね色になりパイ皮が焼けていたら出来上がり。

11)最低4時間しっかりとパイを冷ましてから切る。

簡単!パイ生地を使わずアップルパイ風

パイ生地を扱うことに慣れていない人は、生地を使わずアップルパイ風が楽しめる「アップルクリスプ」を作ってみませんか?

クラムとフィリングのレシピは、アップルパイのレシピと同様。フィリングを、バターを塗った耐熱のパイ皿に直接入れ、上に、クラムを乗せて焼くだけ。中身はもう調理されているので、クラムが綺麗に色づけば大丈夫。オーブンはあらかじめ190℃に温め、約30分焼きましょう。

アップルクリスプは、完全に冷ますよりも粗熱が残るぐらいで取り分けるとよりおいしく食べられます。また、一人用のココット皿などに作れば切り分ける必要がないので楽です。

もっとおいしく食べたいなら、バニラアイスを添えるのがおすすめです。アメリカ人は、どちらのメニューにもバニラアイスを添えて食べます。アップルの酸味があるのでよく合います! よかったら、試してみてください。

明比玲子

兵庫県芦屋市生まれ。1989年に渡米し、ニューヨークのシェフ養成学校で学んだ後、本格的に料理に取り組む。著名レストランでパティシェとして経験を積み、アメリカ人と日本人に料理とお菓子の指導も行う。日本の料理雑誌への寄稿やフードスタイリングも行いつつ、2008年からは、コンサルティングの仕事なども兼ねながら、ニューヨークセレブのプライベートシェフとして、活躍中。
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