みんなが大好きな昔ながらのおやつ「プリン」。年間200店舗を食べ歩くプリンを愛する“プリニスト”、も。けんさんが、自身のとっておきのレシピを掲載した書籍『魅惑のプリン』を出版されました。今回は、も。けんさんに基本のプリンのレシピと、プリンをもっと楽しむ方法をお聞きしました。
兵庫で育ったこともあり、小さいころからプリンは身近なスイーツでした。とはいっても、そのときはまだよく食べるお菓子のひとつ程度。本格的に「プリン活動」を始めたのは、“固めプリン”が流行しだした2019年からです。きっかけは、その前の年に行った友人との金沢旅行でした。
そこで衝撃的においしいプリンに出会って、プリンに対する意識がガラリと変わったんです。キャラメルが苦くて濃くて、プリンの風味も濃厚! とにかくめちゃくちゃおいしかったんですよ。そこからプリンを目的にカフェ巡りを始めました。でも、その1年後にはコロナ禍でお店に足を運ぶことができなくなってしまったので、おうち時間を使って自分の“理想のプリン”を作ることにしました。
最初はインターネットで調べたり、本を見たりしながら、オーソドックスな固めのプリンを作って、そこから自分なりにアレンジを加えていきました。
卵や牛乳の配合、焼き時間など試行錯誤を重ねてできたのが、この「基本のプリン」です。
〈カラメル〉
グラニュー糖 ... 50g
水...大さじ1
湯...大さじ2
〈プリン液〉
卵 ... 2個
卵黄...2個分
グラニュー糖 ... 60g
バニラビーンズ ... 1/2本
牛乳 ... 300g
好みの洋酒(チェリーブランデーなど) ...小さじ1
●オーブンは150°Cに予熱する。
●卵と卵黄は常温に戻す。
カラメルを作る
1.鍋にグラニュー糖と分量の水を入れ、中火にかける。茶色く色づき始めたら、全体が均一になるようにときどき鍋をゆすりながら加熱する。
2.粘度の高い泡からゆるい泡に変化し、全体に黒く焦げ色になったら、分量の湯を加える。
*湯は熱湯がよい。加えるときはハネによる火傷に注意。
3.鍋をゆすって全体になじませ、 火を止める。耐熱容器に均等に入れる。
*耐熱容器がガラス製の場合、 湯煎で容器を温めてからカラメルを入れると、温度差による割れを防げる。
プリン液を作る
4.ボウルに卵を割り入れ、卵黄とグラニュー糖を加え、ホイッパーで泡立てないよう、卵白を切るようにしてよくときほぐす。
5.バニラビーンズはさやに縦に切り目を入れ、包丁の背で種をこそげ取る。
6.鍋に牛乳を入れ、5の種とさやを加えて中火にかける。鍋縁に小さな泡がふつふつと出てきたら火を止め、ふたをして10分おいてバニラの香りを移す。
7.4に2〜3回に分けて注ぎ入れ、 ホイッパーでそのつどしっかりと混ぜ合わせ、好みの洋酒を加えて混ぜる。
*洋酒は入れなくてもOK。
8.茶こしでこす。 *ほぐしきれなかった卵白などを取り除く。
9.3の耐熱容器に均等に注ぎ入れる。バットに移し、カラメルの高さまで40°Cくらいのぬるま湯を注ぐ。
*プリン液の表面の泡は取り除く。
焼く&盛りつける
10.〈焼く〉 予熱したオーブンで30分ほど湯煎焼きにする。粗熱がとれたら冷蔵庫で一晩冷やす。
11.〈盛りつける〉 スプーンの背で耐熱容器の縁を軽く押さえながら1周させ、 生地を容器から離す。
12. 下に皿を用意し、耐熱容器の側面にナイフを差し入れ、容器の内側に空気を入れるようにして、プリンを軽くおさえる。
13.耐熱容器を傾けて、プリンを皿に取り出す。取り出しにくければ、側面にナイフを入れ て1周させてから、容器の上に皿をのせて素早くひっくり返し、皿と容器を押さえながら上下に軽くふる。容器をそっと持ち上げてプリンを取り出す。
14. 基本のプリンの完成。
僕が作る「基本のプリン」は、生クリームを使わず、全卵2個と卵黄2個を使います。生クリームって開封したら数日で使い切らなければいけないので、意外と余ってしまうことが多いんですよね。生クリームなしでも濃厚な風味を出すためにはどうしたらいいか考えた結果、卵黄を多めに使うことにしました。
風味づけに使う洋酒は、フルーティーな風味が好きな方はチェリーブランデー、甘く香ばしい香りが好きな方はアマレットがおすすめです。アマレットは杏仁のような香りがあってバニラとの相性もいいですし、風味も強すぎないので食べ続けてもしつこさがありません。
バニラは発酵させて香りが生まれているので、さやごと・種ごと入れることで牛乳に香りが移りやすくなります。エッセンスは香料を使っている場合があり、そうすると香りが強すぎて人工的な甘さや苦さがついてしまうことがあるので、僕はなるべくバニラビーンズ、もしくはバニラビーンズペーストを使うようにしています。
僕のレシピは卵Mサイズをベースに分量を計算しています。Mサイズは1個が約50g。スーパーで販売されている卵の中にはMSサイズやLサイズもあるため、卵の分量は卵1個50gを目安に計算するとわかりやすいと思います。卵の量が規定量以上あることが大切です。
低温で長時間焼くとオーブンによっては固まらないこともあるため、「基本のプリン」は150°C30分で設定しました。ガスオーブンなど火の強いオーブンを使う場合はアルミをかぶせて様子を見ましょう。アルミがない状態で火を入れると表面から熱が伝わって大きい穴ができる場合があります。表面を覆ってあげることで均等に熱が入ると思います。
液体の中にある空気は温めれば温めるほど抜けていく傾向があるため、ちゃんと牛乳を温めて卵に流し込むことが大切です。
溶け切ってない卵白や、卵の殻が入ると、そこから気泡が生まれるので、濾し器でしっかり泡を取り除いて液体をきれいにします。
しっかり固まるまで焼くと「す」が入りやすくなってしまいます。火傷をしないように気をつけながらプリン容器を片手で持ち、もう片方でプリン容器を軽く叩いた時に、プリン容器全体にぶるんと振動が伝わったら、焼き上がりの目安です。焼き上がりを見分けることで「す」が入るのを防げます。
アルミのカップは熱伝導がよく、カップに接している部分が短時間で熱が入ってしまうため、中心までしっかり火を入れたときに、表面が焼き過ぎの状態になりやすいです。一方、熱伝導が比較的穏やかなステンレスやガラス容器を使うほうが「す」は入りづらいと言われています。さらに、ガラス容器の場合は焼きながら表面の状態を見れるというメリットもあります。
プリンは冷蔵庫で2〜3日置くと味や食感が引き締まっておいしくなります。時間をおくことでプリンの水分がキャラメルに移って、プリンがもっちりした食感に変わるんです。出来立てとはまた違った食感、味わいが楽しめます。
砂糖にもいろいろな種類がありますが、グラニュー糖だと甘さがすっきりしすぎてコクが足りないという人や、黒糖は風味が強すぎるという人は「三温糖」がおすすめです。ほどよく色もつくし、甘みも滑らかでコクを与えてくれるので、僕は栗やさつまいものプリンを作るときに使っています。
キャラメルはある程度苦みが際立っているほうが、プリンの甘さとのバランスがよく、うまみたっぷりのおいしいプリンが出来上がります。キャラメルって作るときに結構な煙が出るので火を止めたくなりますが、そこを少し我慢してください! 色が濃くなるまで待つのがポイントです。
「基本のプリン」ばかりでは飽きてしまうので、ほかにも抹茶やチョコレート、チーズなど違う味のプリンもたくさん作りました。今回出版させていただいたレシピ本の中には、卵白で作る「白いプリン」のレシピも紹介しているので、ぜひ「基本のプリン」で余った卵白を使ってそちらも作ってみてください。卵白だけのプリンってぷるんぷるん加減が全然違うんですよ。
そのほか、今が旬のかぼちゃを使った「ピーナッツバターのかぼちゃプリン」もおすすめです。かぼちゃにはシナモンをあわせるのが一般的ですが、「自分の好きなピーナッツバターを合わせたらどうなるんだろう?」と思って作ったのがこのプリンです。
かぼちゃとピーナッツバターの相性が抜群。かぼちゃの風味とピーナッツバターの香ばしさがケンカせず、甘すぎないプリンになりました。追いキャラメルをしたり、アイスをのせてみたり、アレンジして食べてもおいしいですよ。
基本的には“自分が好きなものをプリンにする”というのがひとつのスタンスなので、これからも自分が気になった組み合わせに挑戦してみたいと思います。今ちょうど考えていたのは「オレオのプリン」。白と黒をバランスよく見せるためにはどうしたらよいか、いろいろ試しながら新しいプリンを作っていけたらいいなと思っています。
(TEXT:河野友美子)
1988年兵庫県生まれ。信州大学農学部修士課程修了。プリニスト。趣味は独学でお菓子作り、パン作り。2019年から本格的に「プリン活動」を開始し、年間200店舗を訪問しインスタグラムを中心に情報を発信。日本のみならず、台湾、フランス、アメリカなど海外のプリン(フラン)の食べ歩き経験もある。2020年にインスタグラムでプリンのオリジナルレシピを投稿したことをきっかけにプリン作りに没頭。TV出演や、ネットメディアでプリンに関する記事を執筆するなど「プリンの人」として活躍中。
Instagram:@mxoxkxexn