cookpad news
コラム

地震が起きても“火は消さない“が新常識! 防災プロが「災害の備えがない家」を突撃チェックした結果

今年は東日本大震災から12年ーそして関東大震災から100年という節目の年。今回はクックパッドニュース編集部スタッフの自宅で、防災と食のプロである日本食育防災士の中村詩織さんに、キッチン周りの防災ポイントや、いざという時に役立つ非常食について教えていただきました。

あなたの自宅は「災害の備え」できてる?

いつ起こるかわからない災害に対して、自宅の備えは万全でしょうか?日々忙しく過ごしていると、ついつい「防災」は後回しになってしまうもの。編集部でも日頃の「防災」について話合っていると、編集部スタッフFから衝撃の一言が。

「私、防災なんて全く考えたことがないよ〜!」

このままではF家が災害の危険に晒される!と感じた編集部は防災と食のプロである日本食育防災士の中村詩織さんを緊急招集。F家の防災レベルを上げるべく、自宅に中村さんが突撃訪問しキッチン周りの防災ポイントについて教えていただきました!

一般社団法人日本食育HED 代表理事/日本食育防災士 中村 詩織さん トータルボディセラピストの経験や美容に関する講師等の活動を行う中で体にとって一番大切な「食」について興味を持つ。災害支援経験後、災害時における食の問題を解消しようと一般社団法人日本食育HEDカレッジを設立。食と災害の知識が身につく「食育防災アドバイザー認定講座」と、災害時の食のリーダー「日本食育防災士養成講座」を開講。

クックパッド編集部 スタッフF
アイスクリームとTikTokをこよなく愛する編集部きっての超ポジティブ思考。夫と3歳の娘と都内の戸建てに住んでいるが、自宅の防災や備蓄にこれまで大きな関心を持ったことはナシ。

防災グッズの約6割が100円ショップで揃えられる

F邸に行く前にまずは近所のダイソーに到着した二人。中村さんによると 東京都防災ホームページに記載されている「日常備蓄」のうち6割が100円ショップで購入できると言われているそうです。 収納コーナーや、キャンプグッズコーナーなど、店内をくまなく巡回。買い慣れたショップでも防災目線で店内を回ると、違った一面が見えてきました。

中村さん:事前にFさんに伺ったお話からすると、キッチンに必要なのは「すべり止めシート」と「耐震マット」ですね。あとは食器棚が開き戸タイプでロックがないということで、「開き戸安全ロック」も買っておきましょう。

F:うわー、こういうコーナーは全然見たことがなかったです。「耐震マット」も透明とか黒とかいろんな色が用意されてるんですね。

中村さん:最近はいろんなタイプがあるので、色はご自分の好きな色を選べばいいですよ。ご自宅の家具や用途に合う物を選ぶことが大切で、もし食器棚がガラス戸タイプであれば「飛散防止フィルム」がおすすめです。ほかにもFさんのご自宅にあると良いものをいくつか買って行きましょう。

キッチンで使わない物を棚の上段に置くのはNG

F邸で中村さんからチェックが入ったのは食器棚やキッチンボードなどの収納方法。キッチンにはお皿や調理器具、家電製品など割れるもの、重いものが多く災害時は非常に危険な場所となります。

中村さん:まずは吊り棚ですが、オシャレな器をとても綺麗に置いていますね。でも重いお皿が上の方にあり、地震の際に落ちてくると大変危険です。重いお皿などは引き出しに入れておくと、重さで開きにくくなるので、小皿や小さなグラスは上の棚に、大皿や重さのあるものは引き出しの中にしまうよう入れ替えてください。

F:普段使わない物って、ついつい上の方に置いてました。実は普段から上の段のお皿を取るのが重くて、ちょっと怖かったんですよね。

中村さん:食器を入れ替える際に食器の下に、さっき買った「すべり止めシート」を敷いておきましょう。また扉には「開き戸安全ロック」を付けておくとより安心ですよ。

中村さん:パントリーの中も同じようにカセットコンロのように重いものが最上段にあるのはNGです。ウォーターサーバーのお水を一番下に置いてあるのは◎。持ち運びやすい中段に入れているご家庭もよくありますが、ここも落ちる危険性が高いので、最下段に置いておきましょう。

たった数秒の差が命取りになることも

続いてはキッチンボードの上に置かれた家電製品。ある程度の重さがあっても大地震となると簡単に動いてしまいます。さっそく買ってきた防災グッズで家電製品を固定します。

F:キッチンボード上の物も「すべり止めシート」と「耐震マット」で簡単に固定できました。これでもう安全ですね!

中村さん:残念ですが、災害時は食器が割れないようにしたり、家電を完全に固定するのは難しいです。今回行っているのはあくまで数秒間逃げる時間を稼ぐためですので、地震が起きたらすぐに危険な場所からは離れましょう。

中村さん:また地震が起こったら、コンロの火を消さなくてはいけないと思っている人が多いかもしれませんが、コンロに火が点いていても消しに戻ってはいけません。現在の 消防庁の指導では火元になるコンロからはすぐに離れ、揺れが収まったら落ち着いて火を消すようになっています。

突然の停電で懐中電灯が見つからない!

地震が起こった際に想定しておかないといけないのがライフラインの停止。特に夜間の地震の場合はまず明かりを確保することが重要。そんな時に役立つグッズを中村さんが紹介してくれました。

中村さん:災害時の停電は足元や周囲には物が散乱している危険な状況です。懐中電灯がどこにあるかわからない状態では元も子もありません。懐中電灯にカラビナを付けたり、ランタン型を準備したりしておき、どこからでも見える目線の高さと同じ場所に吊り下げてください。

中村さん:さらに蓄光シールを懐中電灯の見えやすいところや、備蓄を入れている棚に貼っておくと、停電時にどこを目指せばいいのか、わかりやすくなります。 折ると24時間光る災害用のライトも補助的ですが、手の届きやすいところに置いておくと便利です。

災害時は「在宅避難」が推奨されている

災害が起これば「避難所」に身を寄せれば何とかなると思っている人も多いかもしれません。しかし現在は自宅に倒壊や焼損、浸水といった居住する上での問題がなければ、そのまま自宅で生活を送る「在宅避難」が国や自治体の多くで推奨されています。

中村さん:私が熊本地震の際に訪れた避難所では栄養が偏り便秘の人が多い、アレルギーで食べるものがない、離乳食が足りていない、など様々な「食」の問題が起きていました。食事や必要な生活用品を誰かが運んでくれる前提だと、いつまでもありつくことができません。 災害が起きた際も日常と変わらない生活ができるように、日頃から備えておくことが大切ですね。

F邸のキッチン周りの防災が進んだところで、次回は「非常食」について中村さんが引き続きチェック!意外なアレが非常食として使えるそうです。


【参考・参照】
東京都防災ホームページ: 「日常備蓄」を進めましょうリーフレット 日本語版
〈https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kyojyo/1001855/1003554.html〉
(最終閲覧日:2023/3/8)

総務省消防庁ホームページ:防災マニュアル ー震災対策啓発資料ー
〈https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/index.html〉
(最終閲覧日:2022/3/8)

一般社団法人 日本食育HEDカレッジ ”H=健康・E=環境・D=防災”への貢献を掲げ「災害時の食のリーダー 日本食育防災士/食育防災アドバイザー」を育成するカレッジを開催。災害が起こった際に、食の安心・安全を確保した上で、自分や家族を守るための知識を体験学習式で教えてくれる。

編集部おすすめ
クックパッドの本