温かいスープを飲むと、ぽかぽかしますよね。体の深部が温かくなります。かじかんだ指先まで温めてくれる温スープ。しかし数分経つと…「あれ?もう手が冷たい!」なんてこと、ありませんか?
あのぽかぽかはなんだったのでしょうか。体深部は温まっても、この熱は末端まで運ばれないのか?お嘆きのあなたに、今回は温かいスープと温度の実験結果から、温かいスープを摂取した際の体温変化と持続時間についてご紹介します。
実験は非肥満で喫煙習慣を有さない18〜21歳の健常女性20名を対象に行われました。試料は市販のコーンポタージュを使用。一般的にスープの適温とされる65℃のスープ、体温に近い温度の37℃のスープ、スープ摂取なしの3パターンで検証されています。
その結果、摂取直後の鼓膜温(耳の温度)、足先の温度、心拍数の変化量は、65℃スープ>37℃スープ>摂取なしの順に高値。ただし、手先の体温変化に有意差はありませんでした。
では次に、有意差のあった鼓膜温(耳の温度)と足先の温度について効果の持続時間(有意な高値を記録した時間)をまとめてみます。
どちらの部位も有意差が続くのは最長で摂取45分後まで。
同実験の「あたたかい」という主観評価においては65℃スープの摂取5分後が圧倒的に高いものの、20分後には65℃スープも37℃スープも有意差がなくなるようなので、体感としてはもう少し早いかもしれません。
ヒトは一般的に、体温±25℃〜35℃の飲食物を好むとされています。つまり、温かい料理であれば60℃〜70℃前後の温度がベストだと言えます。本実験の嗜好性評価でも27℃のスープに比べ65℃のほうが有意に高く、65℃のスープは味としても機能としても有効であることがうかがえます。
ただし上述のとおり手先の体温変化は有意差が認められなかったようなので、手先の冷えには別の対策を考えた方が良さそうですね!
味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。