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コラム

中東料理と精進料理が驚きのフュージョン。「精進ファラフェル」が新しい文化のきっかけに?

【今日はお寺ごはんで一汁一菜 vol.9】料理僧・青江覚峰(あおえ かくほう)さんが提案するのは、誰でも簡単に作れる「一汁一菜のお寺ごはん」。実際にお坊さんたちが食べている、肉や魚を使わない一工夫あるレシピを教えていただきました。からだと心がほっとゆるむ、優しい味わいのお料理ですよ。

意外と好相性!精進料理と中東料理

制限のある中で工夫をこらすのも精進料理の醍醐味の一つです。と、あちこちで言っているのですが、どうしても和食が中心になりますし、味付けも醤油、味噌、塩、といったオーソドックスな調味料に頼りがちに。そんな中、最近チャレンジしている料理があります。ズバリ、中東料理です

きっかけは親しい友人がエジプトの方と結婚したことでした。食事に制限のあるご主人でも、おいしく安心して食べられる料理をつくりたいということで、わたしも一緒に中東料理を勉強してみたのです。

すると、スパイスを多用し香りでアクセントをつける味付けは、実は精進料理とも好相性だということに気づきました。スパイスと言うと、なんとなく「辛い」というイメージを持つ人も少なくないと思いますが、風味の幅は実に広く、使い出すと非常に楽しいものです。

また、香りだけでなく一つ一つに効能があり、東洋でいうところの「漢方」のような使い方もできるのだと知りました。

今回ご紹介するのは、豆を使った「ファラフェル」というコロッケです。エジプト、シリア、レバノン、パレスチナなどなど、多くの国で日常的に食されてる家庭料理ですが、地域によって使う食材や食べ方は違うようです。

わたしが日本のお寺の中でつくるファラフェルも、現地の方が食べたら「あれ?」と思うようなところがあるかもしれません。いつでもどこでも、そっくりそのまま同じものを受け継ぐのが伝統ではありません。文化は、それ自体がイコール伝統ではないからです。

地域によって、時代によって、それを受け取る人々の暮らしにもっとも適った在り方を模索し、必要に応じて姿を変えながら大切なものを伝えていく。そのようにして長く伝わった文化が、結果的に「伝統」と呼ばれるようになるのです。

今まさに、遠く中東の地で発祥した料理が、日本の、浅草の、お寺の、わたしの家庭の食卓に根付こうとしている瞬間です。同時に、異なった背景を持つ者同士でも、「同じ釜の飯を食う」ことを大切にする日本人のマインドもまた、友人のご主人に伝わっていたら嬉しいと思います。

精進ファラフェル

材料(2人分)

ひよこ豆(乾燥のものを12時間水につけて水を切った状態)…100g
人参…20g
セロリ…40g
乾燥パセリ…大さじ1
クミンパウダー…小さじ1/2
コリアンダーパウダー…小さじ1/2
塩…小さじ1/3
胡椒…小さじ1/2
小麦粉…大さじ1
揚げ油…適量

作り方

1.フードプロセッサーに揚げ油以外の材料を入れ、ペースト状にする。

2.170℃に熱した油でこんがりするまで揚げる。

コロコロとしたかたちがかわいらしく、中を割ると鮮やかな緑色が印象的です。毎日の食卓にもおつまみにも、お弁当にも重宝しそうな一品。ぜひ皆さまのご家庭でもお楽しみください。

青江覚峰(あおえ・かくほう)

1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。
ユニット「料理僧三人衆」の一人として講演会「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。
【公式HP】https://www.ryokusenji.net/kaku/

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